■ヤクルト

 チーム防御率4.74(9月25日現在)は、断トツのリーグ最下位。それでも、最後までクライマックスシリーズ進出をかけた戦いを繰り広げられたのは、リーグ2位の573得点を叩き出した強力打線によるところが大きく、山田哲人を筆頭に20代の野手が多いのも心強い。

 ところが投手は、以前から「ヤクルトには野戦病院がある」といわれるほど故障者が続出する傾向が改まらない。補強ポイントははっきりしている。昨年のドラフトでは、1位で獲得した東洋大のエース・原樹理のほかに、高校生投手をふたり獲得したが、少ない、少ない......。今年はもっと貪欲に、投手の補強に励みたい。

 夏の甲子園優勝投手の今井達也(作新学院)は、真中満監督の地元・栃木の選手だし、いかにもヤクルト好みのしなやかな腕の振りをしたピッチャーだが、同じ高校生なら寺島成輝(履正社)を狙いたい。卓越したマウンドさばきとコントロールのよさ。遅くとも夏前から一軍ローテーションに入り、結果を出すと見ている。

 2位は150キロを超す剛球に加え、器用さも兼ね備えている中塚駿太(白鴎大)でどうか。ここに来て人気急上昇の中塚だから、"外れ1位"の可能性もある。ならば、黒木優太(立正大)でもいいし、頑丈な左腕・濱口遥大(神奈川大)も見逃せない。いずれにしても、今のヤクルトにとって"頑丈さ"はすべてにおいて最優先事項である。

■巨人

 おそらく1位は田中正義(創価大)か佐々木千隼(桜美林大)でいくのだろう。肝心なのはここからで、使える左腕が少ないチーム状況を考えると、高橋昂也(花咲徳栄)、土肥星也(大阪ガス)、笠原祥太郎(新潟医療福祉大)あたりを狙うのがいいのではないか。

 ただ投手も必要だろうが、そろそろ本気で考えていかないといけないのは、野手の方ではないだろうか。亀井善行が34歳、阿部慎之助が37歳、村田修一が35歳......。彼らにいつまでも中軸を任せているようでは、巨人の未来は暗い。

「ならばファームに後継者がいるか?」と問われれば、真っ先に名前が挙がるのが2014年のドラフト1位・岡本和真だが、まだまだ経験が必要な状態。結局、野手陣の次期主軸候補として期待されるのは、このところいつも大田泰示(26歳)、中井大介(26歳)、橋本到(26歳)といったあたり。

 だが、彼らがいることで、思い切った補強ができないのだ。いっそのこと、出せばいいのではないか。彼らだって一軍定着は果たしていないが、もともとはパワーやセンスを持った逸材ばかり。彼らを一軍で使いたい球団は絶対にあるはずだ。

 そんなわけで、3位からは将来の中軸を担える選手たちの獲得を目指してほしい。オススメは、田中和基(立教大/外野手)、大山悠輔(白鴎大/内野手)に松本桃太郎(仙台大/内野手)の3人。いずれも鋭いスイングが特長で、常にフルスイングの意欲を持ち、足もある。走れて、飛ばせて、次期ジャイアンツの根幹となり得るフレッシュな若者たちだ。

■阪神

 新聞で「鳥谷敬の後釜、獲得急務」というような記事を目にしたが、それよりもまずやるべきことは投手陣の再編成だろう。特に今季崩壊したリリーフ陣の補強は待ったなしである。

 これまでのところ田中正義(創価大)の1位指名が噂されているが、個人的には佐々木千隼(桜美林大)が面白いと思う。ストレートとスライダーが勝負球として使える投手だし、先発、リリーフどちらに配置しても高い適性を発揮するだろう。

 佐々木が獲れないとなると、京田陽太(日本大)か吉川尚輝(中京学院大)を、ポスト鳥谷を視野に入れた"次期ショート"として獲得しておいて、2位以降にリリーフで使える即戦力投手を指名するのもありだ。

 球に勢いのある田村伊知郎(立教大)でもいいし、今の阪神にはサイドハンドのリリーフ投手が見当たらないから、水野洸也(東海大北海道)あたりも候補に挙がっていい投手だ。

