グーグルがアマゾンのクラウド・ビジネスに真っ向勝負
グーグルはクラウド・コンピューティングをすべての人に解放し、アマゾンのクラウド支配を打ち砕こうとしている。
グーグルがついに新たなクラウド・コンピューティング・サービスを開始した。ビジネス利用も個人利用も可能なのでユーザーは大歓迎だろうが、現在のクラウド界を牽引しているアマゾンは戦々恐々としているかもしれない。
グーグルは、かつてマイクロソフトがIBMを犠牲にしてPC用ソフトウェアのデファクト・スタンダードにのし上がった際と同じやり方で、クラウド・コンピューティングの市場をひっくり返そうとしている。つまり、便利で使いやすい安価なサービスを提供しようとしているのだ。今週の月曜日に、グーグルは同社の「Google Compute Engine 」を正式にスタートさせた。開発者に対しては一年半前から「デベロッパー・プレビュー」として公開されていたサービスがついにリリースされたのだ。グーグルの新サービスは、「Elastic Compute Cloud(EC2)」と呼ばれるアマゾンのクラウド・コンピューティング・プラットフォームと真っ向から競合するものである。
クラウドベースのサービスは2000年の終わりごろからポピュラーになってきた。サーバーを購入したり大規模なサービスと契約する余裕のないスタートアップ企業やスモールビジネスに利用され始めたことがきっかけである。現在では人事、マーケティング、営業、商品開発に至るまで、あらゆる部署がクラウド・サービスを利用している。
こういったコンピューティング・サービスを利用するメリットは、インターネットの構造に関する知識をあまり持っていない平均的な社員でも、アプリケーションの構築や運用、管理を行えるところにある。一枚のクレジットカードさえあれば、多大な労力を要せずともアプリケーションを構築し、何万もの人々に向けて配信することができるのである。例えば、最近Facebookによる買収をはねつけたSnapchatという画像共有サービスは、Google Compute Engineを利用して毎秒4000枚もの画像を処理している。同社の従業員数はわずか30名であり、データセンターすら有していない。
クラウド・サービスをより大勢の人々に、彼らが理解できる技術プロセスで提供することで、グーグルはマイクロソフトと同じ道を歩むことを望んでいる。マイクロソフトはビジネス用のソフトウェアを単純化して使いやすくし、ライセンスやCDを購入すればすぐに使えるようにした。
アマゾン主流のトレンドを変える試み
アマゾンはビジネス向けのクラウド・サービスを最初に手がけた企業の一つであり、現在でも各企業の人気を独占し続けている。クラウド・コンピューティングの部門だけで30億ドル以上の売上が見込まれているほどだ。
グーグルは同社のサービスを稼働させるにあたり、ハードウェアだけでも29億ドルを費やしている。グーグルはGoogle Compute Engineの設計を非常にシンプルなものにしたと述べており、人々はGmailアカウントを管理したりYouTubeに動画をアップしたりGoogle Driveでファイルを共有したりするのと同じような感覚で、Google Compute Engineを理解し使いこなすことができるだろうという。
各企業に自社のCompute Engineを使ってもらうため、グーグルは色々な特典を用意している。通常サービスの10%オフ、多種にわたるLinux OSのサポート、緊急時に備えた「自動再起動」を含む保守サービスの強化、等だ。
「Snapchat」以外にも、グーグルは様々な企業にサービスを提供しているようだ。「Cooladata」「Mendelics」「Evite」「Wix」などもグーグルのサービスを利用してアプリケーションを構築しており、これらが爆発的な人気を博したとしても十分なサーバーを提供できると保証している。
グーグルはまた、「SaltStack」「Wowza」「Rightscale」「Qubole」「Red Hat」「SUSE」「Scalr」のようなクラウド・サービス・プロバイダーとも提携している。
1000ものサーバーを3分足らずで起動
以前、批評家たちはアマゾンのクラウド・サービスをグーグルのものよりも信頼性があり、起動も動作も速く、利用価値が高いとして賞賛していた。しかしScalr社のセバスチャン・スタンディル率いるチームと、Wikibon社のアナリスト兼調査員であるスチュアート・ミニマンが両者を比較した結果、これとは違った答えが出始めている。今年始めに書かれた記事の中で、スタンディルは次のように述べている。
アマゾンは長年、貧弱なネットワークとディスク・パフォーマンスに悩まされてきた。だから、グーグルがより高い安定したパフォーマンスを提供すると聞いたときは感慨深かった。我々は早期アクセスを申請したので、自分の手でテストを行うことができた。初めてサービスを使ってみたときは、キャンディー・ストアに入った子供のような気持ちだったよ。
スタンディルのチームはベンチマークを「改良」する段階におり、試験的な新しいベンチマークを使ってみた結果「パフォーマンスの違いはそれほど重大なものではなく、部分的にはまだAWS(Amazon Web Services)のほうがリードしている」と述べている。とにかく、技術面においてもマーケティング面においても両社が競うことになるのは間違いない。
月曜に公開されたGoogle Compute Engineの動画では、グーグルのプロダクト管理ディレクターであるグレッグ・デミチリーが1000のバーチャル・サーバーをわずか3分足らずで起動させるデモンストレーションが紹介されていた。これはアマゾンの平均的な起動時間に比べて40%も速い。
クラウド・サービスのユーザーにとって、スピードは非常に重要なポイントである。しかしグーグルは、人々がこれとは別の理由から同社のサービスを仕事や家庭で使うだろうと思っているようだ。彼らは普段からGmailやGoogle Drive、YouTubeといった同社のサービスを使い慣れており、グーグルのインターフェースには馴染みがあるのである。
Michael Singer
[原文]