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引きつづき、ポルシェ356クラブ会長のスズキさんの実況は「第62話:スズキ会長、ポルシェ356でドイツへの自走の旅。」からご覧いただけます。

 

photo:@masamaxy

もくじ

ー 「仲良し」が増えた!
ー 「クウレイ」という魔法
ー そして夜がふけるまで

「仲良し」が増えた!

このまえの休日、僕たちは歓迎ムードだった。

「僕たち」というのは
Tさん(GT4から991 GTSを経て991.2 GT3)
Mくん(718ケイマン)
そして、僕である。
いずれもこの「シャカイチ」に
出演してくれた面々でみんな20歳代だ。
あれ以降、僕たちはすっかり仲良くなり、
皆それぞれ必死に働いているから
夜遅くに集まることばかりだけど
時間を見つけては一緒に走り
クルマについて語り合っている。

Iくんは、
(987ボクスターから
 今は981ボクスターに変わった)
帰省渋滞で間に合わなかった。
こればかりは残念に思う。

だれを歓迎するかというと、
Hくんである。

Hくんから初めてメールがきたとき、
僕たちは目を丸くした。
1992年生まれの彼は、
大学院や留学を経て、
社会人2年目(彼は「シャカニ」と書いていた)で
空冷ポルシェを買ったのだった。

930(3.2のカレラ)をベースに
ナロー風に仕上げたもので
(完ぺきに作ろうとした場合
 たいへんな労力を要するのだそうだ)
「ローンが通るわけないと思っていたら
 通ってしまったので買うことになりました」
と書いてあった。600万円だったという。

関西から中部地方に転勤したのだけど
実家のある東京都内に帰省するため
「どうにか会いませんか」というものだった。

会わない理由がどこにあろうか!

というわけで、
僕たちは4人で
夜の辰巳PAに集まった。

「クウレイ」という魔法

ズロッズロと音を発しながら
くだんのポルシェが辰巳PAに滑りこんできた。

ボディにはシミひとつない。
東雲(しののめ)のタワーマンションの光を
これでもかと、きらびやかに反射させていた。

ドアから降りてきたHくんは、
好青年という3文字が誰よりも似合っていた。
しゃいな笑顔を浮かべなから、
ぽつぽつと話し始めた。

聞くに、この空冷ポルシェの前は
先輩からもらったというBMW 3シリーズのワゴン
(18万km走っていたのだという)に
たいせつに乗っていたのだそうだ。

たまたま目に入ったこの空冷に
うまく言葉にならない運命を感じ
「そんなこんなで今、乗っています
 納車してからもまだそんなに乗っておらず
 というかそもそもヒール&トウくらいは
 できるようになりたいです。そんなレベルです」
と彼は、くしゃっとした笑顔で話してくれた。

ほどよくフェンダーがふくらみ、
内側のドアノブがベルトに置き換わっている。
シートも一見スポーティだけれど
だからといって大げさなものではない。

「MOMOのプロトティーポも、
小さいころから思い描いていた理想どおりです」
とのこと。

「音楽は聴くことをあきらめて、
 オリジナルのデッキに戻しました。
 でもこのエンジン音が聞ければ、
 社内の音楽は必要ないことがわかりました」

交代で助手席試乗会もした。

そして夜がふけるまで

うしろのほうから、
エンジンが仕事をしている音が
生々しく聞こえてくる。
と思った矢先にHくんも
「なんていうか生々しいですよね」といった。
「いままで乗った、どんな乗りものよりも
 『機械感』っていうんですか。
 そんなかんじがします」とも。

Hくんはクルマを降りたあと
「26歳でこのクルマを買えたことを
 ほんとうに幸せに思えます。
 いい人生だったなぁって思うんです」
と、しみじみと真面目な表情でいった。

あまりにしみじみと言うもんだから、
なんだかツッコむことさえ悪い気がした。

結局僕たちの話しは尽きず、
場所を変えて、それからラーメンも食べて
また場所を変えた。
 
 
お金関係なしにほしいクルマは?
(HくんはカレラGTといった
 ぼくは930だといった)

もしも
3台クルマが買えるならどれにする?

Suchmosの新譜聴いた?

新車でポルシェを買えるなら何色にする?
(Hくんも僕も「クレヨン」で一致した)

取りとめもない話ばかりだけど
気がついたら夜が更けていた。

※今回も最後までご覧になってくださり、
 ありがとうございます。

 Hくんのポルシェの経験はもちろんのこと、
 ヒストリックカーラリーの参戦や
 吉田 匠さんのポルシェ356、それに
 笹本編集長の356、それから930に乗って
 いま、空冷ポルシェへの熱が高まっています。

 たとえば、いま、
 空冷ポルシェを買ったとしたら……。

 そんなことを考えるたびに
 シャカイチ号と離れたくない気持ちが強まる。

 両方もつことはできないだろうか?

 さすがにそれは、相当むずかしいだろう。
 二兎追うものは……、という言葉もある。

 仮にシャカイチを誰かに
 お譲りするとしたら……。
 そこまで考えてしまっている。

 考えたくはないけれど
 値段とかはどうだっていいから、
 大切に持ち続けてくれるひとがいいなぁ。

 そんなことをぐるぐると。