高校野球のドラマの裏に「ジンクスと因縁」あり

写真拡大

 3月21日に開幕した第86回選抜高校野球。一般枠28校、特別枠4校の計32校が出場するが、高校野球ファンにとって最大の興味はやはり「どのチームが優勝するか?」に尽きるだろう。

 スポーツ紙などで優勝候補に挙げられているのは、昨秋(2014年)の明治神宮大会を制した仙台育英(宮城)、同大会準優勝で一昨年のセンバツV校・浦和学院(埼玉)、夏春連覇を目指す大阪桐蔭(大阪)、近畿大会の覇者・天理(奈良)、昨夏の甲子園で4強の敦賀気比(福井)、プロ注目の最速152キロ右腕・高橋純平を擁する県立岐阜商(岐阜)など。

 センバツにはさまざまなジンクスや因縁がついて回る。

 池田(徳島/1974年)、伊野商(高知/1985年)、済美(愛媛/2004年)など「初出場の四国代表チームが旋風を起こす」というのもそのひとつだし、昨年“三度目の正直”で途切れたものの、「沖縄尚学が1対0で初戦突破すると優勝する」という不思議な偶然もあった。さらに「明治神宮大会の優勝校はセンバツで優勝できない」というジンクスもすっかりおなじみだ(過去に優勝したのは1998年の横浜など3例)。

 今年は初出場の四国代表や沖縄尚学は不在だが、明治神宮大会優勝校の仙台育英が2002年の報徳学園以来、史上4例目のジンクス打破なるかが注目される。

ここ4年は関東と近畿が交替で優勝

 また、最近4年間の傾向をみると、2011年は東海大相模(神奈川)、2012年は大阪桐蔭、2013年は浦和学院、2014年は龍谷大平安(京都)といった具合に関東・近畿のチームが交替で優勝している。あくまで偶然の一致だが、これにならえば、今年は関東のチームが優勝ということになり、その可能性は十分ある。

 前出の浦和学院をはじめ、“機動破壊”野球を売りに昨夏の甲子園でベスト8入りした健大高崎(群馬)、甲子園の常連校・常総学院(茨城)、2012年、2013年と夏の甲子園に連続出場した木更津中央(千葉)と実績のあるチームが顔を並べる。東京から選出の東海大菅生、二松学舎大附属の両校もそれぞれ一部のスポーツ紙でA評価を受けるなど攻守に安定。勢いにのれば、上位進出も期待できそうだ。

 これに対し、近畿勢も大阪桐蔭、天理の有力2校に加え、春連覇を狙う龍谷大平安、近畿枠最後の6校目ながら総合力の高さに定評がある近江(滋賀)など好チームが揃う。

 大阪桐蔭は近畿大会準々決勝で天理に2対3で敗れたが、「事実上の決勝戦」と呼ばれたほど実力が拮抗しており、昨夏の優勝で新チームづくりが遅れたことを考えると、ひと冬越してさらにチーム力は充実しているとみられる。

 また、3年前に藤浪晋太郎(現阪神)を擁して春夏連覇を達成したのを見て、同校に入学してきた選手たちが最終学年を迎えたという意味でも期待は大きい。

「東北初の日本一」で復興に弾みがつくか

 ちなみに、大阪桐蔭の春夏連覇の年(2012年)にいずれも決勝で涙をのんだのが、八戸学院光星(青森/当時は光星学院)だ。今年は3季連続の甲子園出場で、中川優-馬場龍星のバッテリーら昨年のメンバー6人が残る。

 東北枠3校目の選出ということもあり、あまり前評判は高くないが、新チーム以来26勝2敗1分の高勝率をマークし、敗れた2試合はいずれも仙台育英戦。東北勢では仙台育英とともに上位を狙えるチームと言えるだろう。

 最近では2009年に花巻東(岩手)、2012年に光星学院(青森)がセンバツ準優勝。今年は東北勢にとって縁起の良い“3年周期”の年にあたり、「東北に初の大旗を」の悲願を実現できるかどうかも見どころになる。

 今大会では、初日に登場する八戸学院光星、大阪桐蔭の両校が揃って初戦を突破すれば、2回戦で3年前の決勝戦と同一カード再現となる。

 光星が三度目の正直で大阪桐蔭に雪辱をはたし、準決勝で仙台育英と東北初の日本一への挑戦権をかけて激突するという展開なら夢があるし、震災からの復興に努める東北の人々にも大きな元気を与えることだろう。

 仙台育英も2001年の決勝で常総学院に惜敗し、あと一歩で優勝を逃しているが、今年はその常総も出場。場合によっては、直接対決で14年前の雪辱をはたすチャンスもありそうだ。

 一方、これらのチームと決勝で対戦する反対側のゾーンでは、初戦で龍谷大平安と当たる浦和学院、前回センバツ優勝した1997年に生まれたメンバーが中心という因縁をもつ天理の戦いぶりに注目したい。

 大阪桐蔭が敗れた場合、決勝戦は東北勢2校のいずれかと浦和学院vs龍谷大平安の勝者、あるいは天理という好カードも予想されるが、ひと冬越してチームが大きく成長したり、甲子園で一戦ごとに力をつけていくチームが現れるのもセンバツの大きな特徴。名前の挙がらなかったチームにも当然チャンスはある。

 一本勝負のトーナメントの利を生かして、思ってもみなかったチームが快進撃の末に栄冠を手にするという結末であれば、ファンの楽しみも倍加することだろう。

(文/久保田龍雄 Photo by  Kentaro IEMOTO via flicker)