(※写真はイメージです/PIXTA)

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同じ親から生まれたきょうだいでも、さまざまな事情から疎遠となることもあると思います。しかし、そのようなきょうだいが「亡くなった」という連絡を受けたら…? そして、そのきょうだいが独身だったら、どんな対応が必要になるのでしょうか。残された家族が最初に確認すべきこと、そして相続放棄を検討する場合の注意点などについて見ていきましょう。司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏が解説します。

疎遠だった独身のきょうだいの「死の知らせ」に呆然

【相談事例】

ある日突然、警察関係者から「離れて暮らす独身の妹が亡くなった」との連絡が飛び込んできました。しかし、私と妹には過去に確執があったことから疎遠な関係で、10年ほど連絡を取っていませんでした。そのため、妹の暮らしぶりや財産状況はわかりません。連絡は受けたものの、これからどうしたらいいのか途方に暮れています。なお、私の両親はすでに亡くなっています。

(40代男性・東京都中野区)

事例の男性のような事態に直面したとき、多くの方は、驚きや戸惑いを覚えるだけでなく「手続きについて、どこから手をつければいいのか分からない」「借金があったらどうすればよいのか」といった不安を感じると思います。

しかし、ここで慌てて遺品整理に着手したり、預金を引き出したりすると、相続放棄に影響するリスクとなるため注意が必要です。

まずは、法律上の立場を確認し、慎重に手続きを進めることが大切なのです。

相続人としての立場を認識し、今後の対応を冷静に考える

今回の相談事例では、相談者は妹と2人きょうだいで、両親はすでに他界されています。兄と妹は10年も疎遠となっており、妹は独身で、子どももいないとのこと。話によると、妹は賃貸マンションでひとり暮らしをしており、ネット銀行などに財産がある可能性はあるものの、相談者は詳しい状況は把握していません。

いくら不仲で長年疎遠でも、きょうだいとしての法律上の相続関係が消えるわけではありません。妹に配偶者や子どもがおらず、両親もすでに亡くなっている場合は、兄が法定相続人となる可能性は高いでしょう。

相続人になるということは、預貯金や不動産といったプラスの財産を引き継ぐ可能性がある一方で、借金や未払い金などのマイナスの財産を引き継ぐ可能性もあるということです。

そのため、まずは自分がどのような立場に置かれているのかを確認する必要があります。

最初に行うべきは「死亡の事実確認」と「状況の確認」

きょうだいが亡くなったという連絡を受けたら、まずは死亡の事実と、亡くなった時期や場所を確認します。

具体的には「本当に亡くなっているのか」「いつ、どこで亡くなったのか」「遺体の引き取りの状況はどうなっているのか」「警察が介入しているのか」といった点を確認します。

特に孤独死の場合には、警察や自治体、賃貸物件の管理会社など、複数の関係者が関わっていることがあります。誰から連絡が来たのか、今後どのような対応が必要なのかを整理しておくことが大切です。

また、相続放棄を検討する場合には、期限にも注意しなければなりません。

相続放棄は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヵ月以内に、家庭裁判所へ申述する必要があります。

そのため「きょうだいが亡くなったことをいつ知ったのか」「相続人であることをいつ認識したのか」など、期限の起算点を明確にしておく必要があるのです。

相続人であることを前提に、安易な行動を避ける

きょうだいの死を知ったあとには「部屋を片付けなければ」「大家さんに連絡しなければ」「預金を確認しなければ」などと焦る気持ちがあるかもしれません。

しかし、相続関係や財産状況がわからない段階で、安易に財産を処分したり、預金を引き出したりすることは避けるべきです。

たとえば、次のような行為には注意が必要です。

●勝手に部屋を片付ける

●遺品を持ち出す・処分する

●預金を引き出す

●きょうだい名義の契約を独断で解約する

このような行為は、よかれと思って行ったとしても、状況によっては相続財産を処分したものと評価され、法律上「相続を単純承認した」とみなされる可能性があります。

単純承認とみなされた場合、原則として相続人はプラスの財産だけでなく、借金や未払い金などのマイナスの財産も引き継ぐことになります。あとから相続放棄をしたいと考えても、認められなくなる恐れがあるのです。

