【櫛田 泉】内田梨瑚は27年、川村葉音は30年か…「凶悪事件を起こした女」たちが集まる「女子刑務所」の実態
判決を不服とした男性が乱入
「こんな判決おかしいだろうが! 死刑か無期やろうが、それが国民の声や! 27年なんて生ぬるいこと言ってんじゃねぇよ!」
そう叫びながら法廷に乱入したのは、自称・福岡県北九州市在住、48歳の男だった。
2026年6月22日、旭川地裁では、事件当時17歳だった女子高校生・A子さんを殺害した罪などに問われた内田梨瑚受刑者(裁判当時23歳)の裁判員裁判が開かれていた。男は、突然法廷内に入り込み、冒頭の言葉を大声で叫びながら暴れたという。
男は裁判所職員に取り押さえられ、その後、駆けつけた警察官に建造物侵入容疑で現行犯逮捕された。
内田受刑者に懲役27年の実刑判決が言い渡された直後の出来事だった。
「この男の裁判は2026年9月11日に旭川地裁で開かれ、即日結審。9月29日に拘禁刑2年、保護観察付執行猶予5年が言い渡されました」(裁判傍聴ライター)
男は裁判で「事件の被害者の無念を晴らすことだけを考えていた」と証言していた。
「この乱入騒ぎで、内田受刑者の判決公判は一時中断されるなどトラブルもありました。判決後、誰もが控訴するものと考えていましたが、7月6日の控訴期限までに弁護側、検察側ともに控訴はありませんでした。そのため、内田受刑者の懲役27年の刑が確定、女子刑務所に収監されることになりました。弁護側によると、内田受刑者は判決について納得していて、控訴しなかったのは本人の意思によるものだそうです」(前出の傍聴ライター)
あまりにも残忍なこの事件は全国的に注目されていた--。
A子さんとの面識はなかった
事件について振り返りたい。被害者となった留萌市在住のA子さんは内田受刑者との面識はなく、事件の日に初めて知り合ったとされる。
「2024年4月18日夜、A子さんがSNSに内田受刑者の動画を無断で投稿したことが事件の発端とされています。動画を撮影したのは内田受刑者と顔見知りだった当時16歳の少女。この少女とA子さんが繋がっていた。内田受刑者は自分の画像が投稿されていることを知り激怒、A子さんに連絡をするように指示をしたそうです」(地元紙社会部記者)
A子さんは謝罪するも内田受刑者は聞き入れず、それどころか金品を要求してきた。A子さんを留萌市内の道の駅に呼び出すと、軽自動車に乗せ、旭川市内に向かった。途中のコンビニでA子さんは助けを求めたが、救いの手が差し伸べられることはなかった。
そして、A子さんは切り立った渓谷で有名な旭川市の景勝地、『神居古潭(カムイコタン)』に連れてこられた。衣服を脱がされ、暴行、土下座、脅迫などの「制裁」を受け、最後は石狩川にかかる神居大橋から転落させられた--。当日は、小雨が降っており、気温は10度未満。4月とはいえ冬の寒さが残っていた。さらに、内田受刑者と地元警察官との不適切な関係が報じられると、世間は再び驚愕した。
2025年3月には、実行犯の一人である女(当時19歳)の裁判が行われ、懲役23年の実刑判決が言い渡された。この裁判では内田受刑者が証人として出廷するも、宣誓を拒否する異例の事態も起きた。
そして、内田受刑者の裁判では、「殺意はなく自分は橋から突き落としていない」と容疑を一貫して否認。一方で、公判中には被害者の母親の供述調書が公開され、「私の一番の願いは娘を生きて帰してもらいたいということ。しかし、その願いは叶いません。そうである以上、犯人には極刑を望みます」と遺族の切実な思いも明らかにされた。
裁判所は「被害者を逃げ場のない状況まで追い込み、転落・死亡させた一連の行為全体が殺人の実行行為に当たる」と認定し、求刑どおりの懲役27年を言い渡した。
内田受刑者は控訴せず、実刑が確定した。これからどのような受刑生活を送ることになるのだろうか。
