カスペルスキー、米国政府への採用求めセキュリティソフトのコード開示を申し出。ロシア当局とのつながり否定


2008年から国立衛生研究所に、2016年には消費者製品安全委員会へと、着々と米国政府機関との契約を取り付けているカスペルスキー・ラボですが、米上院軍事委員会は、次年度米国防権限法(NDAA)の草案において、カスペルスキーとロシア政府との関係を否定できないとして、国防総省への導入を禁止する条項を盛り込みました。

これに対してカスペルスキー・ラボは、疑いを晴らすためにセキュリティ製品のソースコード開示を申し出ているとAPが伝えています。またカスペルスキー・ラボ創設者のユージン・カスペルスキー氏は、自身および自身の名を冠する会社の潔白を米国議会で証言する用意があるとしています。

カスペルスキー・ラボの幹部は同社の従業員にロシア諜報部出身者がいることを認めています。しかし会社としては一度もロシア政府からの不正な要求に屈したことはないと主張。さらに一介の従業員が簡単にすべてを見渡せるような社内ネットワークにはなっていないと付け加えました。

ただ、いくらカスペルスキー側が主張したところで、米国政府がロシアのセキュリティ企業を完全に信頼できるかといえば話は別です。当局の一部には根強い疑念があり、ソースコードを開示したところで、社員一人ひとりの思想や行動まで信頼できるかは別の話。いまは大丈夫でも、将来的にロシア政府がバックドア導入を指示するようなことがあれば、どうなるかはわからないとの考えです。

もちろん今の時点でカスペルスキーの製品が何らかの諜報的動作をしているという証拠はありません。今年2月にはカスペルスキー社員で元サイバー犯罪捜査官だったRuslan Stoyanov氏が入社前の活動から国家反逆罪容疑で逮捕されたこともあり、むしろロシア政府とは距離があるようにも思えます。

それでも、やはり「ロシアゲート」疑惑の捜査も進む時勢、サイバー犯罪のリスクを疑えばソースコードを開示したり証言したところで米国当局の考えを改めるのは難しいかもしれません。

ちなみに今回の件と関係があるかは不明ですが、FBIは米国各地のカスペルスキー従業員10名に対して任意で事情聴取を実施したと伝えられています。
[Image : Vyacheslav Prokofyev/TASS via Getty Images]