「やらなければ」という義務感のままに動くのではなく、まずは冷静に状況を確認することが重要です。

財産状況がわからない場合は「相続放棄」も検討

きょうだいの財産状況がまったくわからない場合には、相続放棄という選択肢を残せるよう、財産の処分を避けながら調査を進めることが大切です。

孤独死の場合、預貯金や不動産などの財産だけでなく、カードローン、消費者金融からの借入れ、クレジットカードの未払い、家賃や医療費の未払いなどが残されているケースが少なくなく、賃貸物件であれば、退去に伴う原状回復費用や、状況によっては特殊清掃費用などが問題になることもあります。

相続放棄をする場合は、原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。財産を調査しても期間内に判断できない場合は、期間内に家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てることもできます。

相続放棄の判断をするため「最低限の財産調査」を実施する

相続放棄するかどうかの判断には、きょうだいの財産と負債を最低限調査する必要があります。

確認すべきものとしては、預貯金通帳、郵便物、クレジットカードの明細、請求書、保険関係の書類などが挙げられます。

また、信用情報機関に対して情報開示を請求し、借入れやクレジット契約の有無を確認する方法もあります。

ただし、ここで明確に理解しておきたいのは、「調査」と「処分」は別の行為だということです。

通帳や郵便物を確認することと、預金を引き出して使うことは同じではありません。財産の内容を確認するだけであれば、通常は相続財産の処分にはあたりませんが、財産を売却したり、自分のものにしたりすると、単純承認とみなされるリスクがあります。

調査の過程で判断に迷う行為が出てきた場合には、実行する前に司法書士や弁護士などの専門家へ相談する方が安全です。

プラスの財産がありそうなら「限定承認」という方法も

調査を進めた結果、借金が残されている可能性がある一方で、預貯金や不動産などの財産もあることがわかるケースがあります。

このような場合には、相続放棄だけでなく「限定承認」も選択肢になります。

限定承認とは、相続によって得られるプラスの財産の範囲内で、被相続人の債務を弁済する制度です。相続財産を超えて、自分の財産から借金を返済する必要がなくなる点に特徴があります。

しかし、限定承認は、相続放棄や単純承認にくらべて手続きが複雑です。相続人全員で行う必要があり、財産や債務の清算、官報公告などの手続きも必要になります。

とはいえ、実務上は相続放棄が選択されるケースは多いですが、財産状況によっては限定承認が適している場合もあります。制度の利用を検討する際には、専門家に相談しながら判断することが望ましいでしょう。

賃貸マンションと遺品の扱いにも注意が必要

孤独死で最もトラブルとなるリスクが高いのは、賃貸物件に住んでいた場合です。

きょうだいが賃貸マンションでひとり暮らしをしていたとすると、相続手続きと並行して、賃貸物件や遺品の扱いも問題になります。

管理会社や大家からは「家賃の未払い」「原状回復費用」「特殊清掃費用」などを請求される可能性があります。

相続放棄をした人が、放棄時に相続財産を現に占有している場合は、次の相続人または相続財産清算人に引き渡すまで、その財産を保存する義務があります。ただし、相続放棄をした人すべてに、一律にこの義務が生じるわけではありません。賃貸物件への立入りや遺品の扱いについては、個別の状況を確認してから判断することが大切です。

当事者の方が、そのような事態に陥ることを恐れて司法書士等のもとへ駆け込むことも多く、そういった相談を受けた専門家は「手続きの期限の管理」「最低限の調査範囲の整理」「相続放棄の判断のアドバイス」等を行います。

最低限意識したい3つのポイント

当事者となった場合、最低限認識すべきは下記の3点です。

●焦って安易に動かない

●相続放棄について「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内に家庭裁判所に申述する」という期限を意識する

●財産を勝手に処分したり、預金を引き出したりするなど、単純承認とみなされる可能性のある行為を避ける

想定外の事態が発生したとき、順序を踏んで冷静に対応を進めるのは簡単ではありません。判断に迷う場合、リスクを回避したい場合は、早めに司法書士や弁護士などの専門家へ相談するのがお勧めです。

加陽 麻里布
司法書士法人永田町事務所 代表司法書士