超繊細！ボールペン画アート佐藤明日香さんに人生相談する人が増えたワケ
「おかげさまで、22点の作品が2日間で完売しました！」
――すごい！！どういう方が買っていかれました？
「老若男女でした。でも、中には福岡から飛行機でお越しくださった方や、外国人の方も」
――外国人！？
「アメリカ人の方なんですけど、どうやらトイレに行く途中で私の作品を見つけたようで、『今からアメリカに帰るから、包んでくれ』って言われて、目が合ってから1分もしないうちに買っていかれました」
決して、安くはない絵なのだが…。ちなみにイタリア人の方も買って行かれたそうだ。
●使用したハイテックは既に200本！
佐藤さんは、中学の頃からずっと『ハイテック‐C』愛用者。作品もハイテック0.25ミリを使っている
「私が描く絵は非常に細かいので、他のボールペンを使うとケント紙に描いた時ににじんでしまうんです」
本格的に描き初めて以来、4年弱の間に使ったハイテック‐Cは200本！
以前に取材させていただいた時に、佐藤さんはトイレに行く時以外は、朝7時から夕方5時までの10時間、黙々と描いているとおっしゃっていて、こういうやりとりがあった。
――お腹がすきませんか！？
「少食なんで大丈夫です。紅茶を飲みながら描いてますし。むしろ、お腹がいっぱいになると描き辛くなるんです。それに・・・」
――それに？
「あんまり、ご飯に興味がないんです」
そのこともあってか、その後の展示では…
「お年を召した方が、私の健康を心配してくださることが多くなりました。『目を大事にね』とか『ちゃんと食べてますか？』とか。果物をくださる方もいらっしゃいました。本当に嬉しいです」
せめて、いただいた果物やお菓子を食べて、風邪をひかないように…と私も思ったのである。
――佐藤さんは銀座三越以外にも表参道や京都など、色々な場所で展示されていますが、なんというリアクションがありました？
「以前の展覧会では、『友達いないんですか？』って言われたことがありましたけど（苦笑）、最近の展覧会では『あなたはずっとこのまま生きて、頑張って…』と（笑）。本当にありがとうございます」
しかも！
京都で展示した際に、会えないと思っていた人が、遊びにきてくれたという。
「会社員時代に夏期休暇をいただいて、スイスに行ってたんです。その帰りの飛行機でのこと…」
いつものように絵を描いていた佐藤さん。通りがかったキャビンアテンダントさんが彼女の絵を見て『あなたの絵はスゴイ！』着陸まであと6時間あるから絵を描いて…という旨のことを“お願い”したのだ。そうはいっても休みたいところ。ところが、真面目な佐藤さんは消灯時間を過ぎても知らないC.Aさんのために絵を描き続けたのだ。
6時間後…。
「着陸した時に、ひたすら描き続けた絵を渡したら、今まで自分が描いた絵を見て、こんなに喜んでくれた人はいないっていうほど喜んでくれて『仕事を辞めて絵描きになりなさい』って言ってくれたんです」
佐藤さんは、C.Aさんに言われた一言で、絵描きになることを決意。怖いもの知らずの佐藤さんは、勤めていた会社をあっさり辞めてしまう。その後、絵を書き続けるうちに、晴れて地方のコンペに入選。すっかり大喜びの佐藤さん！
ところが…
「私、コンペに受かればプロになれると思ってたんです。でも、いただけるのは賞状だけ」
その時になって初めて「これは大変なことになった」と気づく。
貯金はあっという間に底をつき、家賃も払えなくなり、作品を知り合いに売って生活を凌ぐ日々が続く。不安な日々を乗り越えて、現在に至るのだ。
そんな佐藤さんに、最近は人生相談をしてくる人が増えたという。
――やっぱり、会社を辞めて自分の道を進みたい…という方ですか？
「独立しようか迷っているという方もいらっしゃいますが、中には、『中学生の子どもが授業中に落書きばかりしていて困ってます。でも、佐藤さんが授業中に落書きばかりしていたという話を聞いて、それはそれでいいのかとも思うのですが…』という旨の相談を受けまして、『中学生の間は勉強をしておいた方がいいですよ』と答えておきました（苦笑）」
実は、前回（2013年2月）の取材で佐藤さんに夢を聞いた際、『京橋にあるパイロットの本社と、パイロットミュージアム＆カフェに広告ポスターを飾られたいです！』という話をされていたのだが…
「銀座三越での個展の時に、PILOTの社員の方が観に来られたんです！しかも、最終日の前日でした！」
差し出された名刺に「PILOT」と書いてあるのを見た時、佐藤さんは嬉しさのあまりに思わず失神しそうになったという。
「だって、PILOTですよ、PILOT！憧れの、あの『ぱ・い・ろ・っ・と』ですよ！！まさか、あの時のコネタの記事を読んで来てくださるなんて！！！！！！！」
現在、京橋にあるパイロットカフェには佐藤さんの絵が展示されている。全国の量販店ではグッズも販売されるようになって、ますますドキドキが止まらない佐藤さん。
――今後の夢は何ですか？
「『ハイテック‐C』をずーーーっと使ってきたから、『ハイテック‐C』 1本で世界に行きたいです。というのも、昔、バックパッカーでヨーロッパを旅した時、ハイテックを落としてしまったんです。そしたら、どこにも売ってなくて…。他のペンで代用したものの、『あぁ、愛しのハイテック…』と思って。だから、私が全世界で売ろうと思います！」
あれ？海外で絵を描く話から、いつの間にか「ハイテック」を“売る”方の話になってしまったが、佐藤さんが海外で描いたらますます面白いことになりそうだ。佐藤さんは、頑張って、いつかはパリのポンピドゥーセンターミュージアムや、ヘルシンキのキアズマミュージアムで展示されることも夢見ている。描いているキャラクターの一つ一つは小さいが、夢は大きいのであった。（エキサイトニュース コネタ編集部）
●『たびねこ』 さとうあすか著（2013年12月13日発売）
『たびねこ』
●ボールペン画クリエーター
佐藤明日香さんのサイト
※現在、京橋にある『PEN STATION Museum & Cafe ペン・ステーション ミュージアム&カフェ』に佐藤さんの絵が展示されている。
http://www.pilot.co.jp/service/museum/
