マリ戦で代表デビューを飾った中島。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 敗色濃厚だったハリルジャパンを土壇場で救ったのは、今回初招集ながらもマリ戦で代表デビューを飾った中島翔哉だった。敵陣で鮮やかなターンから3人を置き去りにしたあと、エリア付近の小林悠にパス。その間、ゴール前へと走り込んだ中島は、右サイドからの三竿健斗のシュート気味のボールを左足で合わせてネットを揺らしたのだ。
 
「(3人を鮮やかに交わしたシーンは)できれば交わす前に相手の前に入れれば良かったんですけど、遅かったのでああいうプレーに切り替えました。ゴールに関しては三竿が凄い良いパスをくれたと思います。触るだけで良かったので。あの位置にいられない時もあるので、ゴールシーンは良かったと思います」
 
 代表デビュー戦でも気負いはなかったようだ。「今日は相手も上手い部分があったので、すごく面白かった」、「(マリ戦は)良いトレーニングになったと思う」とさらりと言ってのける中島は、良い意味でのほほんとしている。
 
 それは言い換えれば、自信と捉えることもできる。ポルトガルで経験を積み、得意のドリブルに磨きをかけてきたからこそ、そういう言葉が出てくるのではないか。
 FC東京時代から、負けず嫌いのアタッカーだった。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督もそれを承知しているのか、マリ戦では“どんどん前に行ってドリブルでもパスでも仕掛けろ”という指示を出したそうだ。
 
 自身は「守備がまだまだ」と反省するように、ディフェンスに関して課題は多い。それでも、その不足分を補うほどの魅力が攻撃面にはある。あくまで個人的な見解ながら、こういうアタッカーを守備で縛り付けるのは得策ではない。攻撃に専念させてこその選手だと思う。
 
 具体的にはどうしてもゴールが欲しい場面で投入し、比較的自由にやらせるのがベストかもしれないが、スタメンで使う際も極力守備の負担を軽減する。極端なことを言えば、中島中心のチームにシフトしないと、このアタッカーの能力は活きないはずだ。
 
 いずれにせよ、マリ戦で多少なりとも攻撃に変化をつけた中島は今後、ラッキーボーイになる可能性はある。なにより、代表デビュー戦で初ゴールというのが“持っている証”だ。「(得点の場面で)あそこにいることが大事」と言うように、いわゆる嗅覚は重要である。
 
 なかなかポジティブな要素を見出せないマリ戦において、中島は一縷の希望になりうる。もちろんプレー全体が良かったかと言われれば、そこまでではない。ゴールが少しクローズアップされすぎている部分があるが、それでもいまひとつ伸びしろが見えてこないハリルジャパンがワールドカップ本大会に向けて進化するうえで、“新参者”の中島はひとつの起爆剤になり得る。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

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