8月下旬まで運行される北斗星

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 3月14日で廃止と言いながら、8月下旬まで運行される北斗星。若干寿命が延びたとはいえ、プラチナチケットと化した乗車券を手に入れるのは簡単ではない。

 だが、そんな北斗星のチケットの入手に成功していた記者。実は、プライベートで2月某日の札幌発上野行きの北斗星に乗車していたのだ。

 でも、始発の札幌駅では列車入線から出発までの時間が短く、先頭車両を撮りに行った記者は危うく乗り損ねるハメに。北斗星は機関車や電源車を合わせると13両編成と長く、自分の座席が後方の場合は注意が必要だ。

 ダッシュでなんとか自分の車両に戻ったが、ここで思い出したのはシャワーカードの購入。北斗星にはシャワー室があり、食堂車で販売(320円)している。ただし、早い者勝ちですぐに買いに行かないと売り切れてしまう。慌てて食堂車に向かうもすでに売り切れ。浴びたい人は乗車後すぐ購入したほうがよさそうだ。

 ちなみにこの日記者が入手したのは個室ではなく、ベッドが上下2段になっている開放式のB寝台。寝台列車なのでベッドの幅は狭いが転落防止の柵があったり、上着をかけるハンガーや小さなテーブル、ライトなどコンパクトながら非常に機能的だ。また、JRのロゴが入った特製浴衣が何とも言えない味を出している。

 また、通路には壁に折り畳み式のイスが収納されており、車窓の景色を楽しんだり、乗客同士で会話を楽しむこともできる。同じ車両に乗っていた農業を営む60代の男性は北斗星乗車プランのある旅行会社のツアーに参加したらしく、「廃止する前に一度乗ってみたくて息子がプレゼントしてくれた」と念願が叶って嬉しそうだった。



記者が泊まった北斗星のB寝台

ちなみにB寝台(個室)はこんな感じ

シャワーカードは早い者勝ち!函館駅では間近で連結作業が見られる

 一方、鉄道マニアという40代の会社員は、「故郷が北海道で、これまで20回以上乗車しました。確かに、飛行機のほうが早いし、LCCを使えば安くいけます。けど、それにはない魅力が寝台列車にはあるんです!」と力説する。

 北斗星には食堂車が併設されており、ディナータイムにはフランス料理のコース(8500円)と御膳懐石(6000円)の2種類を用意。出発3日前までの予約が必要だが、当日でも21〜23時はパブタイムとして予約ナシの乗客でも利用できる。ビーフシチューやハンバーグのセット、カレーなどの食事メニューのほか、おつまみ系やビールやワイン、日本酒などのアルコール類も意外と充実している。

 さらに乗客の憩いのスペースとしてロビーカーもあり、ゆったりしたソファーに座ってお酒を飲みながらの車窓の景色は贅沢なひとときだ。



本格フランス料理のコースが楽しめる食堂車

車窓を眺めながら飲むお酒が旨い!

 札幌発の場合、函館には夜到着するのだが、ここで必ず行われるのが機関車の付け替え。間近での連結作業が見ることができ、大勢の乗客がその様子を撮影している。「北斗星で最も興奮する瞬間のひとつ」と語る30代の会社員のようにこれ目当てで乗車するマニアも少なくない。

 その後、北斗星は深夜の青函トンネル、東北を抜けて早朝に仙台到着。記者は車内販売の駅弁を購入したが、食堂車では朝食を食べることもできる。予約不要なのでディナーは予算的にちょっとという人にはオススメだ。

 寝心地も案外よくて、走行中の揺れがむしろ心地よいくらい。廃止理由のひとつに老朽化を挙げるだけあって、設備の古さは目立つが整備は行き届いている。車両は解体が予定されているそうだが、もったいない限りだ。

 飛行機なら東京から約1時間半だが、一晩16時間かける寝台列車も悪くない。単に移動ではなく、それ自体が旅として楽しめる魅力が北斗星にはあった。



札幌発の北斗星で見られる函館駅での連結作業

札幌駅入線シーン

(取材・文・撮影/高島昌俊)