北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の金正日総書記が死去したことにより、北朝鮮情勢に大きな変化が起きるのではないかと言われている。日本は北朝鮮との間に拉致問題や核・ミサイル問題などの難題を抱えている。これを機に、膠着した日朝関係に変化は訪れるのだろうか。朝鮮半島情勢に詳しい『コリア・レポート』の辺真一編集長に、今後考えられる北朝鮮の動向や、日本がとるべき対応について聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)


ピョン・ジンイル/1947年生まれ。東京都出身。明治学院大学卒。北朝鮮情勢に詳しいジャーナリスト。朝鮮半島専門誌『コリア・レポート』編集長。北朝鮮問題のコメンテーターとして、テレビや雑誌などのメディアでも活躍。著書に『北朝鮮100の新常識』、訳書に『北朝鮮潜水艦ゲリラ事件』などがある。

――北朝鮮の金正日総書記が死去したことにより、北朝鮮情勢に大きな変化が起きるのではないかと言われている。日本は北朝鮮との間に拉致問題や核・ミサイル問題などの難題を抱えているが、これを機に、膠着した日朝関係に変化は訪れるのだろうか。

 拉致問題や核・ミサイル問題は、並行して取り組みが進められなければならないが、まずは日本としては、拉致問題を早期に解決することが必要だ。核・ミサイル問題は、北朝鮮が米国を相手にしているので、米国に任すほかない。

 私は、残念ながら今後の拉致問題の行方を悲観的に見ている。結局この10年間、拉致問題は何も進展してこなかった。2002年の小泉訪朝時に拉致を正式に認めた金正日が死亡したことによって、拉致問題を解決する機会はますます遠のいたと思う。

 一部には、「後継の金正恩は拉致問題に手を染めていないので、フリーハンドで交渉できるのではないか」という声もあるが、儒教の感覚で言えば、息子が父をスケープゴートにすることはあり得ない。金正日は父親である金日成の路線をそのまま引き継いできた。3代目の正恩も、それと全く同じ路線を踏襲するはずだ。後継者を世襲にしたのもそのためだ。

 もちろん、日本や韓国の拉致被害者を全員帰国させれば、日韓から経済支援を取り付けられるというメリットはある。しかし、仮に正恩が拉致問題の解決の必要性を感じたとしても、彼は父親と違って、権力基盤が脆弱で独断できない。

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