「中国人は、大陸的だなあ」などと、よく言った。日本人と違い、細かいことを気にしない。悠然としていて、少々のことでは動じない。「中国人は、いい加減で困る」というニュアンスもあるが、むしろ「狭い島国で生まれ育った日本人は、小さなことを気にしすぎる。目先のことで大慌てする」との自戒をこめての中国人評だった――。

 ところがどうだ。最近の中国人は、まるで逆。とにかく何でも、手っ取り早く片付けないと、気がすまない。商売をしても、頭の中にあるのは一攫千金の夢。挙句のはては、ルール違反も続出。列に並んでいても、「何とか割り込めないか」と悪知恵をめぐらす。そうでなくても「一番早く、先頭にたどりつけるのは、どの列か」と頭を絞る。高速鉄道やリニアモーターカーで大喜び。手紙を出す時には、特別速達でないと気がすまない。

 時間をそれほど気にしなかった中国人が、どうして世界で一番「いらだつ」民族になってしまったのか。中国人自身も不思議に思うらしく、山東省のニュースサイト、大衆網は14日、「中国人はなぜ、ゆっくりする能力を喪失したのか」をテーマとする解説記事を掲載した。

 記事は、現代中国人の「いらだち」の起源は1919年の五四運動と主張。停滞している中国社会に危機感を抱いた知識人らが、短期間で西洋に追いつこうとしたことだ。その方法はしばしば、「激烈・粗暴」だったという。

 中華人民共和国成立後も、「とにかく、早くせねば」という風潮が続いた。「大躍進(1957−1959年)」は、典型例だ。世界第2位の経済国だった英国を「3年で追い越す」などと本気で考え、経済法則を無視した増産運動に、全人民が本気で取り組んだ。

 改革開放政策が実施されると、「文化大革命で失われた時間を取戻せ」が、全民族の「心からの叫び」になった。工業化やIT化が進み、加速を実現させる背景も整った。一方で、各分野で競争の激化や富の配分の不均等が発生。何事も遅れたのでは大損との考えが浸透した。その結果、「早くしないと遅くなる」との、それだけでは何の意味も持たない命題が、「早くしないと大損だ」を意味するようになった。

 人々の「いらだち」や「あせり」に拍車をかけているのが、社会の未熟さだ。行列している時、油断していると割り込みされる。「ならば」と、自分も割り込みのチャンスを狙う。人々は、手っ取り早く目的を達成するための「抜け道」探しに血眼になる。

 記事は、「われわれは、ルールを気にしない。つまり、ルールがまったく存在しないのと同じ」と指摘。ルールがない以上、先の予想は不可能になるので「現金は自分の手でつかむまで、まだ現金ではない」との考えが当たり前になったという。

 記事は最後の部分を、現状が続くようでは「きちんと行列して順番を待つという光景は、永遠の願望に終わるだろう」と、ため息をつくように結んだ。(編集担当:如月隼人)



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