11日の親善試合アルゼンチン戦は、フランスの完敗に終わった(0―2)。フランスは前半こそミスの目立つアルゼンチンを相手に優位に試合を進めたが、ハーフタイム直前に先取点を奪われると、後半は見違えるように機敏な動きを見せるアルゼンチンにボールを支配され、ほとんどなすすべもない状態のままゲームセットを迎えた。

 この“不甲斐ない”戦いぶりに、観客席からはフランスの選手に対するブーイングが容赦なく浴びせられた。これには試合が開催されたマルセイユという土地柄もある。マルセイユといえば、フランスでもっとも“熱い”サポーターが有名。地元チームを愛するあまり、リーグ・アンのライバル・チームの選手に対する敵視が激しいのはたしかだ。

 その証拠に、試合開始前の選手紹介のアナウンスの時点からすでに、アネルカ(元パリ・サンジェルマン)、ロリス、トゥララン、ベンゼマ(リヨン)、グルキュフ(ボルドー)らにブーイングが浴びせられ、喝采されたのは、マンダンダ、リベリ、ナスリ、カラソといった現在あるいは過去のマルセイユの選手たちばかりだった。

 しかしこの試合で異様だったのは、2点目を失ったあと。サポーターたちは、フランスの選手に愛想を尽かしたかのように、アルゼンチンの“応援”に回った。観客席からはアルゼンチン側のパスが通るたびに「オーレ」の声が上がり、フランス側にボールが回るとブーイングが沸き起こった。

 レキップ紙によると、選手たちも試合後、「普通じゃない。アウェーで試合をしているようだった(サーニャ)」、「スタッド・ド・フランス(パリ郊外)よりもタチが悪かった(トゥララン)」などと困惑した反応を見せた。主将のアンリは「マルセイユだけじゃない。フランスの観客はこうなんだ。おかしいよ」とうんざりしたように語る。

 監督ももちろん激しいブーイングの標的となった。フランス国内の代表戦でブーイングが起こるのは、ドメネク監督が就任してから顕著に見られることだ。これはアンリが指摘するように、マルセイユという土地柄だけの問題ではない。フランス・サッカー連盟も、国民の“代表離れ”に危機感を抱き、テレビのスポットCMその他でイメージ改善に力を入れているが、単純にして最良の解決策は、いいゲームをして勝つことだろう。数字を見るだけでも、ここ10試合の戦績は3勝4敗3引き分け、得点は1試合平均わずか1.2点、と魅力に乏しいのは明らかだ。