【大木奈 ハル子】「安易な田舎移住は危ない」夫妻で6畳1Kに住むライターが老後こそ「都心・駅近・狭小暮らし」を勧める4つの理由

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東京都心の築50年超のマンションで、定年退職した夫と私、中型犬と暮らしています。家の広さは25㎡・6畳1Kです。

国土交通省の「最低居住面積水準」は、単身者なら25㎡、2人世帯なら30㎡。つまり、私たちの家は、単身者の最低居住面積水準と同じ広さしかありません。そんな家で、定年退職した夫婦が犬と暮らしています。

「せっかく定年退職したんだから、都会の喧騒から離れて、老後は田舎でゆったり暮らしたい」と思われるかもしれません。実は私たちも、同じように考えていました。

【著者近刊の内容紹介】

10年間で引越5回。わが家が狭くなるたびに、暮らしに心地よい風が吹くようになった。

85㎡→50㎡→30㎡→25㎡。

住み替えるたびに、暮らしの満足度は大きくなっていった。

本当に大切なものがわかったから。

長年出番を待ち続けるだけの「2軍」の道具たちにグッバイ、でも趣味のあれこれは最優先で「1軍」ベンチ入り。

転勤や取り壊し、病気だって何のその。誰でもできる快適な暮らしのコツを写真満載でご紹介。

かつては田舎移住を綿密に計画

定年後のセカンドライフは、田舎に移住するつもりでした。

『人生の楽園』(テレビ朝日系)を眺めて、「こんな暮らし、いいなぁ」と思うような、漠然とした憧れではありません。夫が59歳になった2021年頃から、図書館で田舎暮らしの本を借り、移住相談会にも足を運びました。

「まずは、郊外のクラインガルテン(農園付きの貸別荘)で1~2年暮らして、土地に馴染めそうなら移住しよう」

具体的なプランも決まり、資料を取り寄せるところまで進んでいました。「いつか田舎で暮らせたらいいね」ではなく、かなり具体的に計画していたのです。

一転、銀座徒歩圏内の築50年超・6畳1Kに

ところが、2022年に夫が病気になり、その計画は頓挫しました。

多臓器への転移があるステージ4の胃がん。継続的な抗がん剤治療が必要になり、体調が急変すれば入院になる。そんな夫との暮らしで選んだのは、田舎ではなく、都心の駅近にある古くて狭いマンションでした。

2024年に退職金と貯金をはたいて、病院にほど近い、銀座徒歩圏内の築50年超・6畳1Kの中古マンションを購入。リフォーム代を節約するため、1人でDIYに励んだのち、2025年夏に引っ越しました。

部屋は狭く、家庭菜園ができる庭もありません。でも、そんな暮らしを嘆いているわけではありません。病院へは乗り換えなしで通えるし、徒歩圏内には、おいしい飲食店がいくつもある。天気のいい日はふらりと銀座まで歩いて、ギャラリーをのぞいたり、街をぶらぶらしたり。都会の恩恵を享受しています。

ここからは、実際に都心・駅近で暮らしてみてわかった、「老後に小さな家で都会暮らしをするメリット」を紹介します。

理由1 医療の選択肢が多い

夫が病気になってから、暮らす場所を選ぶうえで最優先した条件は、「病院が近いこと」です。

2週間に1度の抗がん剤治療や、体調を崩した際の入院を考えると、通院のしやすさは本人だけでなく、付き添う家族の負担も軽減します。今の家から病院までは、タクシーで10分ほど。電車でも乗り換えなしで数駅です。私が忙しい時でも、夫は1人でタクシーに乗って抗がん剤治療に通えます。

入院した際も、「ズボンの着替え持ってきて」とLINEが来れば、晴れた日は自転車を漕ぎ、雨の日は電車に飛び乗る。家を出てから1時間もしないうちに、病室に着いています。病院が近いことで、治療に費やす時間も、家族の負担も減らせます。

近い病院ならどこでもいいというわけではありません。医療体制や設備の整った大きな総合病院で、腫瘍内科の専門医に診察してもらいたい。総合病院なら、治療中に別の病気や体調不良が起きたときにも、同じ病院で相談できます。

また、医療機関が多い地域なら、治療方針などに応じて別の病院を探すという選択肢もあります。老後の住まいを考えるとき、「駅から徒歩何分」だけでなく、「必要になったとき、どんな医療にアクセスできるのか」まで考えておく。

夫の病気を経験して、病院へのアクセスは、単なる「便利さ」の問題ではなく、治療を受けながら、どういう毎日を送れるかにも関わると実感しました。

理由2 近場でアウトソーシングできる

25㎡の家に住んでみて実感したのが、家の外を使えば、家そのものはそれほど広くなくてもいいということでした。

わが家には、大きなソファもありません。その代わり、近所にはボックスシートのある喫茶店があります。ゆっくり会話を楽しみたいときは、夫婦でモーニングを食べに行きます。台所は狭く、冷蔵庫の食品ストックも少なめ。でも、徒歩数分の距離には営業時間の長いミニスーパーがあるし、安くておいしい飲食チェーンもたくさんあります。

「東京砂漠」なんて言われますが、わが家のまわりには大きな公園も多く、近隣のタワーマンションの公開空地も利用できます。散歩する場所にも困りません。家が小さくても、必要なものや楽しみを街にアウトソーシングできる。これも、都会暮らしのメリットだと思っています。

しかも、こうした便利さは、年齢を重ねるほどありがたくなります。

年を取れば、台所に立つのがおっくうになって、凝った料理を作る機会も減るかもしれません。そんなとき、家の近くにスーパーや飲食店があれば、食事の負担を減らせます。散歩だって、わざわざ車や電車で出かけなくていい。

家の中に全部そろっていなくても、家を出れば必要なものがある。意外と、それで不便はありません。

残る2つの理由は【後編記事】【老後こそ都心・駅近】85㎡→25㎡へダウンサイジングした夫婦が教える「狭くても豊かな暮らし」でご紹介します。

【後編を読む】【老後こそ都心・駅近】85㎡→25㎡へダウンサイジングした夫婦が教える「狭くても豊かな暮らし」