東京証券取引所は2007年3月12日、不正会計問題で監理ポストに割り当てられていた日興コーディアルグループの株式の上場を維持すると決めた。この1カ月にわたり伝えられていた「上場廃止」のマスコミ報道がミスリードだったことが明るみに出た。しかも、日経、朝日、読売、時事、共同などがそろって誤報する、という異常な事態となった。

   監理ポストの割り当て解除日は3月13日。東証は、上場会社が有価証券報告書等に虚偽記載を行い、かつ、その影響が重大な場合に上場廃止とする基準に該当しないと判断した。大阪証券取引所や名古屋証券取引所も同日、日興株の上場維持を発表した。
   上場維持の理由を、東証の西室泰三社長は「(不正会計が)組織的、意図的とまでは言えない」としている。

日経新聞が「上場廃止」で口火切る

   日本経済新聞社は2月27日に「日興、上場廃止へ 東証が最終調整、4月に」、また翌28日朝刊1面トップで、「東京証券取引所が日興コーディアル株を上場廃止にする方向で最終調整に入った」と報じた。同社の不正会計が組織ぐるみで悪質だとされ、新聞各紙も後追いした。
   これに対して東証は同日、「現時点では、結論に結びつくような方向性を一切有しておらず、従って、本日の報道については事実誤認といわざるを得ません」とのコメントを発表していた。
   3月2日には朝日新聞が「日興、上場廃止へ 不正決算問題で3証取」、同6日には日本経済新聞が再び、「東証 日興上場廃止、9日に決定へ」、読売新聞も「日興上場廃止へ、シティのTOB有利に」、共同通信も「東証が日興株の上場廃止を9日に決定する方針を固めた」と伝えた。
   翌7日には時事通信が「日興上場廃止、9日にも決定=「利益水増し悪質―上場廃止」。時事通信は、その9日に「日興上場廃止 14日までに決定=調査遅れずれ込み 東証」と報じるなどヒートアップしていたが、蓋を開けてみれば、ほとんどのマスコミ報道は間違っていたことになる。