金色の内外装を持つ特急車両が泉北高速鉄道に登場。派手な金色というデザイン、その背景にはある社会的な課題が存在していました。鉄道会社はその課題に対し、何ができるのでしょうか。

中も外も金色

 まもなくの2017年1月27日(金)、内外装が金色の特急用車両がデビューします。大阪府の堺市にある中百舌鳥(なかもず)駅と、和泉市にある和泉中央(いずみちゅうおう)駅のあいだ14.3kmを結ぶ、泉北(せんぼく)高速鉄道の12000系電車です。

金色に包まれた泉北高速鉄道の新型特急車両12000系電車のデッキ部分(2017年1月、恵 知仁撮影)。

 この12000系は、和泉中央駅と南海電鉄線の難波駅を結ぶ通勤特急「泉北ライナー」用のもので、車内へ入ると、乗降扉のあるデッキ部分は壁がほぼ金色。隣の車両へ続く通路も金色です。泉北高速鉄道によると、特急車両としての「非日常」を演出する意図があるといいます。

泉北高速鉄道12000系は、特急「サザン」として使用されている南海電鉄12000系をベースにするが、外装は大きく異なる金色になった(2017年1月、恵 知仁撮影)。

 外装デザインも金色が基本で、そこに青と黒のラインを施した「きらびやかな外装」(泉北高速鉄道)にしたそうです。

 泉北高速鉄道12000系電車がここまで金色になって登場したことには、ある理由が存在しています。大阪の鉄道会社だから豊臣秀吉の「黄金の茶室」にちなんだ、というわけではありません。

切実な状況にある泉北高速鉄道

 泉北高速鉄道12000系電車の内外装が金色になった大きな理由は、「ニュータウン活性化の起爆剤になること」が願われているため。19世紀のアメリカにおける「ゴールドラッシュ」で、カリフォルニアに多くの人々が集まったことにあやかっているそうです。

 人が集まることを鉄道会社が願うのは不思議のないことですが、特にこの泉北高速鉄道には切実な事情があります。「ニュータウンのオールドタウン化」という問題です。

泉北高速鉄道12000系の客室。各座席にコンセントを備えるほか、天井部にはプラズマクラスターイオン発生器も用意(2017年1月、恵 知仁撮影)。

 泉北高速鉄道線は、大阪都心部と泉北ニュータウンを結ぶ足として1971(昭和46)年に中百舌鳥〜泉ケ丘間から開業。中百舌鳥駅で南海電鉄・高野線と大阪市営地下鉄・御堂筋線に接続するほか、南海線の難波駅まで直通運転を実施しています。

 高度経済成長期に整備されたニュータウンでは、初期に入居した世代の高齢化、その子ども世代の地域外転出といった「ニュータウンのオールドタウン化」という課題が見られ、1967(昭和42)年の街開きから半世紀になる泉北ニュータウンも例外ではありません。高齢化率は30%をこえ、ピーク時の1992(平成4)年には約16万人だった人口も、2014(平成26)年には約13万人に。加えて今後、日本の高齢化や人口減少が進行すると、その影響を受けることも予想されます。

 泉北ニュータウンと都心を結ぶ足として開業した泉北高速鉄道線は、沿線ニュータウンの人口動向が輸送人員に大きく影響する特性があり、1996(平成8)年度の6000万人をピークに年間輸送人員は減少。2015年度は4900万人強にまで減ってしまいました。「ニュータウンのオールドタウン化」は、鉄道にとっても大きな課題になっているのです。

 こうした背景から泉北高速鉄道の新型車両12000系は、「人が集まってほしい」という願いが込められ、金色で登場しました。

ニュータウン再生へ、鉄道はどんな手を打てるのか?

 元々、泉北高速鉄道は大阪府などが出資する「大阪府都市開発」という第三セクター会社でしたが、2014年7月に民営化され、大手私鉄の南海電鉄グループに属する「泉北高速鉄道」になっています。

 泉北高速鉄道はこれまで、沿線への新たな人口流入につながるよう、南海線との乗り継ぎ割引を拡大する、通学定期券を約25%値下げする、和泉中央〜難波間を最速29分で結ぶ全車指定席の通勤特急「泉北ライナー」を運転する、区間急行を増発するといった施策を行ってきました。

 そして2016年10月、南海電鉄と泉北ニュータウンが位置する堺市が協定を締結。泉北高速鉄道と南海電鉄にまたがって通学する堺市民に対し、1日あたり48円を補助する制度を2017年1月から開始しました。これら施策について泉北高速鉄道は、「南海電鉄グループの一員となったことを生かしたもの」といいます。

 また、堺市では「泉北ニュータウン再生指針」を定め、住宅家賃補助や子育て支援制度のほか、団地の2戸を1戸に結合する住宅リノベーション「ニコイチ」、戸建て住宅のリノベーションなどによる新たなライフスタイル「泉北スタイル」を提案するなどして街の魅力を高め、新たな住民の呼び込みを目指しています。

12000系のマークは沿線の4ニュータウン(泉ヶ丘、栂、光明池、トリヴェール和泉)を表す。泉ヶ丘と栂、光明池の3地区が泉北ニュータウン(2017年1月、恵 知仁撮影)。

 泉北ニュータウンでは2023年に近畿大学医学部、附属病院が移転してくる予定で、新たな発展の契機になることが期待されています。このたび登場する「黄金の特急電車」12000系も泉北高速鉄道の願い通り、ニュータウン活性化の起爆剤になるでしょうか。そのデビューは2017年1月27日(金)、和泉中央16時33分発の難波行き特急「泉北ライナー66号」です。

【地図】泉北高速鉄道が走る場所

中百舌鳥〜和泉中央間14.3kmを結ぶ泉北高速鉄道。南海線の難波駅まで直通運転を行っている(国土地理院の地図を加工)。