フェルナンデス選手グラマン投手が自由契約となり、これで事実上ライオンズの外国人選手は不在状態となった。ミンチェ投手に関してはまだFA宣言をしたという段階であるため、即退団ということではない。しかしFA権を行使したということは、それは即ち言葉通りフリーエージェント選手となるため、西武球団に在籍している状態ではない。

今季在籍した外国人選手が全員退団となれば、これは異例中の異例ではないだろうか。もちろん全員が鳴かずと飛ばずの選手であれば話は別だが、そうではない。フェルナンデス選手にしろミンチェ投手にしろ主戦級の選手であったり、グラマン投手も安定感には乏しかったものの、勝利に貢献してくれた試合も多々あった。

チーム編成という観点から冷静に見れば、グラマン投手の自由契約は妥当と言って良いだろう。もちろん2008年の活躍などを覚えているファンとして思えば非常に寂しい自由契約の通告ではあったが、チーム編成という観点からは決して間違いではなかったと思う。2009年に左肩関節胞を断裂し、手術に成功したとは言え、術後の回復は芳しくはなかった。年齢的な面も大きいとは思うが、2008年の球質を思えば、術後はあまりにもボールの質が良くはなかった。手術をしたということで、やはり思い切りよく腕を振れなくなってしまったのかもしれない。ストレートの伸びは見られず、チェンジアップでも空振りを取れなくなってしまった。

この状態を冷静に判断すれば、2010年に手術から復帰し、2011年は万全な状態でシーズンを迎えたはずだったが、求められる結果を残すことは出来なかったということになる。やはりこれでは「助っ人」としては成り立ってはいない。このまま100%の状態に戻るとも分からないグラマン投手との契約を更新するよりは、今季のグラマン投手の年俸で獲得できるベストコンディションの投手を獲得した方が、チームの勝利にとってはプラスとなるだろう。費用対効果という面で見ても、ファンとしては本当に寂しいというのが正直な感想ではあるのだが、致し方ないと割り切るしかないだろう。今後グラマン投手が日本球界に残るのか、アメリカに戻るのかは分からないが、しかし引退するにはまだ早過ぎる。例えマイナー契約であっても、野球が続けられるのであれば、来季以降も続けて欲しいと筆者は願っている。


多くのファンは外国人選手が全員退団、もしくはFAとなったことを心配しているようだ。しかしそれほど心配する必要はないだろう。西武球団の編成は、他球団の目が届かないところを見るという根底がある。つまり獲得に競合が伴う外国人選手であれば、できる限り早く交渉し、できる限り早く好条件を提示しなければならないが、しかしそうではない場合、他球団の編成やウィンターミーティングが終わり、他に獲得してくれる球団がなくなった時点で本格交渉をすれば、必要以上の支出を防ぐことができる。

もちろんこの手法には、獲得を検討中の選手がウィンターミーティングですべて先を越されてしまうというリスクも伴う。だが日本に来るレベルの選手は基本的にはマイナーリーガーだ。そのマイナーリーガーたちが一度のウィンターミーティングで全員がメジャー契約となることは、まずありえない。100%の選択ができなくなるリスクもあるが、0%ということもないため、編成力に自信のある球団であれば、このような手法は経費を抑えられるという観点からも理想的と言えるかも知れない。

例年のことではあるが、西武球団の外国人選手の獲得発表は、12球団の中でも一番遅い。12月の仕事納め前後、もしくは年が明けてから獲得を発表することも珍しくないほどだ。それを考えると、西武球団の外国人選手の在籍が0人になっているとしても、心配をする必要はないだろう。心配が必要だとすれば、獲得した外国人選手が、今季在籍した外国人選手よりも好成績を挙げてくれるかどうかだけだ。だがこれに関しては、年俸3億円を出して獲得をした外国人選手も同様だ。いくらメジャー実績があったとしても、日本の野球に適用できるかどうかの保証はまったくない。だからこそ西武球団は、名のある外国人選手を獲得するケースが非常に少ないのだと筆者は考えている。

デストラーデ選手に関しても、カブレラ選手に関しても、メジャーリーグでの実績はほとんどない。西武球団に在籍した外国人選手で本物のメジャーリーガーだったのはトニー・フェルナンデス選手、ジョージ・ブコビッチ選手、ジェイソン・ジョンソン投手くらいではないだろうか。しかしこの中で「期待以上」の働きを見せてくれた選手は1人もいない。つまり打者ならば日本人選手には打てないようなホームランを打ち、投手ならば打者を捻り潰すようなパワーピッチング。打者2人に関してはアベレージヒッターとしてはチームの勝利に貢献してくれたが、しかしホームラン数は物足りなかった。ただしトニー・フェルナンデス選手のように、数字以上にチームにプラスをもたらしてくれる選手がいたことも確かだ。しかし一点、鳴り物入りでライオンズに加入したジョンソン投手は年俸3.5億円だったにも関わらず7試合にしか登板せず、1勝4敗という2軍投手レベルの数字しか残すことができなかった。

外国人選手の獲得は焦る必要はまったくない。今オフは外国人調査のスペシャリストである宮田隆氏を招聘した西武球団だ。外国人選手の獲得に関しては宮田氏を中心にすでに具体的な契約に向けて調査は進んでいるはずだ。あとはこれから始まるMLBのウィンターミーティングの動向をしっかりと見極め、球団の運営の身丈に合った優良外国人選手を絞り込むだけだ。とにかく西武球団には秋季練習でテストを行なったティフィー選手やゴンザレス投手を含め、球団には最善の外国人選手の獲得を目指してもらいたい。ミンチェ投手の残留を含め、ファンとしての願いはただそれだけだ。