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もくじ

ー 1990年代にはすでに
ー ダイソンに訊く 一問一答
ー 多くは明かされず 待ち遠しい正式発売

1990年代にはすでに

遠心分離でディーゼル微粒子の捕捉にトライする一方、1990年代にはすでにサー・ジェームズ・ダイソンの頭のなかにはEVのアイデアがあった。


自動車の排気ガスが有害であることは分かっていたものの、彼の浄化技術を売り出そうという試みは、ディーゼルは「クリーンでグリーン」だというプロパガンダによって、頓挫させられている。

2021年からダイソン製EVの量産が行われるシンガポールの拠点で、ダイソン本人にこのクルマの設計について話を聞くことができた。

ダイソンに訊く 一問一答

――なぜEV市場に参入するのでしょうか?

「ダイソン独自の排ガス浄化システムに興味を示すところはありませんでしたが、われわれには、他のダイソン製品向けに高速回転可能な電気モーターを開発している素晴らしいチームがあり、空気清浄の研究も行っていました。さらに、空力の専門家もいて、全固体電池の研究開発も進めていましたから、こうしたものを集めれば、EVの主要コンポーネントを揃えることができると気付いたのです」

――EV市場の動向にどのような見解をお持ちでしょうか?

「自動車業界とその専門家は市場の成長性に懐疑的なようですが、ひとびとがEVを購入するのは、環境を汚染したくないからであり、専門家が思うような理由とは無関係です。社会はEVを受け入れる方向へと進んで行くでしょう」

――大型で高級なモデルとされるダイソン製EVの市場におけるポジショニングをどのようにお考えですか? プレミアムなモデルとなるのでしょうか?

「このまま開発が進めば、おそらくはプレミアムなモデルということになるでしょう。いくつかのバージョンや、単にボディサイズが長いとか短いと言う以上の違ったタイプも登場させる予定です。価格について、いまのところお話しできることは何もありませんが、われわれは大量生産メーカーではありません。実際に生産を始めても、決して安価なモデルになることはないでしょう。もちろんベストを尽くしますが、一方で、ダイソン製EVは数多くの革新性を備えた大型モデルであり、手ごろな価格にはならないと思います」

――なぜダイソン製EVは独特のプロポーションを採用するのでしょう?

「すべては効率性のためです。高い最低地上高と低いルーフラインを採用することで、効率性に大きく影響する前面投影面積を削減することができます。大きなグランドクリアランスを実現するには、大径ホイールが必要であり、転がり抵抗を少なくするとともに、積雪路やウェット路面でも優れたグリップを発揮し、大型ブレーキも装着可能でありながら、十分な接地面積も確保しています」

――特許情報によれば、動力源はバッテリーとともに、水素とハイブリッドの可能性も示されていますが、ダイソン製EVはバッテリー専用モデルとなるのでしょうか? また、全固体電池が採用されるのでしょうか?

「動力源はバッテリーです。バッテリーの方式については、まだお話できることはありませんが、いま、英国、米国、日本とシンガポールの4カ所で、ふたつの異なるタイプの全固体電池の研究を進めているところです」

多くは明かされず 待ち遠しい正式発売

――バッテリー航続距離はどれほど重要なのでしょうか?

「社会が求めているのは、可能な限り長い航続距離を持つEVだと考えています。われわれの計画を見てお分かりのとおり、ダイソン製EVには大型バッテリーパックが積まれることになります。一方で、空力性能と前面投影面積も航続距離には大きく影響しています。充電のたびに、低い効率を実感させられるようなモデルが、ひとびとに受け入れられることはないでしょう。さらに、高効率モーターも航続距離を延ばすには有効であり、回生充電の効率を高めることもできます」

――ダイソン製EVでは快適性を非常に重視しているようです。大きなグランドクリアランスと大径ホイールでは、ホイールトラベルも多くなりそうですが、エアサスペンションや車高調整システム、モード切替えは採用されるのでしょうか?

「確かに快適性は非常に重要であり、是非われわれのEVで実現したいと考えています。大径ホイールがもたらすもうひとつの側面であり、ご質問の内容についても検討を行っています。すべてを明かすことは出来ませんが、サスペンションは非常に重要なコンポーネントであり、ピッチングが良い例ですが、ロングホイールベースを採用することで、対応がより容易になります。すべてが非常に興味深く、開発作業は素晴らしい体験となっています」

――軽量化について何度も言及されていますが、ダイソン製EVでは主要部材にスチールは採用されないのでしょうか?

「スチール製モデルのような生産規模は想定していませんが、それでも、それなりの生産台数を達成したいと考えています。カーボンファイバーの使用は興味深い試みであり、非常に小規模なスペシャルモデルには良いのかも知れませんが、われわれには時期尚早だと考えています。ダイソン製EVのシャシーにはそれほど革新的な試みは必要ありません。お話できるのは、ボディにはアルミニウムが使用されるということだけです」

――目標とする車重はどのくらいでしょうか?

「バッテリーの重量はエンジンよりもはるかに重くなります。しかし、低重心化は可能であり、内燃機関を積んだモデルよりもはるかに低い重心位置を実現することができます。もちろん、バッテリーは主な重量増の要因ではありますが、出来るだけそのデメリットを相殺するつもりです。一方、回生充電にはメリットでもあるのです」

――ダイソン製EVには、より多くのドライバーを惹きつけるためのエントリーモデルも登場するのでしょうか?

「技術の進歩によるところが大きいと考えています。全固体電池を実現することができれば、それがきっかけになるかも知れません……」

――さらなるダイソン製EVに関する情報はいつごろ発表予定でしょうか?

「正式発売までお待ちください。いまこうしてお話しているのは、特許情報が公開されたからです。通常、正式発売まで製品についてお話することはありません。民間企業として、自分たちのやり方で進めていくつもりです」