都内のかつやの店舗はサラリーマンを中心ににぎわっている(記者撮影)

平日の昼時、とんかつ専門店「かつや」の店舗はどこもにぎわっている。客は40〜50代の男性サラリーマンが大半だが、老夫婦や若い男女の姿もある。

かつやを運営するアークランドサービスホールディングス(HD)は、2007年の上場以来、10期連続で増収増益。2018年12月期も、売上高300億円、営業利益42億円と、ともに過去最高を見込む。売上高営業利益率はつねに10%以上で、業界屈指の高水準だ。

10月15日発売の『週刊東洋経済』は「絶好調企業の秘密」を特集。先週は大幅な株価下落に見舞われたが、一時は日経平均株価が2万4000円を超えるほどまで急伸した日本株の中で、特に業績好調な企業の動向を追っている。アークランドサービスホールディングスも特集で取り上げた企業の一つだ。

かつやの強みは低価格とリピート戦略

とんかつ専門店といえば、中〜高価格帯の「とんかつ和幸」や「新宿さぼてん」などが有名だ。対してかつやの強みは低価格にある。かつやの看板メニューである「カツ丼(梅)」は529円(税込み)とほぼワンコインだ。

会計時には次回来店時に使える100円引き券を渡してリピートを促す。「100円引き券の使用率は5割超」(玉木芳春常務)と、固定客の確保に成功している。

とんかつは調理に手間や技術が必要なため、参入障壁が高いとされる。かつやはなぜ、とんかつを低価格で提供できるのか。


答えは特注のオートフライヤーにある。衣をつけた豚肉をフライヤーに入れると、時間や温度が自動で管理され、ベルトコンベヤーに載って出てくる。導入当初は3分40秒だった揚げ時間も、改良を重ねた現在では3分ほどになったという。熟練の従業員でなくても調理できるようにしたことで、人件費を抑えられている。

加えて、一部店舗ではランチタイムに500円、600円、650円(各税込み)の三つの価格のセットメニューに絞り込んで提供している。客の平均滞在時間は15分と回転率が高い。

同社の店舗数は525。そのうち、374店がかつやの国内店舗だ(2018年6月時点)。上場以来、毎年着実に拡大を続ける。


持ち帰りの実験店開設 新業態も育成中

今年7月には東京・北区の商店街に実験店を開業し、持ち帰り専用窓口を設けた。通常の店舗では30〜35%の持ち帰り比率が、同店では50〜60%で推移している。実験店の好調を受け、持ち帰り専用窓口を増やすことも検討中だ。

持ち帰りに力を入れる背景には、既存店売上高の伸び悩みがある。足元では5月から8月まで4カ月連続で前年割れ。これは月次売上高を公表し始めた2008年以降初めてだ。成長市場である中食の需要も取り込むことで、既存店のテコ入れを図る。

また同社は第2の柱として空揚げ店「からやま」を育成する。国内のからやま店舗数は郊外を中心に43(2018年6月末時点)。かつやと比較してまだ少ないが、2018年上期(1〜6月)の国内出店は11店と、かつやを上回る勢いだ。今年8月には、たこ焼き店「築地銀だこ」を展開するホットランドとの合弁で米国・ロサンゼルスにからやまを開業した。台湾やタイなど進出済みのエリアに加え、巨大市場である北米を攻める構えだ。

そのほか、2017年7月にカレー店「camp」を展開するバックパッカーズを買収した。新業態の育成に成功すれば、同社の成長は一段と確かなものになる。

『週刊東洋経済』10月20日号(10月15日発売)の特集は「絶好調企業の秘密」です。