自動車メーカーのホンダ(Honda)は、インプレッションやクリック報酬型の広告の代わりに、実際にショールームの訪問に繋がるようなモバイル広告を購入しはじめている。

ホンダは、これまでにもイギリス国内で同様の取り組みを行ってきたが、広告購入の際の基準は常にインプレッションやクリックスルーであった。だが最新のモバイルキャンペーンでは、視聴した人が14日間以内にショールームを訪れた広告にのみ、金銭が支払われる。

その実験には位置情報技術を手がけるグラウンドトゥルース(GroundTruth)の技術が用いられ、電通イージス(Dentsu Aegis)傘下のエージェンシーのアンプリファイ(Amplifi)によって、2018年3月31日まで行われる。ホンダは自動車の購入を検討している人をターゲットにした広告を、訪問1回あたりの単価で購入。そこでは、顧客がいま乗っている自動車を売るために訪れた中古車ディーラーや、競合メーカーのショールームなど、さまざまな種類の位置情報が活用される。ただし、この広告のターゲティングの際にWebブラウザのクッキーは使われていない。

位置情報に期待



ホンダは、その広告が実際に店舗訪問につながったかどうかや、その後の訪問回数を計測するために、位置情報計測を行う企業リップル(Rippll)が提供するデータを活用。地理的近接度に基づいた広告は、現在のホンダの取り組みの最前線では用いられていない。むしろ、人の未来の行動、つまりこの場合はショールームを訪問するかどうかを予測できるような、個人の行動に関するデータを好んで利用してきた。

ホンダのマーケティング・コミュニケーション部門のマネージャーを務めるルイーズ・フュルノー氏は、人の気持ちというのは購入の瞬間まで揺れ動くものだと述べる。「最後の最後まで顧客の目の前に立つことさえできれば、購入までのプロセスのあいだにその顧客の気持ちを変えるチャンスがある」と、彼女は語る。「ジオターゲティング広告に関して言えば、購入意思を測るうえで、もっとも重要な指標のひとつは、位置情報だ」。

ホンダのマーケターが、将来のメディア戦略でも訪問回数単価モデルのキャンペーンを行うかどうかはまだ決まってはいないが、フュルノー氏は、実店舗の訪問を増やすうえでは、そのメトリクスが有効な選択肢となる可能性が高いと考えている。実際に訪問に繋がった広告だけに金銭を支払うことで、インプレッションに支払う際に生じるリスクを取り除けると、フュルノー氏は付け加えた。さらに、リップルの独自の広告検証システムでは、訪問数が偽造される心配も軽減できる。

残されている課題



しかしフュルノー氏は、今後すべてのモバイル広告でクリックベースの計測手法の採用を取りやめるとまでは言わなかった。この実験の有効性が実証されるのを待つようだ。自動車を購入するという人の特定の行動に対しては、この訪問回数ベースのキャンペーンが役に立つとホンダは見ている。

この訪問回数単価の広告が、ホンダの次のパフォーマンスモデルになるためには、まだ解決すべき課題が残っている。広告主やパートナーは、アドキャンペーンの有効性を示すうえで、このモデルがどの部分で役に立っているかを知る必要があるのだ。その広告を見たかどうかに関係なく、ショールームには行くつもりだったという人がいることも考えられるだろう。

それにもかかわらず、これは結果的には効率のいいモデルとなるだろうと、フュルノー氏は語る。「これまでのキャンペーンのやり方では、リーチもできていて広告も視聴されていても、こちらが望んでいる行動を取ってもらえず、結局メディア投資の多くが無駄になってしまうことがある」と、彼女は説明した。

ホンダは、モバイル市場では新たな価格モデルが必要であることを知っている。イギリスでは、モバイルと比べるとデスクトップのディスプレイ広告費の割合が多くを占めている一方、モバイル広告の市場の成長は著しい。この成長の一因は、多くの人が購入を決める前にモバイル端末で情報収集しているところにあると、ホンダは見ている。フュルノー氏によると、人が情報収集に割いている時間のうちの50%がモバイルで行われているという。

Seb Joseph(原文 / 訳:Conyac)