発表!日本全国「ラーメン県」ランキング 3位北海道、2位福岡、1位はまさかの...
「うどん県」といえば香川、そして「そば県」は長野......、では「ラーメン県」となると、いったいどこになるだろうか。札幌・博多・京都・喜多方・尾道など、さまざまなご当地ラーメンが思い浮かぶのだが、日本を代表する「ラーメン県」となると、なかなか......。
そこでJタウンネットでは、「ラーメン県といえば、どこ?」というテーマで、アンケート調査を実施した(総得票数5047票、2019年4月8日〜5月28日)。
はたして、その結果は――。
海鮮ダシをふんだんに使う、酒田ラーメンが人気?
ラーメン県といえば、どこ? 都道府県ランキング(Jタウンネット調べ)
「ラーメン県といえば、どこ?」という問いに対して、全国の読者が選んだのは、なんと山形県だった。総得票数の19%にあたる943票を獲得した。2位の強豪・福岡県に僅差をつけて、1位に輝いたのだ。
一方、こんな統計もある。NTT東西のタウンページデータベースをもとにした17年の調査結果によると、人口10万人当たりのラーメン店舗数で、山形県は67.41軒で、日本一である。第2位の栃木県が48.67軒、全国平均が25.17軒だ。山形県には、全国平均の約3倍のラーメン店が存在しているという。
また、総務省の「家計調査」(17年3月発表)によると、「年間1世帯当たりの中華そば(外食)の支出金額」は、山形市が15622円で第1位。第2位の新潟市が11900円、全国平均が5929円だというから、山形市民は、全国平均の約3倍もラーメンに支出していることになる。
「ラーメン県といえば、どこ?」というJタウンネット調査の、「第1位 山形県」という結果も、けっして不思議ではないのだ。
ラーメン満月のワンタンメン(Rebirth10さん撮影、Wikimedia Commonsより)
例えば、近年、人気が高いのは、山形県北西部に位置する酒田市の「酒田ラーメン」だ。
スープの特徴は、すっきりした醤油味で、脂分も少なくさっぱりしているが、何ともいえないコクがある。日本海に面しているだけに、トビウオやカツオブシ、サバブシ、煮干し、こんぶなど、海鮮ダシをふんだんに使い、旨味を存分に引き出している。思わずスープを飲み干してしまうほどだ。
酒田は、江戸時代、北前船交易で繁栄を極め、「西の堺、東の酒田」とも称された東北屈指の港町だ。廻船問屋の鐙屋や、日本一の大地主と言われた本間家など、数多くの豪商たちが活躍した時期も......。
酒田、鶴岡を中心とした庄内地方には、舌の肥えた客が多く、食のレベルの高さは相当なものだったようだ。
その食都・酒田にラーメンが登場したのは、大正時代末期。中国人から手ほどきを受けたのがきっかけで、ラーメンづくりの技術が受け継がれてきたと言われている。100年近い歳月の中で、港町ならではの進取の精神と、伝統に裏打ちされた食文化が、独自のラーメン文化を育んできたと言える。ダシにこだわると同時に、自家製麺へのこだわりも、その大きな特徴の一つだ。
酒田、鶴岡など庄内は、映画『おくりびと』などのロケ地としても知られているが、長期ロケの期間中、映画スタッフたちが庄内のラーメンを好んで食していた、と聞いたことがある。彼らの口コミも、ひょっとしたら今回の調査に反映されているのかもしれない。
山形市の冷やしラーメン(Junya Oguraさん撮影、Wikimedia Commonsより)
一方、山形県の内陸部に位置する山形市は、冬の寒さが厳しい。だが、夏は相当に暑い。夏に冷たいラーメンを食べたいという常連客の要望に応えて、「冷やしラーメン」が生まれたという。山形ラーメンは醤油味が多いが、冷やしラーメンも醤油味がほとんどだ。
山形県は大きく4つの地方に分かれる。山形市や天童市、寒河江市などを含む、村山地方。新庄市や金山町、最上町などの、最上地方。米沢市や南陽市などの、置賜地方。そして日本海沿いの酒田市や鶴岡市などの、庄内地方。この4つの地方のそれぞれに、地元の食材を活かしながら、独自の食文化を反映した、特色あるご当地ラーメンが誕生していることも、興味深い事実だ。
村山地方には、山形市の「冷やしラーメン」の他に、天童市の「鳥中華」がある。まろやかな甘味が特徴の牛骨スープを使ったラーメンだ。
最上地方には、新庄市の「とりもつラーメン」。思いのほかあっさりして食感が楽しいとりもつをトッピングしている。
置賜地方には、鶏ガラスープに細い手揉み縮れ麺が特徴の「米沢ラーメン」(米沢市)や、味噌ベースのスープに中太縮れ麺で唐辛子の入った辛味噌がのった「赤湯ラーメン」(南陽市)がある。
そして庄内地方には、前述の「酒田ラーメン」と、それぞれ個性的なご当地ラーメンが多くのファンに支持されていて、山形をラーメン県トップに押し上げることにつながったのかもしれない。
多くの愛好家に熱く支持されてきた感じもある山形県のラーメンだが、今回の調査で一躍広く脚光を浴びることになった。今後、さらに注目を集めるようになることは、たぶん間違いないだろう。
豚骨スープと極細麺で、全国へ...
