日本最大のインディゲームの祭典、BitSummitの公式ポスター

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「日本のゲームは終わったのか?」「ノオオオオオオーーーーーッ!」

こんな熱い思いでスタートした、日本のインディゲームの祭典「BitSummit」。京都にあるゲーム開発スタジオ、Q-Gamesでプロデューサーを務めるジェームズ・ミルキー氏によって、2013年3月に第1回目が開催されました。クラブハウスを利用した特設会場には、100名の定員のはずが170名も参加。詳細は昨年度のレポート記事をご参照くださいませ。

あれから1年。BitSummitがパワーアップして帰ってきました。2014年3月7日〜9日と会期が3日間となり、会場も京都の産業会館「みやこめっせ」に移転。のべ5350人の来場者を記録したんです。3147%の成長率で、これはもう「事件」と言って良いでしょう。筆者も初日のメディアデイを取材しましたが、100以上のインディゲーム開発者(社)が集結し、新しいムーブメントが広がるエネルギーに満ちていました。

大きな違いは、イベントの主催者に京都府が加わり、産官学連携の座組が出来たこと。みやこめっせが使用できたのも、この座組が大きかったと言えるでしょう。BitSummit以外に、学術系カンファレンスの「京都ゲームカンファレンス2014 〜ゲーム・スタディの諸相〜」、ゲーム関連企業合同説明会の「Job Jam Kyoto 2014」、ビジネスイベントの「Cross KYOTO 」と関連イベントも実施。ゲームイベントに留まらない広がりを見せました。

とはいえ、中核を担ったのがBitSummitだったことに違いはありません。会場では同人ゲーム開発者から、プロのゲーム開発スタジオまで、みんな仲良く長机を並べて自慢のゲームを出展。開発者同士が互いのブースを訪れて交流するなどの光景も見られました。日本だけでなく、アメリカや台湾など海外からの出展者も参加し、国際色豊かな雰囲気に。商業や同人といった狭い括りを越えて、ゲームを作るのが好きな者同士が、自慢のゲームを出展する。いやー、他ではなかなかみられない、良い感じのイベントでしたね。

実際、ゲームエンジンや開発ツールの無償化、スマホなどデジタル流通の進展などで、プロとアマの開発環境の違いは急速に狭まっています。そこで「作りたいゲームを作る!」という、インディの精神に満ちあふれたゲームが、世界中でブレイクしているのです。インディ不毛の地といわれた日本にも、昨年ついにその波が到来。BitSummitを皮切りに、東京ゲームショウでもインディコーナーが設置されるなど、大きな展開を見ました。今年度の成功で、その流れが決定づけられたと言えるでしょう。

またプロでは逆立ちしても作れない自由奔放なゲームが作れるのもアマチュアの強み。中でも100円ショップで売っているA4サイズのプラケースに、32個×16個のLEDを並べてディスプレイを作り、押しボタンスイッチで操作する格闘ゲームが出展されたのには、ひっくり返りました。こんな粗い画面でも、ちゃんと遊べるんですよ皆さん! 本作を出展したRIKIはファミコンの限界に挑戦したアクションゲーム「キラキラスターナイト」も出展し、BitSummitアワードで「革新的メビウスの帯」賞を受賞。この時代を逆走する感覚はインディならではでしょう。

一方でステージイベントでは豪華ゲストがずらり。オープニングは昨年度に続いて、ゲーム音楽の鬼才サカモト教授が登壇。続いて「Rez」「Child of Eden」の生みの親として知られる、ゲームクリエイターの水口哲也氏が登壇し、ジャンルではなく人の本能に根ざしたゲームを作ることの重要性を強調しました。「ロックマン」の生みの親として知られ、新作アクションゲーム「Mighty No.9」開発のため、4億円をクラウドファウンディングで調達した稲船敬二氏も登場。電子工作からクラウドファウンディングまでという、このカオス感がすべてを象徴していたと言えましょう。

「のらくろ」に代表される戦前・戦中マンガに対して、映画的コマ割りと長編ストーリーで戦後マンガを牽引した手塚治虫は宝塚出身。ゲームセンターの人気ゲームを家庭で遊べるようにしたファミコンの任天堂は京都発祥。ぐっと下って「新世紀エヴァンゲリオン」のガイナックスも大阪発祥と、ポップカルチャーの反逆児は関西から登場します。日本のインディゲームもまた、京都を中心に全国に伝播しつつあるといっていいでしょう。このカンブリア大爆発から何が生まれるか、今から楽しみです。
(小野憲史)