■ 第25節

J1の第25節。6勝8敗10分けで勝ち点「28」の浦和レッズがホームでモンテディオ山形と対戦。J1で3年目のシーズンとなる山形は、4勝15敗5分けで勝ち点「17」。17位と降格圏内に位置する。

ホームの浦和は「4-2-3-1」。GK加藤。DF平川、山田暢、永田、宇賀神。MF鈴木啓、柏木、マルシオ・リシャルデス、田中達、原口。FW高崎。右サイドバックのDF高橋峻は出場停止で、DF宇賀神がスタメン出場。DFスピラノビッチとFWデスポトビッチは代表戦に参加していたこともあってベンチスタートとなった。

対するアウェーの山形は「4-2-2-2」。GK清水。DF宮本、前田、園田、石川。MF秋葉、佐藤、太田、宮沢。FW大久保、山崎。ここまで全試合でスタメン出場を続けていたDF石井がベンチスタートとなって、DF園田とDF前田がスタメン出場となった。

■ FW山崎雅人が決勝ゴール

試合は前半2分にアウェーの山形が先制する。左サイドでボールを持ったDF石川が、得意の左足で前線に正確なロングボールを送ると、ハイボールを長身のFW大久保がうまく頭で落としてチャンスを作る。これに反応したのはMF秋葉とFW山崎の二人で、近いサイドに走ったMF秋葉の動きがダミーになって、その裏のFW山崎がフリーでボールを受けると、右足でシュートを落ち着いて決めて、あっという間に先制する。シーズン途中に広島から移籍してきたFW山崎は早くも4ゴール目となった。

いきなり先制ゴールを許した浦和は、前半21分にトップ下に入っていたMF田中達が負傷して交代。FWデスポトビッチが投入されて、FW高崎とFWデスポトビッチの2トップに変更となる。高さのある2トップとなったので「サイドからクロスを上げてゴール前で勝負する形」にもっていきたかったが、前半は、ほとんどいい形でクロスを上げられず。山形が1点リードして前半を折り返す。

後半も同様の展開で、同点ゴールを目指して攻勢をかけないといけない浦和のペースはが上がってこない。山形は前半途中からファールが多くなってきて、セットプレーのチャンスを与える場面が増えていくが、浦和のMF柏木やMFマルシオ・リシャルデスのキックの精度が今一つで、チャンスには結びつかない。

浦和は、後半途中に、MFエスクデロ・セルヒオとMF山田直を投入するも大きな変化は生まれず。結局、最後まで盛り上がるシーンを作れままで、1対0で試合終了。山形は残留に向けて貴重な勝ち点「3」を奪った。一方の浦和は、4試合勝利なしで、勝ち点は「28」のまま。14位に沈んでいる。

■ モンテディオが逃げ切り

「先取点を奪って逃げ切る。」というのは、山形の「得意のパターン」であるが、さすがに「開始2分での先制ゴール」のはちょっと早すぎるので、そのまま、逃げ切るのはしんどいかと思われたが、GK清水を中心に守り切って1対0の勝利を飾った。攻撃ではミスもあったが、守備ではほとんどミスも発生せず、DFラインを崩されるシーンもほとんどなかった。

山形は、今シーズン5勝目となって、勝ち点がようやく「20」に到達した。降格圏を脱出するには、どこかのチームを引きずり落とすことが必要になるとが、そういう意味でも、ターゲットの1つとなる浦和を相手に勝ち点「3」が獲れたというのは非常に大きく、「奇跡の残留」の芽も、少し出てきたといえる。

これで残り9試合。勝ち点「37」がJ1残留の目安とすると、残りの9試合で「5勝2敗2分け」が必要となる。これは、ちょっと厳しい数字であるが、次の川崎F戦も勝利して「4勝2敗2分け」になると、達成可能なレベルになってきて、選手たちのモチベーションも高まってくるはずである。17日(土)に、8連敗中の川崎フロンターレとホームで対戦するが、山形にとっては、非常に大事な試合となる。

■ 理想的なゴールシーン

決勝ゴールとなった前半2分のゴールシーンは、山形にとっては理想的な形のゴールであり、「DF石川の左足のフィード」、「FW大久保の高さ」、「FW山崎の飛び出し」という、このチームの攻撃の武器が見事にシンクロしたゴールだった。練習の中では、「飽きるほどトレーニングしているだろう。」と思えるくらいの必殺パターンであり、小林監督にとっては「してやったり」のゴールとなった。

浦和側で考えてみると、「これさえ封じておけば・・・。」というプレーだったので、対応のまずさは気になるところであるが、ボランチのMF秋葉の動きは素晴らしかった。FW大久保の落としに反応してボールに絡んでいったが、MF秋葉のこういう動きもしっかりとトレーニングされているはずで、偶発的に生まれたゴールよりもチーム全体の士気が高まりそうなゴールとなった。

値千金の決勝ゴールを挙げたFW山崎は、これで4ゴール目。「7試合で4ゴール」なので、新天地でも高い得点力を示している。今シーズン、広島では「MFムジリの加入」もあって出番を失っていたが、「動ける選手」はどのチームに行っても重宝される。ターゲット役のFW大久保とのコンビも良好である。

■ 選手交代も成功せず

一方の浦和は、またしてもホームで完敗を喫した。先制ゴールを許した後、ボールは支配していたが、決定機は数えるほどで、頼みのMF原口も、代表から戻ってきたばかりで「キレ」はなかった。今シーズンは、FW原口の個人技頼みの攻撃になっているが、MF原口が活躍できないと、チャンスすら作れなくなる。

こういう悪い流れの試合となったので、選手交代で変化を加えたかったが、ペトロビッチ監督の選手交代もうまくいかなかった。今シーズン、ペトロビッチ監督の選手交代が成功したことが少ないので、「いつも通り」ということになってしまうが、攻撃的なタレントをピッチに送り出すだけで、攻守のバランスを悪くするだけの交代が目立つ。この試合も同様だった。

■ 去り時を迎えたペトロビッチ監督

これで残りは9試合となったが、16位の甲府との差は「7」となっている。まだ、慌てるような差ではないが、ここから、浦和はアウェー3連戦が待っている。しかも、相手は、清水(A)、鹿島(A)、G大阪(A)と続いていくので、この3試合で勝ち点「1」とか、「2」に終わる可能性も、十分に考えられる。「危機感」を持って戦わないといけない状況になりつつある。

試合後に、クラブは柱谷GMの解任を発表したが、個人的には、同じタイミングでペトロビッチ監督も解任すべきだったと考える。オフの選手補強には成功し「優勝候補の一角」と言われていたが、この成績である。今シーズンの浦和の戦力を考えると、全く考えられないような成績であり、それなりの監督を連れて来ていれば、誰がやっても、今の成績以上の成果を残せるのではないか?

「結果は出ていないけれども、やっているサッカーは面白い。」というわけでもなく、「若手を積極的に使って、経験を積ませている。」というわけでもなく、「堅実なサッカーをして『勝てるチーム』を目指している。」というわけでもない。特徴のはっきりしない監督である。「クラブのOBだから」という理由で、指導者としての評価をされることなく、監督に招聘されたペトロビッチ監督も気の毒といえば気の毒であるが、チームを去るべき時が近づいて来ているのでは?と感じる。