中国・天安門事件で「1人も死なずにすんだ」…元北京市長が回顧録
1989年6月に起きた天安門事件当時の北京市長で、汚職事件で失脚した陳希同氏(82歳)の回顧録がこのほど香港で出版された。陳氏は天安門事件について「適切に処理していれば1人も死ぬことはなかった」などと語っている。香港各紙や英BBC放送(中国語電子版)などが伝えた。
回顧録は、党中央農村政策研究室の元研究員の姚監復氏(80歳)が、2011年1月から10数回行った陳氏との会談内容をまとめたもの。姚氏はかつて、天安門事件で失脚した趙紫陽・元党総書記らのブレーンを務めていた。
天安門事件をめぐっては、当時北京市長だった陳氏が、最高実力者のトウ小平氏に現場の状況を誇張して報告したことが武力弾圧につながったといわれてきたが、陳氏はこれを否定。自らが「戒厳司令部の総指揮」だったという指摘も否定した。
事件について「適切に処理していれば、1人も死ぬことはなかった」、「あの日何百人もの死者を出したことは、市長としてつらい」と語った。
陳氏が89年6月30日の全国人民代表大会常務委員会で行った報告は、最高指導部から渡された原稿を一字一句違えずに読み上げたものだったと述べた。これは天安門事件について中国当局が唯一発表した公式報告で、事件を「反革命暴乱」と定義している。
陳氏は天安門事件後の92年に北京市トップの党委員会書記に昇格したが、95年に汚職事件で失脚し、98年に懲役16年の有罪判決を受けた。2004年から病気治療のため保釈されている。陳氏は汚職についても否定した。
天安門事件から今年で23年になるが、中国政府は関連文書を公開しておらず、事件について論じることも禁じている。当局は「あの騒動についてはとうに明確な結論が出ている」としている。
回顧録をまとめた姚氏は、天安門事件が近いうちに再評価されることはないとみている。事件の評価が覆れば、天安門事件のおかげで政権の座に就いた江沢民・前国家主席も、現指導部を含め江氏が指名した後継者も、正統性を失うからというのが理由だ。(編集担当:阪本佳代)
