【木田 トウセイ】「フジドラマ」壊滅?無双する「TBS」との間に生まれた決定的な差

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夏クールはフジドラマが壊滅状態に

夏クールの民放ドラマを振り返ってみると、フジテレビの苦戦が際立っていた--。

仲里依紗が連ドラ初主演を務め、実力派女優・のん、深川麻衣らが出演した、35歳になった地方出身女性のリアルな恋愛や人生模様を描いた『Tokyo middle 30』(水曜午後10時~)は、初回の世帯視聴率が3.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と低調なスタートを切ると、数字は下がる一方で、最終回は2.9%だった。

これだけでもかなりショッキングな数字だが、もっと深刻な問題はフジドラマの不振は同作だけに留まらなかったところだ。

28日が最終回の、カリスマアーティスト・GACKTが主演を務めるリーガルドラマ『ブラックトリック~裁きを操る弁護人~』(月曜午後9時~)、小池栄子が人情派の刑事役を演じた『さよならノワール』(火曜午後9時~)、9月17日に最終回を迎えた内田有紀とtimelesz・寺西拓人による大人のラブストーリー『ラストノート』(木曜午後10時~)などがいずれも低迷したのだ。

同じクールで1作も当たりがない。これはかなり珍しいことだろう。

対照的に夏クールのTBSドラマは絶好調だった。

第2シーズンを迎えた『VIVANT』(日曜午後9時~)は全話平均16.2%(第18話現在)という驚異的な視聴率を叩き出しているほか、SNSやレビューサイトでさまざまな議論や問題提起を生んだ、蒼井優主演の『Tシャツが乾くまで』(金曜午後10時~)は全話平均が7.4%で、最終回は9.3%という高い数字をマークした。

フジテレビも話題性のあるキャストを多数そろえ、斬新な企画や社会性のあるテーマを扱っていたにもかかわらず、なぜここまで差を付けられてしまったのか?

プロデューサーやディレクター、脚本家をはじめとした業界関係者たちに各作品が失敗した理由を聞いた。そこにはフジの企業体質や会社が置かれている現状が関与していた。

“共感”をさせなかった『Tシャツが乾くまで』との違い

「大失敗作になった『Tokyo middle 30』は“35歳女性のリアルな生きざま”というテーマ自体にあまりにも既視感がありすぎて、新鮮さを感じなかったことが原因だと思います」

このような辛辣なコメントを残したのは、キー局でプロデューサーを務めるベテラン社員のA氏だ。

「仕事や結婚の悩み、妊娠や出産、育児の葛藤、友情や恋愛のもつれ--。30代半ばの女性が直面する問題を並べれば、現代社会を捉えた作品に見えることは確か。ですが、今の視聴者はバカじゃない--。すでに過去のテレビドラマや映画で何度もこういった作品を観てきている。しかも、SNS全盛の時代なので普段から不特定多数のリアルな女性の悩みや愚痴も見聞きしている。

つまり、このジャンルのドラマを見せられたところで、視聴者はすでにお腹がいっぱいなわけです。それにもかかわらず、同作はフィクションならではの意外性のある展開を作らず、共感を求めようとしていた。これが一時2%台前半まで視聴率を暴落させた一番の理由でしょう」

さらにA氏は言う。

「比較として分かりやすいのが『Tシャツが乾くまで』。あのドラマは、登場人物にほとんどの視聴者が共感できないようになっていた。中には『どうしてあんな行動を取るの?』『態度が許せない!』といった、まるで実在する人物を叩くようなアンチコメントがSNSに並んだりもした。

かといって、単に奇をてらったキャラを作ったわけでもない。“失踪癖”や“秘密主義”など、現実にいそうだがドラマでは描かれてこなかった人物像を登場させることで『私も気持ちが分かる』といった声も上がり、より議論が深まった。非常に考えて作られたドラマでした。TBSは視聴者を理解している。

