1階ロビーに置かれた薪ストーブ。希望すれば薪割り体験も可能だ

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雪がシンシンと降り積もる、2月の北海道・札幌。飛行機から降り立ち、目の前に広がるのは真っ白な北の大地。生まれも育ちも東京の記者にとって、そこはまったくの異世界だった。その日の最高気温は−2度。できる限りの防寒をしてきたつもりだったが、札幌駅から一歩外に出ると、あまりの温度差に思わず身震いをする。

【写真を見る】朝食のパンはバルミューダ社のトースターで焼いて召し上がれ!

急いでタクシーに飛び乗り、向かう先はすすきの方面。だが、夜の街に繰り出すにはまだ早い。目的地は、2月4日にオープンした「HOTEL UNWIND(ホテル アンワインド)」だ。すすきのの繁華街を横目に見ながら、走ること約5分。落ち着いた雰囲気が漂う一画に、同ホテルはあった。電車では南北線・中島公園駅から徒歩4分ほどの距離に位置し、なかなかの好アクセスだ。

施設内に足を踏み入れると、薪の香りがフワリと漂う。エントランスの右手側に目をやると、赤々と炎を燃やす薪ストーブが。レンガや木材を随所に取り入れた1階のロビーは、そこにいるだけで自然と心が落ち着く。ソファに腰を下ろして、ほっと一息。すると、ホテルのスタッフから「ウェルカムドリンクをお選びください」と声をかけられた。

コーヒー、紅茶、ココア、アップルサイダー、ジュースの中から選べるとのことで、記者はあまり聞き慣れない、ホットのアップルサイダーをチョイス。甘酸っぱい中にもスパイスが香る大人の味わいの一杯は、冷え切った体を芯から温めてくれる。

ゆるゆると心がほどけていく、心地よい脱力感。チェックインまでのわずか数分の間に、同ホテルのコンセプトであるロッジの世界観に、すっかり心を奪われていた。

後から聞けば、このアップルサイダーは、薪ストーブの上で温めて作る自家製なのだとか。ロビーに立ち込める、スパイスと薪が混ざり合った魅惑的な香りには、人の心を和ませる魔法がかかっているようにすら思えた。

「アンワインド」の魅力を一言で言えば、グランピングのロッジ版といったところ。ロッジの不便さをすべて取り除き、良い面だけを提供してくれる。宿泊者は自宅にいるような居心地の良さを感じつつ、非日常的な気分を味わうことができるのだ。

客室に入り、まず頭に浮かぶ感想は「広い、そしてオシャレ!」。客室は全部屋25平米以上のゆったりとした設計。ツインルームには120cm幅のセミダブルベッドを2台備え、寝心地も申し分なし。さらに、全室がバス・トイレ別というのも嬉しいポイントだ。

部屋をぐるりと見渡すと、同ホテルならではのこだわりが随所に光る。なかでも特筆すべきは、バルミューダ社のトースターが各部屋に設置されていること。バルミューダ社のトースターといえば、市販のパンがまるで専門店の焼き立てパンのように焼き上がると話題の、高級トースター。朝食はスタッフが客室に届けるスタイルを採用しており、その朝食のパンをバルミューダ社のトースターで焼いて味わえるという、何とも粋な計らいだ。

客室に用意されているコーヒーは、札幌のコーヒー専門店「RITARU COFFEE」とコラボレーションしたドリップパック。ケトルでお湯を沸かし、壁にかけられたキャンプ用マグカップを使い、香り高いコーヒーを味わう。そんなロッジで過ごすようなブレイクタイムも、ここでは気軽に体験することができる。

さらに、記者が「おみごと!」と拍手を送りたくなったのが、トイレ・バスなどの水回りと、ベッドやソファが置かれているスペースを隔てることができる、木の引き戸だ。閉めてみると、廊下と遮断されることで、より一層プライベートな空間へと変化。寝る時もなんとなく安心感があり、引き戸が一枚そこにあるだけで、こんなにリラックスできるものかと驚いた。

