野球ブログ「ホットストーブリーグ」の15日付記事は興味深い内容だった。ファンの応援ブログ「ヤンキースファン VS レッドソックスファン」16日付記事に寄せられたコメントの中でも2007年の新人王についてちょっとした論議が盛り上がっていた。ここからレッドソックスのファンは何を汲み取るべきだろうか。

  ともかく、ニューヨーク・タイムズなどにコラムを寄稿しているスポーツライター、アラン・シュワルツ氏は、レッドソックスに入団した松坂大輔投手を今年のアメリカンリーグ新人王の最右翼と予想している。私も同意見だし、実現を願う。期待は日ごとに膨らむばかりだ。

  ところで、誰が新人王争いで松坂をおびやかすのだろうか。点検してみよう。

1)ダスティン・ペドリア内野手(23):ボストン・レッドソックス

この「オーバー・ザ・モンスター」はレッドソックスの応援ブログだし、私はもちろんボストンのファンだから、当然、ダスティン・ペドリア内野手を候補に挙げておく。ただし、ペドリア選手が新人王を獲得する可能性は候補者の中では最も小さいだろう。

有望な要素:ボールカウントに応じた打つべき投球コースの把握、つまり「プレート・ディシプリン」に長じている。レッドソックスのレギュラー、マーク・ロレッタ二塁手より守備範囲が広く、頭脳派の選手。身長180センチと大リーグ選手としては小柄だが、体格に似合わないパワーがある。

不利な要素:足があまり早くない。ロレッタ選手と比べると守備の安定性に欠ける。体の割に力はあっても大リーグ全選手を見渡せば特筆するほどではない。昨シーズン大リーグで31試合出場したが、打率が1割9分1厘と結果を出せなかった。BABIP (打球がヒットゾーンに飛ぶ確率)が低いか、大リーグ級の投手のボールを打ち返す力がまだ足りなかったようだ。

2)デルモン・ヤング外野手(21):タンパベイ・デビルレイズ

  デビルレイズはデルモン・ヤング内野手の新人王資格を2007年につなげるために昨シーズンの大リーグでの起用を制限したのかもしれない。前出のペドリア選手と違い、大リーグに出場した30試合で3割1分7厘の堂々たる成績を残した。

有望な要素:ホームランと高打率の両方を期待できる打者になるだろう。しかも、目立たないが足も速い。ニューヨーク・ヤンキースで主軸を打つベテラン、ゲーリー・シェフィールド外野手のようなタイプだ。

不利な要素:カウントに応じた打撃ができるようプレート・ディシプリンを磨く必要がある。練習嫌い。プレーだけでなくグランド外の放言でしばしば物議をかもすシェフィールド選手が持つ性格の欠点も、ヤング選手に似通っているところがある。

3)マット・ガルサ投手(23):ミネソタ・ツインズ

  ツインズ投手陣の柱、あるいは、先発ローテーションの2番手になる能力を秘めている右投げのピッチャー。ただし、エースのヨハン・サンタナや新星フランシスコ・リリアーノの両投手などピッチングスタッフが充実しているだけに経験の浅いマット・ガルサ投手に回ってくるチャンスは少ないかもしれない。昨年は大リーグに昇格する前のマイナーリーグではWHIP(1イニングあたりに許した出塁数)を1.21未満に抑えていた。

有望な要素:被本塁打や与四球が少ない。三振を取る力量がある。

不利な要素:有望な投手には誰でも当てはまるが、いくら前評判が高くても結果を出さなければ意味がない。カリフォルニア州セルマ生まれのガルサ選手にとって州境がカナダと接する寒冷地ミネソタ州の気候は不利に働くだろう。

