定年後、必ず「恐怖の請求書」がやってくる。落ち込むよりも、「払い過ぎた税金」を取り戻す方法がある (写真:naka/PIXTA)

おカネに関して、サラリーマンを定年退職した後に誰もがショックに感じることがあります。それは住民税の納付請求がくることです。これは経験した人でないとわからないと思いますが、請求がきた金額を見て多くの人がギョッとするのです。

定年退職後、やってくる「恐怖の請求書」

現役時代、住民税は所得税と同様に給料から天引きされています。したがって普段、給与明細を見ていても多くのサラリーマンは最後の手取りの数字しか気にしません。ところが退職した翌年に送られてくる請求書には1年分の住民税の金額が載っているのです。

さらに厄介なことに所得税がその年の所得に課税されるのに対して、住民税は前年度の所得に対して課税されます。これがどういうことを意味しているかというと、前年度、まだ一定の収入があった現役時代の所得でもって計算された税金が、退職して収入がなくなった、あるいは大きく減った時に請求されるということになるのです。

したがって、余計ショックが大きくなります。一度に何十万円もの住民税を払えと言ってくるわけですから、驚くのも無理はありません。もちろん一度に払わなくても分割して払えばいいわけですが、その金額の大きさに驚いてしまうことになるのです。

私もそうでしたが、多くのサラリーマンはこの段階ではじめて「いかに今までたくさんの住民税を払っていたか!」ということを実感します。もちろん、会社を退職した後は収入も大幅に減るため、住民税もはるかに少なくはなりますが、今まで払った分は戻ってきません。

言わばこれは経済学で言うサンクコストです。そこで考えるべきなのが、そうやって自分が払ってきた多額の住民税で運営されている自治体などのサービスを、フルに活用することです。

具体的な例を挙げてみましょう。私は60歳で家のローンを払い終えましたが、その際にそれまで自宅に付いていた抵当権を抹消する必要がありました。そこで司法書士事務所にお願いするのではなく、地元の法務局へ手続きの相談に直接出向いたところ、そこには司法書士がいて、「無料」で手続きをやってくれるのです。普通に司法書士の先生にお願いすると5000円とか1万円程度の費用がかかるところを、印紙税の2000円だけで済んだわけです。でも、実はこれは別にその司法書士がボランティアでやっているわけではありません。市から報酬が支払われているはずです。そして市から払われているということは取りも直さず、われわれが払っている住民税から支払われているということなのです。

このように公共の機関が行う行政サービスには、利用する価値のあるものがたくさんあります。ところがそれらを知らない人が意外に多いのです。

でもこれは仕方のない部分があります。そうした行政が提供するサービスの多くは放っておいても教えてくれたり、案内してくれたりするわけではなく、自分で探さないとわからないものだからです。現役時代は仕事が忙しくて、とてもそんなものを探す暇はありません。

広報誌やネットを見れば「かなりお得なサービス」も

ところがそうした行政サービスの内容を簡単に知る方法もあります。都道府県や市区町村が発行している広報誌がそれです。「広報〇〇」とか「〇〇市政ニュース」といったタイトルのものです。

実はこうした広報誌は有益な情報の宝庫なのです。各種のイベントが無料であったり、格安料金で行われたりしています。健康相談や予防接種などが、無料で行われていたりすることもあります。奥様の中にはそうした広報誌を丹念に読んで有効に活用している人もいるでしょうが、多くの現役サラリーマンは見たことすらないのではないかと思います。これらはだいたい新聞に折り込まれていますが、PDF化されたものを市区町村のサイトで見ることもできますので、情報は手軽に入手できます。

さらに言えば、民間企業が提供するサービスは営利目的ですから低価格のものは「それなりのサービス」しか受けることはできません。ところが行政が実施するサービスの原資は税金ですから、決して“安かろう悪かろう”とは言い切れないのです。予算があるかぎり、結構大盤振る舞いをされている場合も珍しくありません(それはそれで別の問題ではありますが)。私も定年退職後は自分が住んでいる市の広報誌を愛読していますが、本当に知らないことやお得な情報がたくさん載っています。せっかく住民税をたくさん払っているのですから、こういうサービスを利用しない手はありません。

現役時代は忙しいので、なかなかこうしたサービスをこまめに調べて利用することはできません。そもそも平日に行われるイベントやサービスだって多いですから、現実には参加したり、利用したりするのは難しいのです。言わば時間がない分、それをおカネで解決する“時間をおカネで買う”習慣が普通だと言っていいでしょう。ところが、退職した後は逆に時間はたっぷりあります。こうした行政が提供する公共サービスをフルに活用することで、それまでに納めてきた住民税の“元を取る”ことを考えていくのも、また定年後の生活方法の一つと考えていいのではないでしょうか。