名曲なら何でも刺さるわけではない…視聴者をクギづけにする「CMソングと演出」絶妙な関係を徹底分析

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’26年上半期に初回放送された約1000本のCMを対象に、視聴者がどれだけ画面を注視したかを独自分析した今回の企画。前編ではMrs. GREEN APPLEやBLUE ENCOUNTなどを紹介した。

後編ではSHISHAMO「明日も」や「おどるポンポコリン」などを例に、CMソングと映像演出、ターゲット層との相性を見ていく。

大人の『まる子』にジャズ

「オーラルケアブランド『NONIO』のCMです。ターゲット層である、20代後半から30代前半を意識した選曲でしょう。出演は同年代で恋人役の川口春奈さんと成田凌さん。仕事に悩みつつ、時にはケンカをしても口を近づける機会が多いという内容です。

応援ソングである『明日も』がリリースされたのは’17年で、ターゲット層が青春時代を過ごした時期に重なります。人生に悩む30歳前後の視聴者が、感情移入するのにピッタリなCM内容と選曲でしょう」(安武氏)

1位

SHISHAMO『明日も』

ターゲット層にピッタリなのは、10位『LE SSERAFIM』の『Kawaii』も同様だろう。本人たちが出演するチョコレート『キャラパキ』のCMは、10代中心の若年層をクギづけにしている。

10位

LE SSERAFIM『Kawaii』

今回のランキングには、演出やターゲット層へのマッチングの他にも特徴がある。上位30のうち18ソングが’90年代以前の曲なのだ。そうしたCMには、懐かしさや曲の特色がうまく活(い)かされているという。R社のマーケティングチームマネージャー・三橋洸輝氏が解説する。

「5位のアニメ『ちびまる子ちゃん』の主題歌『おどるポンポコリン』がリリースされたのは1990年です。『ザ・プレミアム・モルツ』のCMで、広瀬すずさんや伊藤沙莉(さいり)さんが演じる大人になった『まる子』や『たまちゃん』がテーマ。

バックに流れるのはジャズですが、CM後半から歌詞が入り……。そこで初めて視聴者は『おどるポンポコリン』のアレンジ曲だとわかる仕掛けで、かわいいキャラクターが大人になるというCMの展開を劇的に盛り上げています。

11位・野田洋次郎さんの『ウイスキーが、お好きでしょ』は1991年にリリースされた石川さゆりさんの楽曲で、竹内まりやさんなど多くの歌手に歌い継がれてきた『角瓶』のCMソングです。

今回は蒼井優さんが演じているバーの店主が、ギターを弾きながら歌う客(野田洋次郎)に静かに耳を傾ける哀愁漂う雰囲気は長年変わりません。時代が変わっても、見る人を安心させる演出でしょう」

11位

野田洋次郎(RADWIMPS)『ウイスキーが、お好きでしょ』

一方で、少し残念なCMソングもある。『THE BLUE HEARTS』の原曲で26位の『夢』だ。三橋氏が続ける。

「綾瀬はるかさんを起用し、新型SUV『CX-5』の魅力を紹介するCMです。ただ『夢』のリズムが終始一定で、印象に残りづらい。前出の『おどるポンポコリン』のように後半に歌詞を出すなど曲にメリハリをつければ、より効果的だったでしょう。商品への説明が多いのも曲の存在感を薄めているかもしれません」

名曲だからといって視聴者がクギづけになるわけではない。CM内容やターゲット層、演出など、さまざまな要素にマッチした曲だからこそ注視されるのだ。

「CMソング注目スコア」測定法

R社が関東で2000世帯(約4300人)、関西で600世帯(約1400人)ほどの協力を受け、視聴者がどれだけテレビ画面を注視していたかを測定した。画面に目が向けられていた秒数を独自の方法でスコア化。

100を平均とし数値が上がるほど注目の度合いは高くなる。他の作業をしながらの「ながら見」では画面は見られていないことが多いので、スコアは上がらない。

対象は’26年1月1日から6月30日までに初回放送されたCM。歌詞のないBGMや替え歌が流れたものは除外。さらに期間限定で測定が難しいCMも省いた。一方、原曲の歌詞のまま別の歌い手がカバーしたCM(例『おどるポンポコリン』)はランキング対象としている

『FRIDAY』2026年10月2・9日合併号より