提供:週刊実話

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 大手住宅メーカー『積水ハウス』(本社・大阪市北区)が被害に遭った約63億円(実質約55億円)にも及ぶ詐欺事件で、警視庁捜査2課は地面師グループの男女8人を10月16日に電磁的公正証書原本不実記録未遂と偽造有印私文書行使の容疑で逮捕した(10月21日現在、逮捕者は9人)。しかし、主犯格とみられるカミンスカス操容疑者(58)は逮捕前にフィリピンに高跳びしている。失態を犯した警視庁は国際手配の手続きを進め、同容疑者の行方を追っている。

 「自分に近く逮捕状が出ることを察したカミンスカスは、マンションを売却するなど数千万円の逃亡資金を用意したうえで、10月13日に成田空港からフィリピンへ出国したんです。彼の元妻はフィリピン人で、一足先に帰国しています。土地勘やお国柄に明るいフィリピンを潜伏先として選んだんでしょう」(事件を取材してきたフリーライター)

 逮捕された8人は、職業不詳の羽毛田正美容疑者(63)、会社役員の永田浩資容疑者(54)、不動産会社の実質経営者・生田剛容疑者(46)ら35〜74歳の地面師グループだ。8人は昨年6月、JR五反田駅近くの旅館『海喜館』跡地(約600坪)の所有者になりすまし、偽の書類等を東京法務局品川出張所に提出した疑いが持たれている。

 「この地面師グループはリーダー格がカミンスカス、旅館跡地の所有者になりすました羽毛田、運転手・連絡調整が永田ほか1名、土地取引仲介が生田ほか1名、さらに、銀行口座用意、スカウト、監視役など巧妙に役割分担されていた。捜査2課は10人以上の逮捕状を取りました。ただ、誰が何の役をやっているかについては、主犯格のカミンスカスら限られた人間しか把握していない仕組みです。都内には100以上の地面師グループが存在するとみられ、当然、横の繋がりもある。細部まで含めると、同事件に関与したのは20人以上の規模になるのではないか」(全国紙社会部記者)

 女性所有者になりすました羽毛田容疑者の偽造パスポートや印鑑証明などで、積水ハウス側はまんまとしてやられ、実質55億円もの大金を地面師グループに騙し取られたわけだ。

 「今年4月に積水ハウスの詐欺事件を計画立案したとみられる大物地面師のUを別件の詐欺容疑で警視庁は再逮捕しています。そのUが“完落ち”したことで、7月に主犯格のカミンスカスの関係先に家宅捜索が入ったのです。地面師グループの一網打尽に向けて動いていたんですが、直前にカミンスカスが海外逃亡してしまった。他のメンバーの逃亡を恐れた捜査当局は、急きょ、なりすまし犯の羽毛田ら8人の逮捕に至ったんです」(捜査関係者)

 事件解明のきっかけとなったUは、地面師グループ最大とみられる『池袋グループ』のトップ。3年前に東京・杉並区内の駐車場を横浜市内の不動産業者に売りつけ、2億5000万円を詐取したとして警視庁に逮捕された。一審は懲役7年の実刑判決だった。

 一昨年10月、謎の失踪をしていた東京・新橋の資産家女性(当時60)が自宅付近で白骨死体となって発見された。Uのグループには、この資産家女性と土地取引をめぐる詐欺事件、それに冒頭の積水ハウス事件への関与が早い段階から疑われていたのだ。

 「去年12月、世田谷区の土地建物取引で都内の不動産業者から約5億円を騙し取ったとして、Uの仲間の地面師が警視庁に逮捕された。当時、保釈されていたUには逃亡説が流れたんです」(経済ジャーナリスト)

 Uはこの“世田谷5億円事件”で、前述したように4月に再逮捕されたが、詐欺で稼いだ金は六本木や銀座の高級クラブでの豪遊、地面師仲間やホステスらとのゴルフコンペ、芸能人との交遊などで派手に散財していたという。一方、
「積水ハウス事件で15億円を手にしたとされるリーダー格のカミンスカスは、どちらかというと下町の浅草、錦糸町のフィリピンパブやロシアンパブが好みだった。でも、飲み方は成金のようで、高級ワイン、シャンパンを気前よくポンポン開けていた。支払いは、いつも数十万円以上でしたね。身に着ける装飾品も超一流ブランド。女性にはモテましたよ。付き合っている外国人女性は何人もいました」
 と語るのは、先のフリーライター。

「海外逃亡したカミンスカスは、身辺整理にもぬかりなかった。リトアニア人の現夫人と子供、それにフィリピン人元妻と子供はそれぞれの国に帰していますからね。その後は、ロシア人の愛人兼運転手と暮らしていたんですからいい身分です。また、国内外で購入した億ションなど5つの物件を関係した女性たちに“財産分与”していた」(同)

 大手企業の積水ハウスまでもが騙されたことで、地面師事件は大きな話題となった。被害金額が実質55億円というのは、なりすまし犯の羽毛田容疑者が積水側から分譲マンション11戸(東京・中野区)を約7億5000万円で購入する契約を結んでいたからだ。
「羽毛田は購入したマンションで資産運用を企んでいたようです。2020年の東京五輪で都内の土地は高騰しており、中でも、都心一等地はどこも喉から手が出るほどほしい物件です。大手でさえ、多少の危険は織り込み済みというのを地面師たちは知り尽くしている」(前出・捜査関係者)

 地面師たちの暗躍はしばらく続きそうだ。