そして、結局は1点しか取れなかった攻撃については、どうしても香川と本田ばかりを注目してしまい、その香川と本田のパフォーマンスとか連携とか、そこにばかり攻撃の良し悪しの理由を求めてしまいがちなのですが、実際には、ザックジャパンの攻撃の良し悪しというのは、1トップの選手のパフォーマンス、そこも重要な要素で、前半はボランチや最終ラインの選手からハーフナーに出されたパスはほとんど無く、また、2列目の3人からハーフナーへのパスというのも、センタリングを除いたら、前半終了間際の清武からのパス、その1本だけしかありませんでした。

「3−0」、「6−0」、と快勝したオマーン戦とヨルダン戦。その時の攻撃を牽引したのは前田と本田だった訳ですが、特にそこから大きくパフォーマンスを落としてきているのが、1トップのところですね。オーストラリア戦、ベネズエラ戦、1トップでスタメンだった前田が、オマーン戦やヨルダン戦のようなパフォーマンスを発揮できず、ベネズエラ戦では本田を1トップに上げるという事もやったぐらいでした。そして、この試合のハーフナーも、得点は取りましたが、起点という部分では、ほとんど仕事ができていませんでした。

但し、それは、ハーフナーの動き出しに良さがあまり無かった、ボールを受ける動きにあまり良さが無かった、という事だけが原因ではなく、チーム全体としても、ハーフナーを積極的に使おうという気が無かった、そこも大きな原因だったと思います。後半になってからやっと、ボランチや最終ラインの選手からもハーフナーにパスが出されるようになって、また、ハーフナーと岡崎でワンツー、というプレーも見られるようになりましたが、前半の攻撃の組み立ての時のハーフナーの使わなさぶりは半端なかったですね。

無視されてるのか? ていうぐらい、中盤の5人だけでパスを回して攻撃していました。そもそも、本田はあまり1トップの選手とはパス交換しない傾向にあるのですが、前田との時も、その1トップの前田とトップ下の本田は、重ならないように楔のパスを受ける、という連携をやっていて、ただ本田は下がってボランチの近くでもプレーしなければなりませんから、その場合には1トップの選手が、中央の最前線やバイタルエリア、もしくは、サイドの高い位置、そこで起点となる必要があり、それが無かった事が、攻撃が機能しなかった一番の理由だったと思います。

1トップがそうやって起点となってくれれば、2列目の選手が前を向いてプレーできるようになりますし、相手DFラインを引き下げる事でバイタルエリアにスペースを作り出せますし、相手の守備を中央に引き付ける事でサイドにスペースを作り出せますし、という事ですよね。従って、攻撃面の改善点としては、1トップの選手がもっと高いパフォーマンスを発揮する、という事が1つと、それと同時にもう1つには、もっと全体として、攻撃の組み立ての時に1トップの選手を意識して使う、時には2列目を飛ばしてボランチや最終ラインから1トップの選手に楔のパスを入れる、という事ですね。

本田と香川、それから、清武。その2列目の選手に、どうしてもまずはボールを渡してしまう、というのは分からなくもないですが、しかし、そればかりだと展開が詰まってしまいますし、また、詰まってしまわないように2列目と3列目の間を空ける、という事をしてしまうと、全体的に間延びしてしまう事になりますから、そうならないためにも、もっと1トップの選手を攻撃の組み立ての時に使う、という事が必要だと思います。

後は、2列目の選手でも3列目の選手でも、SBの選手でも、前を追い越して相手のDFラインの裏でボールを受ける、そういう起点の作り方が必要だと思います。岡崎が入ってから、岡崎がそういうプレーをするようになってから、それによって攻撃が活性化されて得点も生まれましたので、特に、香川、本田、清武、長谷部、彼らにもそういうプレーをやって欲しいですね。足下でボールを受けたがる選手が多いから、とは言っても、彼らはやろうと思えば、DFラインの裏へ走ってボールを受ける、そういうプレーもできる選手たちだと思います。