あらゆるものと結合されていくフェイスブック
私たちは利便性の対価をお金では無く個人情報で支払っているのだ。
もしフェイスブックを避けて通る事が不可能に思えたとしたら、あなたの感覚は間違っていない。
フェイスブックはあなたを取り巻くテクノロジーをことごとくパーソナライズ(個人化)しようとしている。その試みの一環として、同社は新たにリビングルームにも進出することを発表した。PlayStation 4にフェイスブックのログイン・アカウントを結合するため、ソニーとチームを組んだのである。同社によると、フェイスブック・アカウントとPlayStation Networkを連携させることによって自分の個人情報を取り込んだり、ゲーム内でキャプチャーした画像や動画をリアルタイムでシェアしたりすることが簡単に行えるようになる。
もちろん他のアプリケーションと同様、フェイスブック・アカウントでのログインは必須ではない。しかしこれはフェイスブックが私たちのあらゆるデバイスと結合を強めようとしている良い証拠といえるだろう。
ゲームも匿名性を失いつつある
PlayStation 4はフェイスブックにとって、ゲーム業界への最初の足がかりというわけではない。今年の夏には有名なゲームエンジンのUnityと提携し、クロス・プラットフォームのソフトウェア開発キットの提供を開始しているのだ。このキットにより、様々なデバイスで動作するゲームにフェイスブックのソーシャル機能を簡単に結合することができる。
PS4との結合と同様、Unityのユーザーはゲーム内でフェイスブックの友達を誘ったり、功績をシェアすることができる。
フェイスブックとの結合は、ゲーム体験そのものを根本から変えてしまうかもしれない。これまで多くのゲーマーは個人情報には繋がらない「ゲームタグ」(ゲーム内でのニックネーム)を使ってきた。しかしフェイスブック・アカウントを使ってPlayStation Networkにログインすると、実名やプロフィール写真が表示されるようになる。これまでゲームの世界には存在していなかった社会的責任というものが追加されることになるわけだ。
従来のゲーム・ネットワークの多くは、YouTubeのように匿名を前提としたいわば箱庭的な遊び場だった。今月グーグルがGoogle+をYouTubeに結合したときには、匿名を好むユーザーたちから猛烈な批判と反発が沸き起こったものだ。Facebookの友達からの招待は承認できつつ、後はPlayStation Networkでログインしてこれまで通りの匿名性を保つ事ができるなら、こういったユーザーの不満の高まりを回避することも可能かもしれない。
すべてをフェイスブック化する試み
フェイスブックは他のサービスではみられないほどに私たちの個人情報と密接に関わっている。一般的なアプリが必要としそうな情報はすべてフェイスブック内に保存されているので、新しいサービスに登録する際にその情報を使うのは確かに理にかなっていると言える。
今ではアカウントの作成を必要とするほとんどのサイトで、フェイスブック・アカウントでのログインが利用できるようになった。イーコマースからライドシェア(自動車の乗り合いサービス)に至るまで、フェイスブックとの結合がもたらすさらなるソーシャル体験の提供を口実に、個人情報を収集しようとする企業は日々増え続けている。
アマゾンもつい先日、ちょうどこの年末のショッピング・シーズンに間に合うようフェイスブックとの結合を発表したばかりだ。これによってユーザーは友達のウィッシュリストを覗くことができるようになった。フェイスブック・アカウントでアマゾンに接続すれば、あなたが現在閲覧している商品に関する友達のレビューや、友達がそれをいつウィッシュリストに入れたのかが分かるようになる。
もちろんアマゾンにとって、フェイスブックとの連携は今回が初めてではない。同社の類似サービスである「Friends and Family gifting 」という機能では、フェイスブックの友達リストをインポートして彼らのウィッシュリストを見ることができる。また「Amazon Birthday Gift」という、フェイスブック友達の誕生日にAmazonギフトカードを贈れるサービスも存在する。
一部のサービスでは、アカウントの作成にフェイスブックが必須なケースさえある。
例えば「Lyft」だ。Lyftは今流行のライドシェアリングサービスで、サービスを使うにはフェイスブック・アカウントを持っていることが必須となる。Lyftはタクシー事業やカーシェアリングとは異なり、あくまでも個人同士による相乗りサービスであるため、お互いの身元をはっきりさせる必要があるからだ。
音楽ストリーミング・サービス大手のSpotifyも2011年に似たような制約を一時的に設けたことがあるが(新しいユーザーはフェイスブック・アカウントを使って登録する必要があった)、これはその後撤廃された。言うまでもなく、フェイスブックがユーザーのデータを吸い上げてサービスの外部で再利用していることにユーザーが反発したからである。
フェイスブック・アカウントでのログインは、ソーシャル・ネットワークとアプリ開発者の相互にメリットがある。どちらも貴重な個人データの収集ができるからだ。しかし一般利用者にとってはどうだろうか。確かに複数のアカウントを作成することなくフェイスブック・アカウントを使ってサインインできるのは便利だが、それはemailアドレスを使うのに比べてそれほどのメリットはないだろう。
つまり、フェイスブックはあなたのデータを所有したいだけなのだ。そして今のところそれは成功しているように見える。
Google+やYahooといった類似のソーシャル・ログインサービスが無い訳でもないが、フェイスブックの独壇場であることに変わりはない。PepsiやVerizon等の各ブランドにソーシャルログイン機能を提供しているGigyaが行った調査によると、利用者の半数以上が他社サービスに比べてフェイスブック・アカウントでのログインを好むという。
これは、多くの人が自分の個人情報をサービスプロバイダーに進んで提供しているという意味になる。ユーザーは本当にプライバシーよりもパーソナライゼーション(個人化)を望んでいるのだろうか。
何のためにフェイスブック・アカウントでログインする必要があるのか
今やフェイスブックが知っているのはあなたの名前や外見だけではない。どこかのサービスやアプリにフェイスブック・アカウントを使ってログインする度に、私たちは自発的に個人情報をそれら1つ1つのアプリに取得させているのだ。
私はよくモバイル・アプリでフェイスブックのログインを使っている。そのためフェイスブックは私がLyftを好むライドシェア派であり、Yelpを使って外食を楽しみ、Instagramで写真を加工していることを全て知っている。
私の親友ですらそんなことまでは知らないというのに、だ。
そもそもフェイスブックがあらゆるサービスと結合されることで、どんなことが可能になるのだろうか?PlayStation4ではゲーム内のスクリーンショットを取って直接フェイスブックにポストしたり、自分の友達リストをインポートして一緒に遊ぶ相手を探すことができる。
Spotityでは今聞いている楽曲をみんなにシェアできるし、アマゾンでは私が愛犬のクリスマスプレゼントに何を買うつもりなのか友達に知らせてあげることができる(誰も興味ないとは思うが)。
結局、フェイスブックに私たちのデータを吸い上げさせることの見返りは何なのだろうか。せいぜい自分用にパーソナライズされた広告を、頻繁に使うアプリケーションの中で見せられることぐらいだろう。
PlayStation 4の画像:Facebookより
ほしい物リストの画像:Amazonより
Selena Larson
[原文]