ビッグデータの流行で最後に笑うのは誰か?
ビッグデータが普及するにつれて、その恩恵にあずかる面々は移り変わっていくのだという。
我々は今ビッグデータ•ブームの最中にいる。ベンチャーキャピタル達はビッグデータの匂いがする企業には惜しみなく投資し、ブームの拡大は本格化を見せている。Cowen&Co.のアナリストであるピーター・ゴールドマチャーによるとこのブームは三つのフェーズに分かれており、最終フェーズで一番得をするのはベンダーではなく、ビッグデータを実際に使用する企業なのだと言う。
ビッグデータはまだまだ不器用な思春期である
世間では過剰な期待がなされているが、ビッグデータはまだほんの初期段階で、野球で言えば1回の表あたりである。ゴールドマチャーに言わせれば実はまだ試合も始まっておらず、今はドラフト会議の最終ラウンドといったところらしい。企業はまだデータの使い道すら分かっておらず、計画の上でも1ドルの投資に対して0.5ドル程度のリターンしか見込めないのだという。
これはあまり良い状況とは言えない。
しかしすでに改善の兆しは見えており、ビッグデータのインフラが急成長を遂げることによって、まずはそのベンダー達が大きく儲けるだろうとゴールドマチャーは分析している。
ビッグデータの勝者としてまずあげられるのが、インフラを提供している各企業だ。HadoopやNoSQLのようなベンダーが持つ技術によって、今後企業が長年にわたってビジネスを展開する基盤が構築されていく。
実はビッグデータのソフトウェア•インフラ市場はまだ比較的小さい。だが急激に成長しており、中には年間売り上げ100億円の大台に乗るスタートアップも何社か出て来ているようだ。彼らが提供するソフトウェアのほとんどはオープンソースであり、無料でダウンロードできるというのだから驚きである。
データを簡単に使う方法(ただし有料)
データ自体のインフラを構築するベンダーももちろん重要だが、より大きなリターンを狙う別のベンダーも存在する。ビッグデータの解析を助けるアプリの開発やデータ分析に特化した企業達である。Cloudera社の最高戦略責任者であるマイク・オルソン(@mikeolson)は最近こんなことを言っていた。
.@mikeolson makes a great point: #hadoop value will be delivered through cloud apps vendors. ISV opportunity huge for #hadoop and @cloudera
- aneel bhusri (@aneelb) June 13, 2012
「@mikeolsonがいいことを言った:#hadoopの価値はクラウドアプリのベンダーによって提供される。ISV(独立系ソフトウェア・ベンダー)達にとって#hadoop及び@clouderaは最高の好機だ。」
ビッグデータが本格的に普及するためには、データ・サイエンティストと難解なクエリーに支配された特殊な世界から、一般のユーザが利用できる物へと変わっていく必要がある。ビッグデータと関連技術を「appify」つまりアプリ化できた暁にはそのリターンは相当に大きく、ゴールドマチャーによればインフラ・ベンダーが受ける恩恵をも上回ると言う。
ビッグデータでより多くの収益をあげるのは、アプリやデータ分析を専門とし、ビッグデータの複雑な技術をユーザにとって分かりやすく使いやすいフロントエンドとして提供できるベンダー達だ。これができれば、コア・テクノロジーを扱うプログラマー達よりもはるかに大きいマーケットであるビジネス・ユーザーを顧客にすることができるからである。とはいえ、ただプロセスを自動化するだけのアプリケーションはそのうちありふれたものになってしまうだろう。次に求められるのは、データに背景や意味を見いだし、データの価値を利用者に提示できるようなアプリケーションなのだ。
次にビッグデータの恩恵を受けるのはあなたかもしれない
ありがちな話だが、ベンダーは決してビッグデータ•ブームの真の勝者ではない。技術とは物事を可能にする力だ。時には効率化を実現して既存のビジネスの維持を助ける。時には今まで不可能だったことを可能にして新しいビジネスを生み出す事もある。
ゴールドマチャーも注目しているように、TwitterやGoogleはビッグデータのインフラ無くしては存在できない。彼らはオープンソースのコードと自社で開発したコード(その後オープンソースとしてリリースされることが多い)を組み合わせてインフラを構築している。ビッグデータの最大の恩恵を受けているのはこういった企業なのである。
ビッグデータの真の勝者はビッグデータの実践者だ。データを利用して今まで出来なかった新しいビジネスを築き上げた企業こそが最大の恩恵を受けている。今後はデータを資産として活用できるかどうかが勝敗を分けることになるだろう。
現在ビッグデータの恩恵を受けているのはまだほんの一部の人々だ。しかし状況は変わる。インフラが成熟し、様々なアプリケーションを通じてデータを利用できるようになるにつれて、やがてはエンドユーザである企業が大きな恩恵を受けることになるだろう。あるいは完全にブームに乗り遅れ、廃業に追い込まれることになるかもしれない。ビッグデータにはそれほどの影響力があるのだ。
画像提供:Shutterstock
Matt Asay
[原文]