画像提供/マルエツ

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住まいを探すときに気になるのはスーパーマーケットの有無。大型スーパーが近くにないと暮らしにくいのでは、と思う人もいるかもしれない。しかし、近年東京23区を中心に、店舗数が増えているのが「まいばすけっと」「マルエツ プチ」などのミニスーパーだ。

ミニスーパーにもさまざまな特色がある。イオン系列の「まいばすけっと」は店舗数が600店舗を超える。「マルエツ プチ」は、「食の砂漠(フードデザート)」といわれる食料品の買い物が不便な地域に出店し、新鮮な生鮮食品を取りそろえ、エリア特性に応じた品揃えで地域の人気を集めているという。人気の理由はどこにあるのか、実際の店舗に足を運んでみた。

大型スーパーに劣らない商品力

まず訪れたのは、日本有数のオフィス街、半蔵門駅から徒歩2分程度の場所にある「マルエツ プチ一番町店」。店舗面積は約230m2。店舗に入って目に入るのが青果、精肉、鮮魚とつながる生鮮食品の売り場だ。

毎日の食卓に使うお手頃値段のものから、自分へのご褒美やおもてなし料理に買いたいブランド牛まで幅広く選べるのも魅力の一つ。鮮魚のコーナーには切り身以外にもブリ、カンパチ、サーモン、かつおのたたきなどのお刺身が並ぶ。

店内に加工場がなくても新鮮な生鮮食品を提供できる秘密は、自社生鮮加工センターを持つからだ。1日2便体制で店舗に生鮮食品を供給している。確立されたコールドチェーンシステムで新鮮さを担保しつつ、店舗に加工場を持たなくてよい分、売り場面積を広げることができる。

定番商品も品揃えは大型スーパーに負けていない。納豆や豆腐の種類を数えてみるとそれぞれ20〜30種類。カレールーも30種類以上。オリーブオイルも10種類。小規模店舗でも銘柄を「選べる」のが強みだ。肉類では神戸牛や鹿児島の和牛も並ぶ。毎日使う食材のほか、おもてなし料理の材料もそろえられそうだ。

一番町店を訪れたのは土曜日の午前中だったが、地元住民とみられる30〜40代前後の女性やお年寄りで、4台あるレジをフル稼働させていた。

平日のお昼どきには、昼食を買う会社員たちでパンやお惣菜コーナーがにぎわう。店舗外に設けられた休憩スペースも、お弁当を食べる会社員に人気とのことだ。

「切らしちゃった」が手に入る コンビニとの差別化

次に行ってみたのは学生街、高田馬場にある「マルエツ プチ高田馬場店」。高田馬場駅を降りて徒歩5〜6分程度の場所にある。店舗面積は約450m2。土曜日の18時前に行くと、デリカコーナーでは天ぷらを選ぶ主婦や、お弁当を買うお年寄りたちで賑わっていた。一番町店に比べて面積が広い分、季節商品、新商品などが入り口に入ってすぐの場所に大きく展開されている。店舗に入るとすぐに目に入る「旬」の果物。梨や葡萄、桃が並んでいた。彼岸のお供え物や生花も置いてあり、季節感を演出している。

デリカスペースも広く、馬場に住むファミリー層、単身層をターゲットにしている商品が見受けられた。揚げ物ばかりでなく、お寿司や生春巻き、ローストビーフまで種類は豊富だ。帰宅が遅くなった時の夕飯や、サラダやスープも色々な種類があるので、栄養バランスに気を使っている方からも重宝されそうだ。

サラダやスープも色々な種類があるので、帰宅が遅くなった時の夕飯や糖質制限中の時にも重宝しそうだ。一番町店でも商品のバリエーションには驚いたが、高田馬場店はさらに豊富な品ぞろえ。例えばカレールーのコーナーでは、ルーそのものの他に、スパイス一つとってもナツメグパウダー、コリアンダーパウダーなどが置かれている。料理好きでも十分満足できそうな印象を受けた。

とはいってもミニスーパー、店舗面積は限られているのに、どうして品揃えがいいのか。マルエツプチを統括する担当者は、「マルエツプチならではの店内レイアウトや棚に理由がある」と話す。陳列棚の高さは190cmで、通常のマルエツより25~55cm高く、商品を無駄なく並べられる。棚割りもマルエツ プチならでは。例えば、カレーのルーは、縦に陳列するなど、より多くの品揃えができるように工夫がされている。

コンビニエンスストアと差別化できている要因は「切らしちゃったけど、すぐ必要」な日用品にも対応していることだ。紙オムツやいろいろなワット数の電球などは、ネットで買うとなると受け取るまでに時間がかかる。かといってコンビニには置いていなかったりもする。食料品を買うついでに、こうした日用必需品を購入できたら確かに便利かもしれない。

チェーンの枠にとらわれず「地域に根ざす」 可能にするのはデータ解析

同店は、その地域の顧客ニーズによって商品ラインナップを変えている。「Tカード」の購買データ分析をし、商品の品揃えや、関連販売の展開などに活用している。

筆者が足を運んだ一番町店と高田馬場店でも、確かに品ぞろえに違いを感じた。例えばお酒コーナー。一番町店はお酒が豊富。ワイン、シャンパンの種類も多いし、ビールも多い。軽井沢エール、コエドビールや銀河高原ビールなど日本の地ビールも、海外のビールも揃っている。お酒好きにはうれしい限りだし、コンビニでは買えない銘柄も多い。チアシードやタイガーナッツといった健康志向のおつまみや、こじゃれたパテもそろっていた。ワインの数も豊富だった。

一方、高田馬場店はワインの種類は少なく、焼酎(大五郎)や紹興酒がラインナップ。「一人鍋セット」が置かれていたのも、取材時は高田馬場店だけ。つい学生が、焼酎を片手に一人鍋をするシーンを思い浮かべてしまった。

「マルエツ プチ」は今後も都心でのシェア拡大を目指す。同社に限らず、イオン系列の「まいばすけっと」や成城石井など、都心で順調に出店数を増やしているミニスーパーは多い。

これから部屋探しをする際に、もし物件の近くにミニスーパーがあったら、ぜひ中をのぞいてみてはどうだろうか。自炊中心の人、料理好きな人でも、十分満足のいく生活を送れるかもしれない。

●取材協力
マルエツ
(加地紗弥香)