民間で「日本最低運賃」をうたうバス会社が、2018年2月から一部路線でさらに運賃を値下げしました。そもそも、路線バスの運賃はどう決まり、同社は何をもって「最低」なのでしょうか。

2015年に民間「最低」達成

 民間で「日本最低運賃」をうたっているバス事業者があります。岡山市を中心に岡山県内で宇野バスを営業する宇野自動車(岡山市)です。


大人均一140円から100円に値下げされた「岡山後楽園バス」のイメージ(画像:宇野自動車)。

 宇野自動車は2015年10月、別の事業者が運賃を値上げしたことから、民間で日本一安い運賃となり、同社はこのことを「ついに達成!」として、ウェブサイトで大きく紹介しています。これ以前にも、1998(平成10)年には国へ、路線バス業界では初という運賃の値下げ申請を行うなど、かねてより「日本最低」を目指していたといいます。

 そして、2018年2月1日(木)にはさらに、岡山城などがある岡山後楽園と岡山駅を結ぶ「岡山後楽園バス」を、大人均一140円から100円に値下げしました。全国の路線バスが苦戦するなか、なぜ運賃を下げ、「最低」を目指すのでしょうか。そもそも何をもって「最低」なのでしょうか、同社に聞きました。

――今回、「岡山後楽園バス」の運賃をなぜ下げたのでしょうか?

 ワンコイン100円でご利用いただけるようにするためです。「岡山後楽園バス」の運行は2017年から始めたのですが、予想以上に県外や外国人の方に多くご利用いただいています。しかし、このバスでは岡山地区だけで通用するIC乗車券「ハレカ」は利用できるものの、JR西日本の「イコカ」などには対応していないことから現金で乗られる方が多く、(140円では)両替に手間がかかりがちだったのです。ご利用も多いことから収支的にも可能と判断し、ワンコインに値下げして利便性を高める目的があります。

値上げすれば首絞める? 運賃の基準とは

――民間事業者としては「日本最低運賃」とのことですが、何をもって最低なのでしょうか?

「対キロ区間制」運賃制度における当社の基準賃率23円20銭が、全国の民間バス事業者のなかで「最低」です。この運賃は1994(平成6)年に国から認可されて以来、24年間そのままです。「岡山後楽園バス」など一部路線と、岡山市内のバス事業者共通で定めている特定区間内以外では、この対キロ区間制を採用しており、10kmで大人280円、15kmで390円です。

 ちなみに、1998(平成10)年に国へ値下げ申請をしたのは、他社と競合する区間において、当社の基準賃率とその社の基準賃率とのあいだをとった運賃が国によって設定されていたことについて、規制緩和を求めたものです。当時、この区間では、当社の基準賃率よりも6円高い運賃となっていました。

――そもそも御社の運賃はどのような基準で決めたのでしょうか?

 地方では15km、20kmを超えるバス移動もザラですが、これが往復で1000円を超えるとご利用いただけなくなると思い、そこにこだわりを持っています。諸々のコストを賄うべく運賃を上げたとしても、最終的にはお客様にご利用いただかなくては意味がなく、自分で自分の首を絞めることになると考えています。細々とですが、おかげ様で補助金をいただくこともなく、借金もありません。

――とはいえ、全国的に路線バスが苦戦している状況です。何かコスト削減の秘訣などはあるのでしょうか?

 ひとつ挙げるとすれば、回送の少なさでしょう。お客様を乗せられない回送は、まるまるコストになります。ほかでは運行の2、3割を占めるところもあるなかで、当社では2%にとどまっています。車庫が市街地にあるのですが、テレビ電話で運行前の点呼を行うなどして、「車庫から郊外の始発地まで回送してから営業運行に就く」といった手間を省く仕組みをつくっています。

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 宇野自動車では2015年に、低床タイプの新車を25台まとめて導入しました。これは全車両数のおよそ半数にあたるそうです。また同年、岡山県の路線バスで初めて全車に無料Wi-Fiも導入しています。2018年には、もう半数の車両も新車に置き換える予定とのことです。

 ちなみに、宇野自動車の基準賃率23円20銭は、民間では日本一ですが、公営も含めれば2番目。「日本最安」は、鹿児島市交通局(鹿児島市営バス)の19円90銭です。

【グラフ】路線バス全国180事業者の基準賃率


対キロ運賃制度を採用している全国180事業者の平均基準賃率は、40円2銭。2015年10月現在(画像:宇野自動車)。