極めて地味なマーティン・カンプマン、スカンジナビアで行なわれていたパウンド無しのアマチュア・シュートファイティングからUFC世界王者目前まで上り詰めた

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19日(土・現地時間)にテキサス州ダラスのアメリカンエアラインズ・センターで行なわれるUFC103『Franklin vs Belfort』。元々のメインでリッチ・フランクリンとはダン・ヘンダーソンの対決とされていたが、8月のアフリクション崩壊により、ヴィトー・ベウフォートが4年7カ月に復帰、メインでフランクリンと対戦することとなった。メインに変更があった影響でもないだろうが、当大会では当初予定されたカードから多くの変更点が見られる。

まず、次期ウェルター級挑戦者決定戦と目されていたマーティン・カンプマン×マイク・スウィック戦は、スウィックの負傷欠場で、カンプマンは英国を代表するウェルター級ファイターのポール・デイリーと対戦することとなった。

一時カンプマンは不出場となり、デイリーがブライアン・フォスターと対戦するプランもあったが、結局デイリー×カンプマン戦がまとまったため、フォスターはリック・ストーリーとのマッチアップが決定している。

この他にもハファエル・ドスアンジョスと対戦予定だったマット・ワイマンも負傷欠場、ロブ・エマーソンがオープニングファイトのドスアンジョス戦に挑むことに。このように変更を繰り返した結果、今大会は近年のUFCでは例を見ない13試合が行なわれることとなった。

「いつだって決定した対戦カードから、ファイターが欠場することは厳しいけど、そういう事態が毎大会のように起こるものだと理解している。だから1〜2試合が実現不可能となっても、11試合ぐらいファンが楽しめるようにラインナップを考えているんだ。それがファイト・ビジネスってもんだよ。編成上、登用できなかったファイターが代役とはいえ、出場できる良い機会を与えることができると捉えているよ」とは、UFCマッチメイカー=ジョー・シルバのコメントだ。ナンバーワン・プロモーションを司る身の余裕ある発言ととれる。

実際、同大会ではライト級のチアゴ・タバレスも欠場となり、彼と対戦するはずだったジム・ミラーは、UFCデビュー戦となるスティーブ・ロペスと対戦。アフリクションからの移籍組対決ダン・ローゾン×ハファエロ・オリベイラ戦も、ローゾンの負傷欠場により、オリベイラはニック・レンツと対戦するなど、大幅に出場選手が入れ替わった。

ミラーと対戦するロペスは、MMAキャリアは12勝1敗。オリベイラの対戦相手レンツも16勝3敗1分という堂々とした戦績を残しており、UFC出場の資格は十分にあるファイターたちだ。この代役出場という機会がなければ、いつオクタゴンに上がることができたか分からない。このチャンスをモノしたことで、彼らが明日のスターダムに上がることも十分に考えられる。

それはロペスやレンツよりも、知名度の高いデイリーにとっても当てはまることだ。コアMMAファンの間では、ロペスやレンツと比較し、ネームバリューがあり、恐らくは実力も備えているだろうデイリー。ただし、UFCファンの大半は、彼がストライクフォースでドゥエイン・ラドウィックにKO勝ちし、エリートXCではジェイク・シールズが持つ世界ウェルター級王座に挑戦し、予想以上の善戦を見せたことを知らず、その意味合いも理解していない。

彼が英国を皮切りに日本、カナダ、スロベニアで積んできたキャリアは、スウィックの代役という期待値の高いマッチメイクが用意されたことで、リセットされることになったが、これからはUFCファンの前で、さらにはカンプマン戦でどのような試合を見せるかで将来を切り開く必要がある。

英国ケージレイジ時代、試合中に親指を脱臼し、指がよからぬ方向を向いてしまっているのに、ファイト続行を訴えたファイティング・スピリッツの持ち主デイリーだが、実際問題としてUFCウェルター級では、体が小さい。元はライト級で実績を積み、階級を上げた彼に対し、カンプマンやスウィック、ジョン・フィッチ、ジョシュ・コスチェックというUFCウェルター級ファイターは、ミドル級やライトヘビー級から階級を落としてきた者ばかりだ。