コムスン本社が入っている六本木ヒルズ

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   岡山県は2007年5月8日、虚偽申請に絡んで指定取り消し処分へ向け手続きを進めていた訪問介護大手「コムスン」(東京・港区)の看護事業所(岡山市内)について、コムスン側が廃業届を出したため処分ができなくなったと発表した。コムスンを巡っては似たような例が3月にも東京都内であった。

   岡山県によると、「コムスン訪問看護ステーション岡山」で勤務実態がない看護師を常勤として虚偽申請していたことが06年8月にあった定期の調査で分かった。07年1月には県が施設に立ち入って監査をし、事業所の指定取り消しに向けて準備を進めていた。するとコムスン側は5月2日、廃業届を提出し、指定取り消し処分ができなくなった。

コムスンには、聴聞日程まで伝えてた

   岡山県長寿社会対策課の中田正明課長は、5月8日の記者会見でコムスンの対応について、「(指定取り消し)処分逃れの疑いがある」と話した。虚偽申請に基づく介護報酬申請があったとして、400〜500万円を岡山市へ返還するよう求める。指定取り消しより軽い処分ということになる。指定取り消しは、一つの事業所が取り消し処分を受けると、「連座制」として同一会社のほかの事業所にも指定取り消しを適用できる重い処分だ。しかし、廃業した事業所へさかのぼって処分を出すことはできない。

   コムスンが5月2日に廃業届を申し出た際、県側は「処分逃れと評価される可能性がある」と注意を呼びかけたが応じなかった。指定取り消し処分に向け、県は準備を着々と進めていた。5月7日には、処分対象者の反論などを聞く「聴聞」の手続きが予定されており、コムスン側には4月20日に聴聞日程を伝えていた。それでもコムスン側は「事前からの全体的な事業縮小の一環。人員配置の問題もある」と答えた。

   9日夕現在、同課へのコムスンに対する電話は目立った本数はかかってきていない。うち1本を取ったという職員によると、コムスンの対応への批判と同時に、コムスンを逃がす形になる制度への疑問を語る内容だった。職員ももどかしさを感じるという。

「配置適正計画の一環」と説明

   東京都でも07年3月に似たようなことがあった。都内のコムスンの3事業所で介護報酬不正請求があったとして、都は指定取り消し処分の準備を進めていた。問題があったとする監査結果を伝えるため、3月23日に関係者に出向くように伝えると、23日にコムスンは該当事業所の廃業届を出し、処分ができなくなった。このときもコムスン側は「事前からの事業縮小の一環」と説明した。都幹部も「処分逃れ」の可能性を指摘していた。

   コムスンの親会社「グッドウィル・グループ」広報IR部は、J-CASTの取材に対し、文書で回答した。廃業届を出した理由を聞くと、応募が少なく、職員の退職も相次ぎ、「やむなく事業を廃止せざるを得ないとの判断に至りました」と答え、処分逃れではない、としている。さらに、「全国の事業所の統廃合を伴う配置適正化を進めており、(岡山も東京も)この適正化計画の一環であります」と説明している。また、東京の件については「お客様のご了解を得た上で近隣事業所にサービスを移管させていただき、配置適正化計画の一環である3事業所の廃止(ママ)届けを(略)提出し、受理されております」と答えた。2007年4月11日にJ-CASTニュースが、東京の件で取材した際は「マスコミ各社の質問にはお答えできません。(ホームページで)発表した資料以上のことはないので」との回答だった。