左がバレンシアの100周年エンブレム。たしかにバットマンのマーク(右)に似ているが……。 (C) Getty Images

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 クラブの創設を祝すべく作り出したものが、思わぬ火種を生み出してしまったようだ。

 現地時間3月18日、スペイン紙『El Confidencial』は、ラ・リーガの名門バレンシアのエンブレムを巡って、人気アメリカンコミックの『バットマン』を制作している出版社『DCコミックス』から訴えられていることを報じた。

 訴訟の対象になっているのが、バレンシアがクラブ創設100周年を記念して創作した新たなエンブレムだ。これまでのロゴと同様、コウモリを大きくあしらったデザインとなっているのだが、これがバットマンのシンボルマークに酷似しているため、知的財産権の侵害であると訴えられたのだという。

 同紙によれば、バレンシアは2014年にも同様の理由で『DCコミックス』に訴えられており、その際にはクラブ側が新デザインの使用を取りやめていた。

 ただ、創設100周年を記念したものだけに、今回はバレンシアも引き下がるつもりはない。クラブの広報は、「世界中でコウモリを独占的に使えるコマーシャルブランドはない。我々のクラブがコウモリを付けてプレーし始めた時、バットマンの国、アメリカはバイソンを追いかけていただろう」と、長きに渡って、コウモリをモチーフとして使用していたことを強調した。
 
 バレンシアがエンブレムにコウモリを使用するようになった理由は、13世紀にまで遡る。1238年にハイメ1世が国土回復運動を行なってバレンシアを征服した際、一匹のコウモリが王の肩に止まったことで戦いを助けたという言い伝えが由来と言われている。

 そして、バレンシアはクラブが誕生した1919年には、すでにコウモリをあしらったエンブレムを使用しているのだ。ちなみにバットマンの連載が始まったのは1939年のことである。

 同紙によれば、DCコミックス側は、マドリードにある法律事務所を通して、欧州連合知的財産庁(EUIPO)へ訴えに関する書簡を送ったとされており、今後は法廷の場で争われる可能性が高いとされている。

 アメリカの人気ダークヒーローから訴えられてしまったバレンシアは、記念すべき100周年エンブレムの使用を禁じられることになるのか。長きに渡って受け継がれてきたコウモリのデザイン自体が認められなくなる可能性もあるのか。今後の展開が注目される。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部