ニコ動出身の「米津玄師」と「ぼくりり」 明暗を分けたポイント

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「事務所には大きな仕事のオファーが相次いでいるのは間違いないでしょう。CMなどは本人出演込みの高額ギャランティでの依頼があると聞いています。スタッフは仕事を選ぶ目利き力と、断る力が今年の一番の任務になりますね」(広告代理店関係者)

昨年暮れ、紅白出演で話題をさらっていった米津玄師。現在は全国アリーナ・ツアー中だ。彼は、桑田佳祐、吉田拓郎などのカリスマ・アーティストからも評価が高い。


アイドル、バンド、K-POPの「団体戦」がひしめく音楽業界で、「個人戦」である男性ソロ・シンガーが、実力だけで注目を浴びるのは難しい時代だ。ただ、紅白歌合戦で堂々としたパフォーマンスを見せたこともあり、巷の小学生たちさえも「米津が一番良かった!」と口にしているほどで、もはや頂点を極めたかのように崇められている。

 

そんな米津玄師をメジャーデビュー前から支えているのが、レコード会社のプロモーターだった10歳上の女性Kさんだ。現在は事務所の社長であるが、二人の関係はかなり前から音楽関係者には知れ渡っていた。


元々Kさんは音楽事務所でマネージャーの仕事をしていた。その後レコード会社に移り、レーベルでは雑誌媒体の担当や、アーティストの発掘、育成の仕事をしていた。その時、ニコニコ動画で話題になっている米津を知る。

 

当時、米津玄師は業界内でも話題になっていて、同じレーベル内でも争奪戦を繰り広げられていたという。Kさんはライブに何度も通ってアプローチをした結果、本人から信頼を得て契約に至ったのである。


Kさんの仕事ぶりは熱心で、自らもアーティストのようにクリエイティブだったという。取材ではアーティストの衣装や髪型などにも意見を出し、テキパキ仕事を仕切っていくので、レーベルに所属する他のアーティストも彼女の仕事ぶりには信頼を寄せていたという。 

「とにかく褒め上手ですね。目を輝かせながらアーティストの魅力を本人の前できちんと話せる。男性スタッフだと裏に利害関係が見えてしまい、なかなか信用されないのですが、彼女は熱意もあって、言行一致だったので信頼を得たのでしょう」(レコード会社スタッフ) 

その後Kさんは米津に人生を捧げるという決心でレコード会社を辞めて、独立した。そしてユニバーサルからソニーへ移籍。同じ経路を辿ったアーティストには宇多田ヒカルがいるが、アーティスト活動の参考にしているのは間違いないようだ。

「彼が遊び感覚を忘れずに音を作っている限り、音楽的な才能は枯れることはないでしょう。外から口を挟むような人が出てくるとストレスになって、思ったような作品ができなくなっていく危険性があります。事務所は本人をうまく泳がせながら、ガードするということが何より大事でしょうね」(レコード会社プロデューサー) 


そんな中、将来を期待されていた一人の男性ソロ・アーティストが1月29日をもって活動終了することが話題になっている。「ぼくりり」こと男性ソロ・アーティスト「ぼくのりりっくのぼうよみ」だ。

14歳でニコニコ動画に初投稿。その後17歳でメジャー・デビュー。天才と言われた音楽センスはもちろん、文才もあり、香取慎吾もファンであることを公言していて、ネクスト・ブレイク候補の一人だった。ところが昨年9月に突然の活動終了を宣言。その後ユーザーからのツイッター・コメントに「黙れよ説教ババア!」と噛み付いて炎上したことで話題になった。

一連のツイッター発言について、ぼくりり本人は、ウェブメディア「新R25」のインタビューで次のように語っている。

 

「『辞職』(引退※編集部注)を決めたことで『ぼくりり』をとことん『没落』させようと思ったので、今はその方向に向かって突っ走っています」 


その言葉通り、引退に向けてこれまでには決してやらなかったバラエティー出演、テレビでの生歌披露、インタビューなどを積極的にこなした。本人は引退後に何をやるかについては「まだ何も考えていない」と発言している。

「ブレイクするまでは、スタッフをなかなか信用しない男性アーティストは多いですね。それまでは本人からの不満やストレスを受け止める身内のスタッフが必要です。ぼくりりの場合は、スタッフとのコミュニケーションがうまくいかなかった。それが作品を飛び越えてダイレクトにユーザーに行ってしまったんです」(レコード会社関係者) 


同じニコニコ動画出身の「米津玄師」と「ぼくりり」の大きな違いは、「アーティスト名」にもある。当初、米津玄師は「ハチ」という名前で活動していたが、2012年に本名に変えた。一方の「ぼくりり」の本名はずっと非公開のままである。

 

「シンガー・ソングライターは売れても売れなくても、本名で発表した作品からは、決して逃げることはできません。ぼくりりの場合、芸名があることによって別人格として割り切れて音楽的にも自由になれるのですが、目的がなかったと本人が言っているように、将来像がないまま続けてきたことが敗因でしょう」(レコード会社プロデューサー) 

 

最近、ぼくりり以外でも、自分の理想とする音楽活動ができないという理由で、廃業したり、デビュー直前で音楽活動を辞めたという男性ソロの話を耳にする。


今の時代、一人で音楽作品を作って動画をアップすることは簡単だ。そこで話題になって現象を起こすことができれば、路上ライブやCDの手売りをしなくてもメジャー・レコード会社から声がかかる。

 

結局、才能を認められてデビューしても、ブレイクするかどうかはその後の「優秀なパートナー」の有無によるところが大きいのかもしれない。