――西村主審はすべての動作が見える位置にいたのでしょうか?
「はい。良いポジションにいました。FIFAも『見えない位置から判定したのではなく、しっかりと事実を見える位置に移動してその判定をした』と見解を示しています」
 
――状況はよく分かりました。しかしながら世界中からいろいろな意見が出たことなので、もう少し踏み込ませてください。ホールディングといっても、力はあまりかかっていなかったのではないでしょうか?
「皆さまのそのご意見は尊重します。ただ、今大会の『ホールディングをしっかり見極めていきます』という指針を、前述した大会前のミーティングで選手と審判員が共有しています。そして、これはあまり理解されていないことなのですが、ルールでは直接FKと判定するファウルは10項目あり、そのうちの7つは主審がその行為の程度を見極めてファウルと判定しますが、残りの3つ(ハンドリング、つばを吐きかける、ホールディング)は、その行為自体でファウルと判定されます。なぜなら、この3つの行為は選手が自らの意図を持って選択する行為だからです。ですので、ホールディングは『程度を見極める』のではなく『行為を見極める』ファウルになります」
 
――フレッジ選手のシミュレーションではないかという声については?
「シミュレーションの定義は、負傷やファウルをされたふりをして主審を騙そうとすることです。シミュレーションと判断する基準は、接触がないにもかかわらず倒れた場合、もしくは、接触を避けることができるにもかかわらず自ら接触を創り出した場合です。この場面では、フレッジ選手は後ろから掴まれなければボールに対してプレーできましたし、自ら接触を創り出していません。よってシミュレーションの判断基準からは外れています」
――シミュレーションとジャッジしていたら誤審だったのですね。では、緊迫した試合展開であることを考慮して、流すという選択肢はどうだったのでしょうか? 杓子定規だったのでは、という見方もありました。
「もちろん、杓子定規という意見も尊重します。なぜなら、見ている人のそれぞれの立場によって感じ方が違いますし、杓子定規を好む方もいれば好まない方もいらっしゃいます。様々な意見があって、そしてそれを議論したり批判したりすることもサッカーの楽しみ方に含まれると思っています。『レフェリー』という、両チームから難しい状況の判断を委ねられた者として、現実に起きたこととルールをつなぐという役割を担っている者として、見たものをそのまま正直に判定しました」