北海道の刑務所ならではの工夫
日本国内には、現在、8カ所の女子刑務所があり、そのいずれかに収監される。地元である、北海道の女子刑務所で受刑生活を送っている可能性も十分に考えられる。
北海道の女子刑務所とは、いったいどのようなものなのか。
「北海道の女子刑務所がある札幌刑務支所は2006年(平成18年)築なので、ほかの女子刑務所と比べて新しめの施設となっていることが特徴です」
このように語るのは、国内の女子刑務所に勤務経験のある元刑務官だ。
「北海道は、寒さが厳しく雪の影響があるため、冬はほかの施設と比べて暖かく過ごせると思います。というのも、例えば本州以南の施設だと、工場に行く際には屋外の渡り廊下を通ることになりますが、北海道では雪対策のため、工場には屋内の通路が通じているなど、移動が屋内で完結できるようになっています」(元刑務官、以下「」も)
収監先であっても、北海道ならではの工夫が施されているようだ。
実際に収監されてからは、どのような刑務所生活を送るのだろうか。
「基本的な過ごし方は、全国で大きな差はありません」
元刑務官は次のように一日の流れを説明する。
「午前6時30分に刑務官の『起床』という号令で1日が始まります。
受刑者は速やかに起き上がり寝具を整理。着替え、洗面、歯磨きなどを済ませて居室の前に整列し、点呼をします。点呼後に居室の清掃をするんです。
特に雑居房では、限られた掃除用具を使い、決められた時間内に効率よく清掃を完了させる必要がありますが、この時間を守れなかったり清掃を怠ったりすると『規律違反』として処分の対象となります。
朝食は午前7時ころから約30分間。食事は基本的には同じ房の受刑者そろって食べます。時間も厳格に決められていて、昼は正午から約20分ほど、夜は午後5時から約30分間です。基本的に間食の時間はありません。
食事のメニューは基本的には、ごはん、みそ汁、漬物、副菜といった和食が多いですが、パンや洋食、中華がでることもあります。
食事を終え食器を下げた後となる午前7時40分ころから、各工場に出業していきます」
作業で月数千円の収入がある
刑務所作業には4つの種類があるという。代表的なものが生産作業と自営作業だ。
「生産作業は、女子刑務所の場合は、洋裁のほかレストランで使用する紙エプロンを折る紙折り作業などがあります。一方の自営作業は、刑務所の運営にかかわる作業で、受刑者の生活に欠かせない、洗濯、炊事、清掃などを行うものになります。ほかには、職業訓練で資格を取ることを目的とした作業もあります」
こうした作業の対価として、受刑者には作業報奨金が支給される。金額は10段階に分けられ、等工に応じてもらえる額が異なる。1時間当たりの報奨金は6円前後から40円前後とされており、月数千円程度が支払われることになる。
「受刑生活では、受刑者が刑務所に持ち込める私物はほぼありません。差し入れ本が唯一の私物と言ってもよいレベルと思います。
刑務所では、服については居室着、工場着、パジャマの3種類が貸与されますし、チリ紙や石鹼など最低限必要なものは支給されます。しかし、支給品は粗悪なので、作業報奨金の中から私物の日用品を購入する受刑者もいます」
無期懲役などになった場合でも、刑務所内の工場で働き、刑務所の規律に則って規則正しい生活を送ることになる。若くして重大事件を起こした内田受刑者らも同様だ。
「札幌刑務支所の場合は、窃盗と薬物で有罪判決を受けた受刑者が全体の7割ほどを占めており、薬物犯の方が若干多い印象です。薬物は主に覚せい剤になります。
特に薬物犯は、依存性が高いことから更生が難しい印象があり、高齢になって再び刑務所に戻ってくるようなケースもみられました」
さらに札幌刑務支所には「女子拘置所」としての役割がある。
刑務所内は社会の縮図