部屋のデザインも工夫が凝らされており、全客室、グラフィックの入り方が違うのだという。例えば記者が泊まった客室には、横たわってくつろぐクマの絵が壁に飾られていた。その他の客室もいくつか見せていただいたが、カーテンにろうそくが描かれていたり、壁に文字がデザインされていたり…。そのどれもが部屋の雰囲気にマッチしていて、思わず写真を撮りたくなるものばかりだった。

客室にこもりたくなってしまう居心地の良さだが、それはあまりにもったいない。なぜならば、10階にある「BAR IGNIS(イグニス)」では、毎日17時から19時まで、宿泊客に向けた無料のワインサービスを実施しているからだ!早速記者も足を運んでみると、アンティーク調の家具をしつらえた、おしゃれな空間が広がっていた。店内の奥には暖炉が設置され、その前でロッキングチェアに腰かけてくつろぐこともできる模様。

この日バーカウンターに用意されていたのは、北海道産ワインの赤・白。グラスを片手にソファにもたれ、窓の外へ視線を移す。すると、テラスに小さなかまくらがいくつも並び、その中でキャンドルの炎が温かく揺れていた。辺りが暗くなるにつれ、ますます幻想的な雰囲気に。こんなに贅沢な時間を無料のワインと共に過ごせるなんて、何と幸せなことだろう!ちなみに夏はテラスで焚き火を囲むこともできるという。

ワインで体を温めたら、夕食は食の宝庫・札幌の街へ出かけよう。ホテルの周辺にはラーメン、スープカレー、ジンギスカン、寿司などさまざまなジャンルの人気店があり、どこへ行こうか迷ってしまうほど。ホテルのスタッフに一押しを聞いてみるのも良いだろう。

もちろん「BAR IGNIS」は通常のバーとしての営業も行っており、ビールやワイン、カクテル、ウイスキーなどのお酒を種類豊富に取り揃えている。就寝前のリラックスタイムをここで過ごすのもおすすめだ。

満腹な上に程よく酔いも回っていたためか、部屋に戻りベッドへ潜り込むと、あっという間に翌朝に。朝食の時間はチェックインの際に選ぶことができ、指定した時間になると朝食を持ったスタッフが部屋にやって来て、ドアを「トン、トン」とノック。

スタッフは朝食を部屋の前に置き、声をかけることなくそのまま立ち去る。寝起きで顔を合わせる必要がないのも、嬉しい心配りだ。メニューはスープとパン、コーヒーが付くロッジ風。スープはスープジャーに入っており、うっかり寝坊してしまってもアツアツのままなのでご安心を!

北海道産の食材がたっぷり入ったスープは、現在約3種類の中から日替わりで提供。今後はさらに種類が増える予定だという。早速パンをバルミューダ社のトースターで焼き、朝食タイムに。ドリップコーヒーにお湯を注いでいると、コーヒーとパンの香りが部屋に広がり、それだけで幸せな気分になる。

具だくさんの滋味深いスープと、外はこんがり、中はふんわりと焼き上がったパン。テレビを見ながら時折コーヒーを口に運び、何も考えずボーッと味わう。朝食の内容自体はシンプルだが、高級ホテルのブッフェにはない幸福感で満たされていた。

チェックアウトは11時。1階のロビーへ降りて行くと、淹れたてのコーヒーをテイクアウト用のカップに入れて渡してくれた。この一杯があるだけで、小雪が舞う札幌市内へと繰り出す足が、少し軽やかになる。

何もかもが至れり尽くせり、というわけではない。だが、ロッジを再現した世界観の中で、必要なものはすべて揃っている。さらに、“これがあったらちょっと素敵”というポイントを、ぬかりなく押さえている印象だ。干渉しすぎず、かゆいところに手が届く。そんな絶妙な距離感が、最後まで心地よかった。

宿泊料金は1泊1室・1万2000円〜(曜日・時期によって変動)。なお、オープニング期間限定の特典として、通常料金から最大40%オフで宿泊できるお得なプランも登場している。詳しくはオフィシャルWEBサイトで確認を。

ただ泊まるだけのビジネスホテルや、似たり寄ったりの大型ホテルに飽きてしまったという人に。「アンワインド」で、思い出に残る都会のロッジ体験をぜひ!【ウォーカープラス編集部/水梨かおる】