■ 2回目

サッカー書評の第2回目は「ジャイアントキリングを起こす19の方法」。著者は、岩本義弘氏、田中滋氏、岡田康宏氏、是永大輔氏、川端暁彦氏、土屋雅史氏、北健一郎氏である。


(内容紹介)

大人気サッカーコミック 『ジャイアントキリング』 を、大御所・気鋭のサッカー人がプロ目線で徹底的に読み解く!!日本サッカーに“今”求められているものとは何なのか?ETU監督の達海猛は選手にこう語りかける―「お前ん中のジャイアントキリングを起こせ」。

【目次】

プロローグ 「ジャイアントキリングという発想」 … 岡田康宏

巻頭 ETU達海猛監督 バーチャル・インタビュー … 岩本義弘
第1章 達海猛のメンタルコントロール … 田中滋
第2賞 達海猛と弱者の戦略 … 岡田康宏
第3章 椿大介に見る、抜擢とブレイクの相関関係 … 川端暁彦
第4章 ひとつのクラブで戦い続けるミスターETU村越茂幸 … 土屋雅史
第5章 フリーライター・藤澤桂はどうやって生活しているのか? … 北健一郎
第6章 ETUのアイドル永田有里と広報のお仕事 … 北健一郎
第7章 達海猛から椿大介へ。ETU7番の系譜 … 岩本義弘
第8章 後藤GMと常勝チームの作り方 … 田中滋
第9章 笠野スカウトに見る、日本サッカーの現実 … 川端暁彦
第10章 日本における最高のファンタジスタ、ルイジ吉田 … 岩本義弘
第11章 平泉監督と監督の言葉 … 岡田康宏
第12章 FWのポジションを争う世良、堺、夏木のライバル関係 … 土屋雅史
第13章 ETUの守護神・緑川宏のGKテクニック … 北健一郎
第14章 赤崎遼が示す年代別代表のメリット・デメリット … 川端暁彦
第15章 ベテラン丹波の存在感 … 田中滋
第16章 ユナイテッド・スカルズとサポーターという生き方 … 岡田康宏
第17章 クラブ経営はつらいよ。ETUとアルビSの経営論 … 是永大輔
コラム 名古屋×ETU 試合レビュー … 土屋雅史


【感想】

『ジャイアントキリング』というフレーズがタイトルに入っている。はじめは人気漫画の名前だけを借りただけの「便乗本的」なものかと思ったが、そうではなくて、各章で「GIANT KILLING(マンガ)の登場人物(達海猛、椿大介等)」や「事象(ポジション争い、代表招集等)」、「役職(スカウト、ライター等)」などをピックアップし、「現実のサッカー」と照らし合わせて、それはどうことなのかか?どういうものなのか?を適度な長さで語っていくという流れである。

現実の世界とマンガを対比させるような形で書かれているが、もともとマンガ自体が現実的な世界の中で動いている話なので、戸惑いは少ない。上のように「17+2」に分けて書かれているが、それぞれを語っている書き手は、それぞれの得意分野であり、各章はなかなか読みごたえがある。

2010年12月末に発売されたばかりであり、直近の南アフリカワールドカップの結果も踏まえて語られている。面白いのは、「グラウンドの周辺」の事象に関する話である。マンガでも、このあたりの「生臭い部分」がうまく描写されており、感情移入しやすくてJリーグのクラブのサポーターにも支持されている部分であるが、「フロント」、「ジャーナリスト」、「スカウト」ら、あまり語られることのない部分についても触れられており興味を惹かれる。


実は、ちょうど、マンガの方を読み直していたところ(=2回目)であった。読むのは2回目で、GIANT KILLINGというマンガ自体に精通していたわけではなく、登場人物のキャラクターやプレースタイル等、まだ十分に把握できていなかったが、それなりには知識があったので違和感は少なかった。やはり、全くマンガを読んでいない人は戸惑いを感じる可能性はあると思うので、本書よりも先にマンガを読むことをお勧めしたいところであり、その後、本書を読むと面白さの度合いは高まるだろう。


ところで、GIANT KILLINGというと「名言」である。タッツミーの「お前の中のジャイアントキリングを起こせ」というフレーズがもっとも知られているが、それだけではない。(ちなみに主人公は35歳の達海猛。通称はタッツミーで、ETUというクラブの監督で、元スター選手である。) 個人的に好きな名言は・・・。


個人的に好きな名言 (ベスト7)

? → 「何でも思い通りにいって何が楽しいよ。俺が楽しいのは俺の頭の中よりスゲーことが起こったときだよ」(達海猛:監督)

? → 「味方のゴールが決まったら会社ぐるみで大喜びすんのよ。連敗でもしたらお通夜みたいに全員で暗くなっちゃって。こんな情熱注げて 感動できる職場・・・ どこ探したって見つからないわよ。」(永田有里:広報)

?  → 「そっか・・・わかりました。この町が居心地がいい理由・・・。似てるんです。私達のクラブの町の人達に。他のクラブのサポーターと比べたら規模も小さいし、格好悪いかもしれないけど、それでも皆、心を込めて、町ぐるみで自分のチームを応援してる。だから、なんだか温かいんだ。」(永田有里:広報)

? → 「お前が前線で受けるボール。そいつは味方が必死になってつないできた魂のこもったボールだ。お前にとってそのボールはなんだ?チームのボールか?お前のボールか?」

? → 「負けらんねぇとか思ってんなよ それじゃ勝てねぇんだぞ」(達海猛:監督)

? →  「ボールってのはな 世良・・・。しぶとく諦めない奴の前に必ず転がってくるもんなんだよ」(堺良則:フォワード)

? → 「世良みたいな選手ってのは自分に何ができないかを知ってる。それはつまり自分にできる限られたことが分かっているってことだ。だからピッチで迷わない」(達海猛:監督)



リアル・おススメ度 ★★★★★★★★★☆ (10段階で9)


こんな人におススメ

 ・ジャイアントキリングというマンガを愛読している人。
 ・どこかの1つのクラブを愛している人。
 ・クラブの裏側の部分にも興味のある人。


こんな人にはおススメ出来ない

 ・まだ、マンガを読んでいない人。




(単行本:amazonリンク)

GIANT KILLING(1) (モーニングKC)
GIANT KILLING(2) (モーニングKC)
GIANT KILLING(3) (モーニングKC)

GIANT KILLING(16) (モーニングKC)
GIANT KILLING(17) (モーニングKC)
GIANT KILLING(18) (モーニングKC)

GIANT KILLING 1-17巻 コミックセット (モーニングKC)



書評 (エントリー)

0875  2007/12/16  オシムジャパンを殺したのはセルジオ越後か?
1080  2008/06/01  松本育夫(サガン鳥栖GM)のサッカー人生
1325  2009/02/06  ザスパ草津と日本サッカーの未来図
1911  2009/12/18  【書評】 前園真聖のあまり知られていないキャリアの後半戦
2162  2010/10/25  【サッカー書評?】 『日本サッカー現場検証 あの0トップを読み解く』 (杉山茂樹氏)