代表初ゴールにも笑顔を見せなかった塩貝(C)Norio ROKUKAWA/office La Strada

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【藤江直人のフットボール縦横無尽】

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 なかなか切り出せる質問ではない。

 PK戦にもつれ込んだエクアドル代表とのキリンカップ準決勝(10月1日)を5-4で制した余韻が残る取材エリア。後半41分から途中出場していた21歳のFW塩貝健人が、こんな言葉を残している。

「試合後に森保さんに『俺、PKが下手そうに見えますか』と聞きました」

 日本は上田綺世を皮切りに鎌田大地、伊藤洋輝、相馬勇紀、前田大然の5人がすべて成功。7番手でスタンバイしていた塩貝に出番は訪れなかった。

「PKは外した記憶がないです。なので、蹴りたかったですね」

 自信があった塩貝は7番手となった意図を指揮官に確認した。キッカーと順番は中村俊輔コーチが決めていたなかで、森保監督からこう返されたという。

「俊輔さんにアピールしろと言われたので。アピールできるように頑張ります」

 北中米W杯後で初めての活動となる国際Aマッチ4連戦。初戦だった9月24日のウルグアイ代表戦で、塩貝は1-1で迎えた後半アディショナルタイムに出場4試合目にして待望の代表初ゴールをゲット。森保ジャパンを勝利に導いた。

 試合後に「僕はこの1点で満足するような場所を目指しているわけではない」と前置きした塩貝は、以心伝心のワンツーで自身のゴールをアシストした実績十分の上田を「ライバル」だと断言。ひと呼吸置いてこんな言葉を紡いでいる。

「……僕はライバルだと思っている上田選手が、直後に日本の3点目を決めても涼しい表情をしていた。その意味でも喜んでいる場合じゃない、と」

 メディアを介してギラギラする思いをぶつけられた上田は、胸中に抱くさまざまな思いを忌憚なく言葉に変換し続ける塩貝に理解を示して歓迎した。

「日本人選手は僕も含めてそんなに(闘争心を)表に出すタイプじゃないし、もしかしたらそれがよしとされている文化があるのかもしれない。でも逆に海外の若手選手だったら、当たり前のようにギラギラしている選手がいる。それが日本ではあの(塩貝の)ように、よくも悪くも目立ってしまうんですけど」

 弱肉強食のヨーロッパを生き抜き、ステップアップを続けていくために必要不可欠なメンタルを塩貝はもちあわせていると指摘した上田はこう続けた。

「彼は彼なりにいろいろと考えて振る舞っていると思う。サッカーに対しては本当にピュアで、自分が成長するためにあらゆるものを吸収しようとしている」

 W杯北中米大会期間中の一件が、塩貝の名前を世界中に知らしめた。

 ブラジル代表とのラウンド32の直前に、塩貝は日本のメディアに対して「彼はもう昔のネイマールではない」や「(ブラジルは)昔はすごく強かったけど、いまはどうなんですかね」などと歯に衣着せないコメントを連発した。

 これがポルトガル語に訳されてブラジルのメディアでも報じられ、相手選手たちやブラジル国民を激怒させた。さらに日本が後半終了間際に喫した決勝ゴールで敗退する一因にもなったとして、SNSを通じて日本人からも批判された。

初ゴール後に“黙れ”パフォーマンス

 さらに所属するブンデスリーガのヴォルフスブルクが今シーズンから2部へ降格し、塩貝自身も無得点が続いている。それでも第3次森保ジャパンが船出する今シリーズに招集された件に対しても心ない言葉が届けられた。

「僕自身は全然気にしていなかったですけど、身近で僕を支えてくれた家族や親戚はブラジル戦の後などはすごく気にしていたし、それが一番悔しかった」

 こんな思いを抱く塩貝の答えが、初ゴール後のパフォーマンスだった。右手人差し指を口元に当てて"黙れ"と伝えた意味を、このように語っている。

「僕もすごく悔しい思いで過ごしてきたので、そのなかで僕のあのゴールで黙らせる……黙らせるというわけじゃないですけど、そんな意味がありました」

 当然ながら"黙れ"パフォーマンスも批判された。それでも塩貝は続ける。

「僕のスタイル的に結果が出ないと批判が多くなるのはわかりますけど、それはトップトップに行く上でつき物だし、僕自身、このスタイルを変えるつもりはない。結果が出ていなくても目標を常に高く持って、自分の思いを言い続けたい」

 組織や常識という枠からはみ出そうになると、決まって同調圧力が作用したかのような状況が生まれ、批判などを介して抑え込まれる風潮が日本にはある。

 塩貝が指揮官にPK戦の順番を確認したのも、絶対的な結果を残すエーストライカーを一方的にライバル視したのも、もしかすると枠からはみ出す行為に映るかもしれない。 それでもすべてを一緒くたにして封じ込めてしまえば、スケールの大きな選手は生まれない。何よりも塩貝の言動を先輩選手たちが認めている。

 たとえば後半38分から途中出場したウルグアイ戦で決勝ゴールを決める前に、塩貝は単独突破を図り過ぎて相手ゴール前で潰されるシーンが2度続いた。

「ゴール、ゴールと思うとボールしか見えなくなる。実際、両方の場面で僕には周囲が見えていなかった。味方を使わなかったというより、ボールウォッチャーになり過ぎて周囲を使えなかった、という表現が正しいと思っている」

 試合後に名波浩、長谷部誠両コーチから意図を確認されたプレーを素直に反省。直後に周囲を使い、自身のゴールへとつなげたプレーを、上田も「考えながら冷静に判断していた」と称賛しながらも、こんな言葉を続けている。

「アスリートとしての思考力はものすごく高いと僕は勝手に思っている」

 いわゆるビッグマウスはあえて退路を断ち、いい意味で自らにプレッシャーをかける。

 日本代表に久々に現れたメンタルモンスターは、ピッチ上でのパフォーマンスをさらに追いつかせるべく、静かに爪を研いで次なるゴールを狙っている。

(藤江直人/ノンフィクションライター)