札幌地裁で裁判を受ける女性の被告人たちは、女子拘置所も兼ねている札幌刑務支所に収容されることになるのである。
「すすきの首狩り事件」(2023年7月・札幌市)の田村瑠奈被告(32歳)、「大学生強盗致死事件」(2024年10月・江別市)の川村葉音被告(21歳)と八木原亜麻被告(21歳)……近年、北海道で重大事件を起こしたこの3人の女性被告人はいずれも札幌刑務支所に収容されているものとみられている。
田村被告については、精神鑑定が行われたものの、未だ裁判が開かれる見通しはない。一方の川村被告は、7月9日に一審判決で懲役30年が言いわたされており、八木原被告についても今後、裁判が開かれる見通しだ。
彼女たちも、刑が確定した場合には、内田受刑者同様女子刑務所に収監されることになる。
「状況によっては内田受刑者と川村被告、八木原被告、田村被告が同じ刑務所内で一緒に服役する可能性も十分に考えられます」
とはいえ、これまで”娑婆での生活”を謳歌していた彼女らが、高齢の薬物犯や凶悪犯罪を犯した年上の受刑者の中で順応し、受刑生活を全うすることは可能なのだろうか。
「刑務所の中は社会の縮図なので、これまでのように調子にのるようなことがあれば、嫌われていじめの対象となるでしょう。こうした構図は一般社会でも刑務所でも同じだと考えています。ただし、刑務所では、受刑者がそうした態度をとらないように規律や秩序が厳しく決められていますし、そうならないように刑務官が常に目を光らせていて注意や指示を出しています。
精神や身体上の一般的な処遇が難しい場合には、工場に出ずに居室内で紙折りなどの軽作業をして過ごすこともあります」
また、一般的に実刑判決が確定してすぐに刑務所に収監されるわけではないという。
刑期満了前に“シャバ”に出られる可能性もある
「判決を言い渡されてから控訴をしなければ2週間後に刑が確定しますが、刑が確定してすぐに刑務所に収監されるわけではありません。各刑務所の収容区分に応じてどこの刑務所に送るのかを決めなくてはいけないので、その間、受刑者は居室内で紙折りなどの軽作業をして、刑務所に移送される日を待つことになります。
刑務所への移送については、前日まで本人には知らされませんし、移送先も当日まで本人には知らせません」
これから27年の受刑生活に入る内田受刑者であるが、この期間をずっと刑務所の中で必ず過ごすわけではない。
有期刑の受刑者については刑期の3分の1を経過した時点、すなわち受刑生活が9年を経過した時点で仮釈放の可能性が出てくることになる。
仮釈放が認められるかどうかについては、受刑態度、帰住先の有無、被害者の感情を総合的に判断して認められるというが、犯罪白書によると2011年(平成23年)から仮釈放率は上昇に転じており、特に2023年(令和5年)には女性受刑者の仮釈放率は77.5%に上っている。
これからの受刑態度などによっては、刑期満了を待たずに刑務所の外で生活を送ることになる。
とはいえ、内田受刑者や川村被告らはいずれも20代前半。少なくとも10年以上を刑務所の中で過ごすことになる。夢を追い、仕事に打ち込み、恋愛や結婚、出産など、それぞれの人生を築いていくはずだった若い時期の多くを失うことになるのだ。
そして服役期間は、ただ刑に服するだけの時間ではない。自らの罪とどう向き合い、被害者に何をしたのかを考え続け、いかに更生していくのかが問われる時間でもある。
だが、彼女たちがどれほど後悔し、嘆いたとしても、奪われた命が戻ることは決してないのだ。
【関連記事】『ススキノ首切り事件から3年 --「瑠奈ファーストだった」田村修被告が瑠奈誕生前に元同僚に語っていた「意外な言葉」』をさらに読む
【関連記事を読む】ススキノ首切り事件から3年 --「瑠奈ファーストだった」田村修被告が瑠奈誕生前に元同僚に語っていた「意外な言葉」