屋台の博多ラーメン(Hykw-a4さん撮影、Wikimedia Commonsより)
さて、惜しくも2位に甘んじたのは、福岡県だった。総得票数の18%にあたる927票を獲得した。本命と予想する人も多かっただけに、思いがけない結果と言えるかもしれない。
福岡県福岡市で作られる博多ラーメンは、豚骨主体の乳白色のスープと極細麺が特徴だ。麺の硬さを注文することや替え玉なども、博多ラーメンの特色である。有名ラーメン店の中には、全国展開や海外進出に成功する企業もあり、ご当地ラーメンブームの火付け役となった。福岡市では、さまざまなラーメン専門店や屋台が、博多ラーメンを提供しており、観光スポットとしても大人気だ。
久留米ラーメンは、福岡県の南部に位置する久留米市で作られている、豚骨スープとストレートの細麺をベースにしたラーメンだ。戦前発祥と伝えられ、鹿児島・沖縄を除く九州全県に影響を与えたと言われている。
また大牟田ラーメンは、戦後、三井三池炭鉱で活況を呈していた大牟田市に誕生したと言われる。白濁した濃厚な豚骨スープのラーメンと、あっさりとして少し透明感のあるラーメンが共存している。
今回の調査では残念ながら2位となった福岡県だが、豚骨スープの人気は相変わらず健在だ。全国からの支持を集め、1位を奪還するパワーは、まだ十分にあると言えるだろう。
野菜、魚介類、バターやコーンも...
札幌の味噌ラーメン(Schellackさん撮影、Wikimedia Commonsより)
第3位となったのは、北海道だ。総得票数の12%にあたる607票を獲得した。1位、2位には、少し差をつけられてしまったが、安定の底力を見せた。
札幌ラーメンの発祥は、1920年代、大正期後半、中国人料理人から伝授されたという。1955年、味噌ラーメンが誕生し、やがて味噌ラーメンに合う麺も開発された。札幌ラーメンとしての「味噌ラーメン」が定着し、全国に広まっていく。ご当地ラーメンブームのはるか昔のことだ。
札幌ラーメンでは、タマネギ・キャベツ・モヤシなどの炒めた野菜を載せるのが定番だ。北海道ならではのホタテ、カニなどの魚介類のほか、バターやコーンも使用される場合もある。ラーメンが冷めるのを防ぐために、スープにラードなどを浮かべることもある。またチャーシューの代わりに、挽肉を使うケースも......。
旭川ラーメンは、魚介類と豚骨、鶏ガラ、野菜で出汁を取ったスープに、醤油ダレを合わせた醤油ラーメンだ。野菜ラーメンなどのバリエーションもある。
函館ラーメンは、国内でも有数の長い歴史を持つラーメン文化を持つ。豚骨ベースで脂分が少ない清湯スープの塩ラーメンが代表だ。
全国にファンを持つ北海道ラーメンだが、道民からの支持は圧倒的だった。
4位以下の、上位県にもふれておこう。
4位に入ったのが新潟で、248票、4.9%だった。新潟のあっさり醤油ラーメン、燕三条の背脂ラーメンが人気なのだろうか。
5位は福島(244票、4.8%)、6位東京(233人、4.6%)、7位京都(142人、2.8%)、8位愛知(134人、2.7%)、9位神奈川(113人、2.2%)、10位青森(98人、1.9%)、11位栃木(96人、1.9%)と続く。
なるほど......と、思い当たるご当地ラーメンもあれば、いったいなぜだろうと、首をかしげるところもある。どの県も、地元からの得票は圧倒的のようだ。とくに東日本の各県が健闘しているのが目立った。