「小沢があなたの〜? (仔猫ちゃん!) 29歳OLライター、小沢あやです!」
アイドルの連載ということで、それっぽい自己紹介からはじめることにしました。

制服が邪魔をする

思春期の頃、制服が大嫌いでした。
同じ服で並ぶことにより、体の発達の程度が一目瞭然で、嫌な思いをすることもありました。制服の呪縛がとけ、社会人になってからは、自分の体型をどうにかカバーするための服選びを勉強しました。女性ファッション誌を開けば、お尻が大きい人コーデやら、二の腕目線外しコーデやら、いろんな情報が飛び込んできます。可愛くなりたい!より、隠したい!という思いのほうが先にくる方も多いのではないでしょうか。

最近友達が、ブライズメイドで6人お揃いのワンピース着させられることになって、1ヵ月前から憂鬱になっていました。華奢で美人な友人達と同じミニドレスで、並ぶのが耐えられないという話です。気持ちはわかります。「私は二の腕や足出したくないんだけど!」なんて言ったら場が白けてしまいます。しんどいです。

「衣装の布面積多過ぎ担当」ズッキ

最後の鈴木香音さん参加シングル『泡沫サタデーナイト!』

さて、本日、モーニング娘。’16から、”ズッキ”こと鈴木香音さんが、日本武道館公演をもって、卒業します。アイドル業界における、大ニュースです。

とにかく美味しそうにご飯を食べる姿がかわいい彼女。あまり直接的な表現は避けたいのですが、彼女はモー娘。において、長らく「衣装の布面積多過ぎ担当」でした(彼女のことが大好きなので、最大限にオブラートに包んで伝えさせていただきます)。全員がヘソだしの衣装でも、トップスの丈が長め。

フォーメーションダンスで存在を隠されて

お揃いの衣装に加え、モー娘。が当時得意としていたフォーメーションダンス”では、体の大小がくっきり見えてしまいます。「ズッキ、あれれ?」「何だか1人……大きい子いない?」と一般層に届くまでに話題になってしまったズッキ。

運営側の苦肉の索として、『愛の軍団』のMVで上下黒い衣装を付与されます。黒背景と同化するというカメレオン手法で、違和感なく華奢なメンバーに混ざることに成功。「あれ、MV観ていてもズッキが全然見つからない。もしかして、痩せた?!」と、まんまと釣られてしまいました。スタイリストさん、天才です。
 

 

育ち盛りのアイドルにはありがちな「大きくなる」問題

アイドルグループのリアルを描いた、朝井リョウさんの小説『武道館』でもアイドルの衣装問題についてのエピソードが出てきます。グラビア撮影時、他のメンバーは全員ビキニなのに、1人だけワンピースタイプの水着を与えられたメンバーが、その精神的ショックから過激なダイエットに走るという話でした。

思春期って、自分のビジュアルのコンディション次第で、気分が憂鬱になります。それでも彼女の笑顔は輝いていました。立ち位置が後列でも、前述の通りに背景に同化させられ存在を消されかけた時も、ニコニコ完璧なアイドルだった。これは、凄いことです。

誰のことも妬まず、ニコニコ白米を渡す

ズッキは、まわりへの気遣いができる素敵な女の子。同期・鞘師さんがセンターとしてのプレッシャーに押しつぶされそうになっていた際、声をかけたのはズッキでした。「取材の時、里保ちゃんはおにぎりで好きな具、何て言ったの?」鞘師さんが「多分明太子かな」と答えた後、外出したズッキ。戻ってきたとき、鞘師さんに明太子おにぎりとハーゲンダッツが入った袋を渡したといいます。(※鞘師MCのラジオ番組にて告白されたネタ)

「元気ないならとりあえず食べな」と。ズッキは、いつも美味しくご飯を食べていて、それによって元気になっている。だから、同期にも分け与えてあげたかったのでしょう。身近な人の異変に気づいて、すぐに自分なりの解決策を提供する素晴らしさ。ズッキ最高。白米最高(ハーゲンダッツとの食べ合わせは、流石ですけど)。

NYで大人気のアメリカンサイズッキ

やがて、”ぽっちゃり弄り”を受け入れたズッキに追い風が吹きました。2014年10月のNY単独公演で、グループで一番の大歓声を浴びたのです。現地のファンも「ズッキは日本では後列だけど、NYで一番愛されている!」「ズッキにもっと歌割りをくれよ!」と前のめり。それに対して、ズッキは笑顔で「アメリカンサイズでウケているのではないか」と、冷静にコメントしています。その後、道重さゆみさんに「鈴木の顔が理想」とまで言わしめた美し過ぎる顔を武器に、ダイエットにも成功! シングル曲のセンターを務めるまでになりました。今はあっさり体型戻っちゃったんですけど、それも含めて彼女らしいなと思います。

卒業後は、介護関係の仕事へ

そんなズッキが、福祉の仕事を目指して今回卒業を決意したとのこと。(体型弄りに傷ついて燃え尽きてしまったのではないか)なんて心配し、インターネットを検索しまくったところ、数年前の握手会でファンと「福祉の資格をとろうと思っている」という会話をしていたらしい、ということがわかりました。公式情報ではないので、確証はありませんが、ズッキの笑顔に嘘はなかったんだな、と思うと嬉しくなりました。

自分の体型に向き合って、コンディションが万全でなくても、コンプレックスや嫉妬を、他人に向けないこと。笑顔を忘れないこと。ズッキから教わりました。卒業後も、あの笑顔でたくさんの人を救ってほしいなと思います。

(小沢あや)