一方で『Tokyo middle 30』は、主要キャラ3名の悩みがありきたり。“ドラマは共感を呼ばないとヒットしない”と言われてきましたが、そのフェーズは終わりかけていることにフジは気がつかなかったのでしょう」

A氏は続ける。

「地方からキラキラした世界を夢見て上京した女性が現実に思い悩むという設定も古くさく感じました。地方から東京へ出て成功したいと願う女性がいないとは言いません。ただし、それをメインテーマとして置くことは、リサーチが足りなかったと言わざるを得ない。働き方も暮らし方も多様になった現在、この感覚は視聴者には刺さりません。

中国でヒットしたドラマを日本版にリメイクするにあたって、設定を親友同士に変えたことも良くなかった。中国版では男性社会で生きる女性の構造を深くえぐっていましたが、日本版はそこが薄れて友情にまつわるストーリーが多くなったことも残念でしたね……」

共感、キラキラとした都会への憧れ、女性同士の友情……。フジのドラマ制作陣の感覚が“輝いていたあの時代”で止まってしまっていることが露呈したようだ。

重すぎるトーンで数字を捨てた『さよならノワール』

「『さよならノワール』はもっと評価されても良かった作品のはずだったのに……」

残念そうに語るのは、ドラマ制作会社でディレクターを務める男性社員・B氏だ。

「犯罪被害者や遺族の痛みに向き合う新しいジャンルのヒューマンドラマで非常に見応えがあったし、小池栄子さんや北香那さんの役柄に憑依したような繊細な演技も素晴らしかった。

しかし、全話を通して玄人受けを狙ったカメラワークや抑揚の少ない重いトーンの展開が多すぎた。この演出を見たときに“見たい人だけが見ればいい”という制作陣の諦めを感じてしまいました。

コミカルな会話や泣けるシーンは随所にあった。もっと演出面の工夫で大衆向けにもできたのでは……? 本格派なドラマを目指すことと視聴率を捨てることは違うはずなのに、そのバランス感覚さえも失っていることがショックでした。

おそらく、前クールで同枠に放送されていた『夫婦別姓刑事』での共演者トラブルが、全体の士気を下げたこともあるのでしょう」

本格派のヒューマンドラマを目指したが、制作陣の諦めや迷走が視聴率を2%台にまで落とした要因だったようだ。

韓流ドラマ的なノリが視聴者を白けさせた『ラストノート』

「『ラストノート』はストーリーのテイストも脚本も古かった。平均視聴率3%台でキープできたことに驚いたほど、駄作でしたね」

ドラマや映画のレビューを行なうドラマライターのC氏は同作を一刀両断した。

「同作は、内田有紀さん演じる香料メーカーで働く49歳の葵と寺西拓人さん演じる夢に破れて漠然と生きる30歳の澄晴が偶然の出会いをきっかけに、激しい恋に落ちていくという大人向けのラブストーリー。

かつての韓流ドラマや昼ドラのようなテイストを狙ったのでしょうが、現代の視聴者はかなりリアリティを追求する。『ロマンス詐欺をしていた若者と恋に落ちるのはありえない』『偶然の出来事が多すぎる』といった厳しいコメントが並び、ターゲットとしていた40代くらいの女性視聴者を夢中にできなかったことが敗因でしょう。

脚本面でも気になる点は多かった。説明的なセリフが目立ったり、モノローグ(心の声)を多用したりすることで複雑な感情の変化を明らかにしていましたが、逆に説得力が無くなっていた。

やはり、俳優陣の演技でしか心は動かされない。10年以上前ならアリだった手法ですが、今のドラマでそれをやるとは思いませんでした」

同作も過去の名作や話題になったドラマのテイストを踏襲したせいで、失敗に終わったようだ。

後編『山下智久にフラれたフジの逆襲…『逃げ恥』脚本家でリベンジなるか』では、同クールの低迷の一因となった人気アイドル俳優の降板劇と、フジが放つ逆襲の一手について触れる。

【つづきを読む】山下智久にフラれたフジの逆襲…『逃げ恥』脚本家でリベンジなるか