2010年、心に残ったあの言葉
高校選手権も終了し、ほぼすべてのスケジュールが終わった感のある2010年度の日本フットボールシーン。今年度も色々な現場で取材させていただき、色々なことを勉強させてもらいました。そこで、今回はその取材ノートからほんの一部ではありますが、お聞きした話の中で印象に残った言葉を、その背景と共にご紹介したいと思います。ただ、Jリーグの話題は色々な所でも目にする機会が多いと思うので、それ以外のカテゴリーを中心に集めてみました。
2010/9/4 キリンチャレンジカップ2010
日本×パラグアイ@日産
“「PKがあったら蹴るか?」と聞いたが、「イヤ…」と言ってましたね”
試合終盤に駒野友一を起用した理由を聞かれた流れで、原博実・日本代表監督代行。会見場も大きな笑いに包まれました。
2010/9/20 高円宮杯(U-18)ラウンド16
サンフレッチェ広島ユース×セレッソ大阪U-18@西が丘
“ポジションに拘らず、どこでもできないといけないんですよ。
ピッチの中に入ったらポジションなんてグシャグシャになるし”
試合中に選手のポジションを何回も動かしたことを聞かれた、広島ユース・森山佳郎監督。キックオフ時に3バックの一角だった越智翔太は、65分から3トップの一角に入っていました。
2010/10/9 高円宮杯(U-18)準決勝
静岡学園×サンフレッチェ広島ユース@国立
“ウチはガクエンらしさが大事。ガクエンらしさが出せて、2点取れた。最高の出来”
静岡学園・川口修監督。強豪の広島ユース相手に前半2点をリードしながら、逆転負け。それでも、ガクエンらしさが出せた事に手応えを感じた、“ガクエン”の監督らしいコメントでした。
2010/11/13 高校選手権東京A決勝
帝京×駒澤大学高@西が丘
“中学出身だろうと、クラブ出身だろうと、鍛えれば何とかなるんです”
成立学園、帝京を破って悲願の全国大会出場を掴んだ駒澤大学高・大野祥司監督。キャプテンの大畠一馬を含めレギュラー3人が中学出身のチームは全国でも2勝を挙げ、その存在を大きくアピールしました。
2010/11/14 高校選手権群馬準決勝
伊勢崎商業×前橋育英@敷島
“高校に入ったのは自分の代で選手権に出るためなんで”
県の準決勝を突破して、全国へ王手を懸けた直後の前橋育英・小島秀仁キャプテン。全国では3回戦で流通経済大柏にPK戦で敗れましたが、やはりその存在感は際立っていました。
2010/11/21 高校選手権千葉決勝
流通経済大柏×市立船橋@市原臨海
“本当は2チームが全国に行ければ一番良いんですけどね”
もはや“クラシコ”とも言うべき、市立船橋との決勝を制した流通経済大柏・本田裕一郎監督。インターハイの全国王者が散った、ハイレベルな一戦でした。
2010/12/5 全国地域決勝大会決勝ラウンド
三洋電機洲本×カマタマーレ讃岐@市原臨海
“いくらいいサッカーをしてても、勝たなきゃこの地域リーグでは意味がない。
僕はカマタマーレをJFLに上げるためだけにやってきた”
地域決勝3度目のチャレンジで悲願のJFL昇格を達成したカマタマーレ讃岐・北野誠監督。このカテゴリーの強者に義務付けられた使命とプレッシャーを現わす、重い言葉です。
2010/12/18 インカレ1回戦
北海道教育大学岩見沢校×浜松大学@平塚
“最後まで頑張る所がウチのチームの愛おしい所。
自分から交替したいっていう選手は1人もいない”
北海道教育大学岩見沢校・越山賢一監督。2点先制され、退場者も出しながら驚異的な粘りで追い付き、延長後半終了間際の失点で敗れたとはいえ、その実力を十分に示しました。
2010/12/19 JFL入替戦第2戦
アルテ高崎×三洋電機洲本@浜川
“もうやりたくないです。胃が痛い。経験を踏まえたくないよ(笑)”
入替戦の経験を踏まえて来季にどう生かしたいですか、という質問に対してアルテ高崎・後藤義一監督。最後は実力差を見せ付けて、見事チームをJFL残留に導きました。
“選手は最後まで本当に頑張ってくれた。
来年もし34敗してもいいから、彼らをJFLに連れて行ってやりたかったです”