■広島

 25年ぶりのリーグ優勝を果たした広島。今シーズンの主力に名を連ねたのは「名」より「実」をとって、プロに入ってから力をつけていった選手たちだ。その彼らに共通しているのは、「根性」と「体力」を兼備した心身たくましい選手であるということ。そうしたチームの伝統にピッタリとはまりそうな選手が加藤拓也(慶應大/投手)だ。

 体力はもちろんのこと、150キロを超すストレートで押しまくる剛腕型に見えながら、あれこれと知恵をめぐらせて投げ込む繊細さも兼ね備えている。こういうタイプの投手は、じつはなかなかいない。リリーフの適性もありそうだし、立派な戦力になってくれそうな予感がする。

 広島の場合、将来を考えたとき、捕手にも見通しをつけておかなければならない。昨年は王子製紙から好素材の船越涼太を獲得したが、まだ足りない。ちょうど、今年は高校生捕手に楽しみな逸材が揃っている。

 地元・広島には古本幸希(広島新庄)という素晴らしい選手がいるが、現時点でプロ志望届を出していない。ならば、坂倉将吾(日大三高)を推す。強肩、長打力、野球に対する意欲......高校時代の阿部慎之助と比較すると、板倉の方が総合力で一枚上と評価する。素質に関しては間違いない。

■中日

 一昨年が4位、昨年が5位、そして今季は19年ぶりの最下位に沈んでしまった。何から手をつければ......という散々な状況になってしまったのは、過去3年間で10人獲得した全日本クラスの社会人の選手たちがほとんど戦力になっておらず、せいぜい投手では祖父江大輔、野手では阿部寿樹にかすかな光が射してきたぐらい。これが痛かった。

 今のアマチュア球界からいきなり"打線の軸"になるような選手というのは難しいので、まずは投手獲得が最優先だろう。

 先述した祖父江をはじめ、岡田俊哉、田島慎二、小川龍也、又吉克樹のリリーフ陣はそれなりに結果を残し、来年以降も期待が持てる。なので、今年のドラフトでは先発を任せられる実戦力を持った投手を、最低でもひとりは獲得したいところ。

 そこでオススメなのが柳裕也(明治大)だ。調子がいいときも悪いときも、コンスタントに結果を出し、試合をつくる。中日が狙っているという報道を目にするが、狙い通り獲得することができれば、間違いなく戦力アップは見込める。

 このほかでは、酒居知史(大阪ガス)、黒木優太(立正大)あたりも残っていれば獲得を目指したい投手だ。また、小柄ではあるがピッチングに覇気があふれる田村伊知郎(立教大)も面白い存在。とにかく、タフでピッチングに"芯"のある投手が必要だ。

■DeNA

 球団初のクライマックスシリーズ進出を果たしたDeNA。若手の可能性を信じ、少々のミスには目をつぶれる指揮官になったことで、選手たちがのびのびとプレーできる環境が整ったように見える。

 今季、投手陣を牽引したのが2年目の石田健大とルーキーの今永昇太の両左腕。打者でも元気者の桑原将志がリードオフマンに定着し、守りの要・倉本寿彦がバッティングでも飛躍を遂げ、チーム全体に"勝てる"雰囲気が漂ってきた。

 こういうときこそ、ドーンと思い切った補強をしてほしい。まず1位は藤平尚真(横浜高)だ。スケールの大きさ、スター性、パワフルなピッチングスタイル。いま勢いのあるDeNAにぴったりな選手だと思う。2〜3年後、藤平が一本立ちすれば、石田や今永らとともに"投手王国"を築く可能性は高い。なんとしても欲しい選手だ。

 将来のある高校性投手の獲得に成功すれば、あとは大学・社会人の即戦力投手を中心に指名していけばいい。今年の神奈川には、濱口遥大(神奈川大)、高橋拓巳(桐蔭横浜大)、谷岡竜平(東芝)と実戦力の高い投手が控え、横浜商大出身のサイドハンド右腕・進藤拓也(JR東日本)も切れ味鋭いシュートが魅力の投手。こういう投手がリリーフにいると、一気に層が厚くなる。

安部昌彦●文 text by Abe Masahiko