これまで6度に渡るWECの試合で、ほとんど寝技の展開を見せていない王者ジョゼ・アルド

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24日(土・現地時間)にカリフォルニア州サクラメント、ARCOアリーナで開催されるWEC48「ALDO vs FABER」。WEC初のPPVイベントは、その名の通りWEC世界フェザー級王座返り咲きを賭けて、地元でユライア・フェイバーが、王者ジョゼ・アルドに挑戦する。

アルドは08年6月にWEC初参戦を果たして以来、5連勝で昨年11月18日にフェザー級王者マイク・ブラウンに挑戦。2R1分20秒という短時間で、バックマウントからパンチを連打し王座を奪取している。

ブラジリアン柔術黒帯のアルドだが、飛び抜けた打撃センスでグラウンド戦を殆ど見せることなく、WEC通算6勝を挙げ王座に就いた。そのアルドは、高い KO率を誇るものの、決して動きが激しいファイターというわけではない。相手を観察しながら戦い、ほんの僅かでも勝利への突破口を見つけると、傷口を広げるように怒涛の追い込みを掛ける。

その追い込みが1Rにやってくるのか、2Rにやってくるのかで試合時間に違いはでるが、追い込みからの勝利は一瞬で、どの試合も変化はない。その手負いの対戦相手を仕留める姿は、まるで野生の肉食動物の狩りを思わせるものがある。

そんなアルドに対し、地元サクラメントの大観衆の声援を背にして戦うユライアは、08年11月に同王座を失った以降も、その認知度&人気はダントツで、今もWECを引っ張り続けるエースだ。

昨年6月にも地元で王座奪回のチャンスを与えられたが、このときは試合開始早々に右拳を骨折。「俺の武器がいっちゃって」と試合後にコメントしたように、その後は左手と右エルボーだけを使って5Rを戦い抜いぬくも判定負けを喫した。

骨折してなおもアグレッシブに戦い続け、時には右パンチを使い、痛みに腕を振るうシーンも見られるなど、そのダイハード振りでさらにファンの支持を集めるようになったユライア。地元サクラメントのメルセデス・ディーラーから、スポンサードとしてメルセデスSLを手にするなど、その人気はMMAの枠を越えようとしている。

ただし、ケージのなかは純粋実力社会、地元の利がいくらあるといっても、アルド有利の声は多い。とにかくアルドはWEC出場以来、一度としてピンチらしいピンチに追い込まれたことがない。ユライアの武器はフィジカル+スピードだが、そのアグレッシブさを突かれる危険性は十分に高い。

米国ではいち早くムエタイを取り入れ、前蹴りで距離を計り、パンチを繰り出すユライアだが、今回の試合は可能な限り打撃戦を少なくし、テイクダウンからグラウンド戦に持ち込みたい。

アルドは前述したように柔術黒帯、名門ノヴァウニオンに所属しており、寝技にも穴があるわけではない。ただ、強すぎるが故に実戦ではグラウンドの展開が極めて少なく、WECに出場してからは一度もキャンバスに背をつけたことがないだけだ。

いくらノヴァで、マルロン・サンドロやヘナン・バラォン、ホニ・トーレスらと寝技のスパーリングを積んでいるといっても、トレーニングはトレーニング。まさか練習相手が本気でエルボーやパウンドを落とすわけでもない。つまり、茶帯柔術時代に、あのフーベンス・シャーレス・コブリーニャを下しているアルドとはいえ、実戦での寝技の経験値はかなり低くなったといわざるをえない。

仮に試合開始早々、ユライアがKO狙いのような迫力で、打撃からテイクダウンに持ち込み、矢のようなパウンドを落とす展開に持ち込むことができれば、アルドがグラウンドの感覚を思い出す間もなく勝負を決めることができるかもしれない。

また、ユライアはこれまで2度、5Rを経験しているが、アルドは3度ある3R判定がキャリア最長試合時間になり、本当の意味での長丁場を経験していない。とはいってもユライアが時間を掛けて、アルドを攻略しようなどと思えば、試合中に相手の欠点を探し出すことに長けた王者にとって有利に働くだけだ。