ネット巡回でいじめは防げるか?

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大人がネットを巡回したからといって、子どもが掲示板などへのネガティブな書き込みを止めるとは思えないのだが……。2013年2月5日付の中日新聞に掲載された「ネット巡回に専門員、掲示板チェック強化 県教委」という記事を見てみよう。




記事によると、岐阜県の教育委員会が、「インターネット掲示板に書き込まれた悪口をきったけとした子ども同士のトラブルやいじめを防」ぐために、「2013年度から、掲示板などをパトロールする専門職員を置く」のだと言う。




県教委の調査によれば、「県内の小学5年生から高校3年生の4万2000人余を対象におこなった調査によると、ネットに接続可能で自分も使えるパソコンが自宅にあると答えたのは、小学5、6年生が70%超」。中高校生にいたっては、いずれも「85%に上った」。




この数字を見ると、パソコンや携帯電話、スマートフォンなどを使ってネットに接続することは、すでに子どもの間ではデフォルトと言ってもいいような状況になっていることが分かる。




子どもたちが友だちの悪口を掲示板などに書き込もうと思えば、パソコンがダメなら携帯電話を使うし、携帯電話がダメならスマートフォンを使うわけで、どれだけハードの部分に制限を課しても、抜け道はいくらでもあると思われる。




さらに、どれだけ掲示板やブログなどを巡回しても、巡回されたことが分かってしまえば、子どもたちは別の掲示板やブログを作成するであろう。要は、ソフトの部分に制限を課しても、抜け道があるということだ。




つまり、大人がハードやソフトの規制をしたり禁止をしても、友だちの悪口を書き込める環境を、子どもたちは手に入れることができるのである。県教委が専門員を雇って、ネット巡回をさせる。もちろん、ネットで何が起きているのかが分かり、ある程度の対策を講じることはできよう。だが、そこまでである。根本的な解決に至るとは、筆者には思えない。




ネット巡回などしている時間があるのなら、子どもたちに対して「いじめに関する啓発」をしっかりやった方が効果的であると筆者は思う。人は、もともと暴力的であり、他者をいじめたくなる欲望を持っていること。何も考えずに過ごしていると、いつの間にか、その欲望にかられてしまうこと。そして、その欲望を抑えるものは、自分がいじめられた場合を想像する力であること。いじめられると、心に限りなく深い傷を負う。そのことを、子どもたちにどれだけ理解してもらうか。




残念ながら、そうした啓発を進めても、おそらくいじめはなくならない。それでも、ネット巡回などに使う予算があるのなら、いじめの専門家に県内の学校を巡回してもらい、他者をいじめることの愚かさを説いてもらったほうがマシだと思う。




(谷川茂)