地域決勝3位、入替戦2戦合計1-4と、あと一歩でJFLへ届かなかった三洋電機洲本・稲葉宗久監督。試合後、いつまでもピッチを見つめている姿が印象的でした。
2010/12/23 インカレ準々決勝
関西大学×福岡大学@平塚
“僕に言われてやったことなんて、結局人に言われてやったことでしかない。
彼らが自分で考えてできるようにならなくてはいけない”
関西大学・島岡健太監督。自主性を重んじる37歳の青年監督に率いられた選手たちは、抜群のゲーム修正能力を武器に、この2週間後、43年ぶりの日本一に輝きました。
2010/12/26 Jユースカップ2010決勝
FC東京U-18×横浜F・マリノスユース@長居
“最後まで諦めないでやることは彼らの中に根付いていた。本当によく成長してくれた”
今年度最後の決勝も惜敗し、1年で2回の全国準優勝となったFC東京U-18・倉又寿雄監督。ただ、このゲームでも3度先行されながら3度追い付いた不屈の闘志は本当に凄かったです。
2011/1/3 高校選手権3回戦
前橋育英×流通経済大柏@フクアリ
“相手の選手が助走へ入る時に顔を見たら動揺しているのがわかったので、
「自分の方が気持ちが上だ、止めれるな」と思った”
2本のPKをストップして勝利に貢献した流通経済大柏のGK緒方大樹。本田監督が普段から施しているであろう、メンタルトレーニングの成果がよく現われている言葉だと思います。
2011/1/5 高校選手権準々決勝
西武台×立正大淞南@フクアリ
“GKのタイミングと合わないようにするためです。蹴る方も凄く難しいんですけどね”
“アレの練習はしています。ロスタイムが3分あると思ったので、
残り7分を基準にしていた。つまり10分間やろうと。”
共に立正大淞南・南健司監督。前者はPK戦でホイッスルが鳴ってから蹴るまで、みんな時間を取っていたこと、後者はコーナー付近でのボールキープのことを聞かれて。色々な事を考えている面白い監督さんです。
2011/1/8 高校選手権準決勝
流通経済大柏×久御山@国立
“みんなで練習するのがメチャクチャ楽しい。ツラいって思った事は1回もないです。
でも、楽しくやるのが一番いいじゃないですか。「笑う門には福来たる」って言うし(笑)”
普段は右SBながら、このゲームと決勝はCBを務めた久御山・松下千馬。久御山が掲げていた“笑顔”と“楽しむ”はホンモノだったと思います。
2011/1/8 高校選手権準決勝
立正大淞南×滝川第二@国立
“僕らは3位だったけど、応援は日本一だと思ってます”
大会アシスト王となる6アシストを記録した立正大淞南・池田拓生。確かに立正大淞南の応援は絶品。でも、池田が大会優秀選手に選ばれていないのは、ちょっと納得できません。
2011/1/10 高校選手権決勝
久御山×滝川第二@国立
“「ここから追い付けたら凄いんじゃないか」ということを端的に言った”
“「1点取ったらオモロイやろ」って監督に言われた。
円陣を組んでチームメイトにそれを伝えたら、みんな笑顔になった”
3点目を奪われた直後に、松本悟監督はキャプテンの山本大地を呼び寄せます。前者が松本監督で、後者が山本の述懐。ここから久御山の反撃が始まりました。
“全員を出したいという思いは昔から持っています。
どの大会でも1人でも1分でもいいからピッチに立たせたいという
思いがありますので、わたしのやり方はそんな感じです”
初の全国制覇を成し遂げた滝川第二・栫裕保監督。決勝までの6試合で登録25人中、24人を起用しての栄冠。まさに全員サッカーで輝いた日本一でした。
また長い1年が始まります。今年も色々な人や色々な言葉と出会えるように、取材しまくりたいと思います。
なお、今週のFoot!はアデマール・ペレイラ・マリーニョさんと、現在帰国中の藤原清美さんをお迎えして、“アドリアーノ(バルセロナ)&ニウマールインタビューを含むブラジル特集”をお送りしますのでお楽しみに!
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