4)ブランドン・ウッド内野手(21):ロサンゼルス・エンゼルス

  昨シーズン所属していた2Aでは25本とホームランを量産し、マイナーリーグではパワーを存分に発揮した。盗塁19と走力もある。守備位置は遊撃。ただし、エンゼルスはショーン・フィギンス、ダラス・マクファーソン、ロブ・キンラン、シアー・ヒレンブランドの4選手で定位置を争わせる計画に失敗したらブランドン・ウッド内野手の3塁起用も検討するだろう。

有望な要素:パワーが魅力。遊撃手や3塁手として大リーグで平均以上の選手になれるだろう。大リーグに昇格すればOPS(出塁率と長打率の合計)で8割5分は今からでも固いだろうが、生涯成績は間違いなく9割を超えるだろう。

不利な要素:スカウトの間からは遊撃手として長期間活躍するのは難しいと指摘する声が出ている。エンゼルスの遊撃にはレギュラーのオーランド・キャブレラがどっしりと座っており、壁は厚い。三振が多いのも気になる。

5)アレックス・ゴードン内野手(22):カンサスシティ・ロイヤルズ

  アレックス・ゴードン内野手は必ずスター選手になる非凡な才能を持つ。ワシントン・ナショナルズの同じ三塁手で22歳のライアン・ジンマーマン内野手は優れた選手だが、ゴードン内野手はもっと器が大きい。

有望な要素:プロ1年目の昨シーズンは2Aのウィチタで出塁率と長打率の合計であるOPSで10割0分1厘5毛と10割台を達成。22盗塁と走力も証明した。出場130試合で72四球を奪い選球眼が良い。そしてパワーにも恵まれている。

不利な要素:ロイヤルズの三塁はマーク・ティーヘンが定位置をつかんでおり(ティーヘン選手は外野へコンバートされるかもしれないが)、レギュラーへの道は険しい。ロイヤルズはザック・グリンキー投手をマイナーリーグでじっくりと育てているように若手の有望選手を未成熟なまま大リーグで起用することに消極的だ。大リーグで頭角を現すには激烈なチーム内競争にまず勝たなければならない。

6)フィリップ・ヒューズ投手(20):ニューヨーク・ヤンキース

  ヤンキースのファンだけがこの若い選手を大げさにもてはやしているだけだと切り捨てるわけにはいかない。騒ぐだけの価値は十二分にある右投げの投手。

有望な要素:素晴らしい素質は数え上げればきりがない。ヤンキースが誇る豪華・重量打線も若いフィリップ・ヒューズ投手にとっては力強い援護となるだろう。

不利な要素:20歳とまだ若過ぎる年齢だから“当面”は3Aの武者修行を強いられよう。ヤンキースのコーチ陣は投球術の向上と球数を減らすよう指導している。新人王として1年間の十分な働きを示すには時期尚早かもしれない。しかし、欠点はほかにまったく思いつかない。

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  上記6人のほかにも有力新人はまだまだ控えている。デビルレイズの岩村明憲内野手、同ジョエル・グスマン内野手(ESPNのサイトに関連記事あり)、シカゴ・ホワイトソックスのジョシュ・フィールズ内野手、テキサス・レンジャースのジェイソン・ボッツ外野手、ロイヤルズのルーク・ホッチェバー投手などが虎視眈々(こしたんたん)と新人王を狙う。

  さて、皆さんは誰が新人王に輝くとお考えだろうか。候補になりそうでも昨シーズンのヤング内野手のように2008年を期して出場機会を減らす選手が出てくるかもしれない。また、若い選手ばかりだから、パワーや技術不足が露呈し新人王レースから脱落する選手も出てくるだろう。いずれにしろ新人王の獲得までシーズンを通して激しい争いが演じられるはずだ。【了】

■オリジナル記事:Daisuke, Rookie of the Year (?).

■ブログ: オーバー・ザ・モンスター(Over the Monster)(2007年1月16日付)より

■筆者 アレン・チェイス(Allen Chace)氏:
  米大リーグの名門ボストン・レッドソックスを応援する「オーバー・ザ・ モンスター」はランディ・ブース氏が運営するブログ。

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