〈町内会長は17歳の女子高生!?〉「じゃあ、私がやる!」解散危機に手を挙げた加藤瑞稀さんが明かす“大人との仕事”の難しさ

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愛知県名古屋市南区の泉楽中町内会で今年4月から町内会長を務めている加藤瑞稀さんは、なんと17歳の高校3年生。自身が所属する町内会の担い手不足を知り、自らの意志で町内会長に手を挙げたというのだ。大学受験を控えているタイミングにもかかわらず、大人たちの中で町内会活動に奮闘する加藤さんの素顔に迫った。

【画像】町内会メンバーが集まる定例会で発言する新・町内会長の加藤瑞稀さん

「このままだと町内会が解散するかも」“17歳の町内会長”が誕生した瞬間

――加藤さんは今年4月から、愛知県名古屋市南区の泉楽中町内会で町内会長を務めています。17歳の高校3年生が町内会長に就任したとネットでも話題ですが、まず、町内会長を引き受けることになった経緯から教えてください。

加藤瑞稀(以下同) 去年の10月、町内会議に出席していた母が、遅い時間になっても帰ってこなくて。心配になって電話をかけたところ、新しい町内会長がなかなか決まらず、会議が難航していることを知ったんです。

私たちの所属している町内会は50~70代の方が多いのですが、体調面などいろいろな事情があって誰もできそうにない、と。

その話を聞いたときに「じゃあ、私がやる!」って、直感で思ったんです。だから母にそう伝えたんですけど、そのときは「春に高校3年生になったら大学受験もあるから」と止められてしまって。

それでも諦められなかったので、その次の会議に出席させてもらったら、このまま町内会長が決まらなければ町内会は解散、もしくは合併するという話になっていって……。

自分が暮らしている地域がバラバラになってしまうのはイヤだった。それで、「私が町内会長になろう」と心を決めたんです。

まず、私の年齢でも立候補できるのか、学区長さんを通して市役所に確認してもらいました。すると、私の年齢でも立候補できるということだったので、次の会議で立候補しました。

そして、ほかに候補者はいなかったので、多数決ではなく信任投票になり、その場で拍手をいただいて無事に就任することができました。

――自分より上の世代の人たちと活動していくことに不安はありませんでしたか?

もちろん不安でしたよ! もし自分が大人側の立場なら、「なんか子ども出てきたんだけど……」って心配になりますし(笑)。でも、実際にはみなさんに温かく受け入れてもらえて、とても安心しました。

あと、うれしいこともありました。

私が町内会長に決まったあと、実はしばらく副会長が決まっていなくて。

その後も副会長が決まらないまま会議を続けていたんですが、そんな時期に、若い妊婦さんが泉楽中町に引っ越してこられたんです。

町内会の会議で初めてお会いした際に、私が「私が会長です! イエーイ!」という感じで明るく自己紹介したら、17歳の私が会長だと知って、すごく驚いていて(笑)。

でも、その出会いをきっかけに町内会に興味を持ってくれたみたいで、そのあと「瑞稀ちゃんが会長なら」と言って、副会長を引き受けてくれたんです。あれはすごくうれしかったですね。

――加藤さんが会長になったことで、町内会にも早くも変化が生まれているんですね。もともとは、町内会とどんな関わりがあったのでしょう?

特別、町内会に興味があったわけではないので、活動には清掃や祭礼などで年に2、3回参加するくらいでした。

ただ、地域の方たちとは普段から接する機会が多く、学校へ行く途中に声をかけてくれたり、挨拶してくれたりしていたので、もともと顔見知りの方は多かったですね。

私の住んでいる町内会は、昔から代々この地域で商売を続けている自営業の方も多くて、地域全体にフレンドリーな雰囲気があるんです。だからこそ、私もこの年齢で町内会長に挑戦できたのかもしれません。

大人ばかりの町内会で感じる難しさ

――実際に町内会長になってみると、初めて知る仕事も多かったと思います。どのように活動を始めていったのでしょうか。

町内会のみなさんからは「せっかく若い世代が入ったんだから、好きにやっていいよ」と言ってもらっているので、これまでのやり方をそのまま引き継ぐというよりは、自分なりにできることを試してみている感じです。

例えば、LINEミーティングを使ったオンライン会議を取り入れたり、ごみの分別を多言語で説明するポスターをCanvaというアプリで作って貼り出したりしています。

――さまざまなデジタルツールを活用できるのは、加藤さんの世代ならではの強みだと思います。一方で、町内会メンバーと年代が違うことで感じる難しさもあるのでは?

一番難しいのはコミュニケーションですね。私だけかなり年齢が離れているので、何気ない雑談や仕事の話をしていても、話の内容をうまく汲み取れないことがときどきあるんです。

それから、町内会長なので、自分より年上の方にお願いや指示をすることもあるんですけど、私の説明がうまく伝わっていなくて、大きなミスにつながってしまったこともあって……。学校で友達や先生と話すのとは違う難しさがあるなと、ひしひしと感じます。

あとは、便利だからといってデジタルツールを強制しないように気を付けています。

そう思うきっかけになったのが、毎回会議に出席してくれている町内会員のおばあちゃんとの出来事です。ある日、その方から体調不良で欠席すると連絡をもらったんです。

ただ、その日は大事なことを決める日でもあったので、ほかのみなさんは対面で集まって、そのおばあちゃんにはオンラインで参加してもらえないか提案しました。でも、「オンラインはイヤなの。ごめんね」と断られてしまって。

最初は「便利なのに、どうしてだろう?」と思ったんですが、あとから祖父母に聞いてみたら、ふたりも同じ意見で。「もう自分たちは古い人間だから、昔のやり方に馴染みがある」と。

――便利だからといって、誰もがオンラインを好むわけではないんですもんね。

そうなんです。それで「急に新しいやり方に変えられると、ついていけなくて町内会を抜けちゃう人もいるかもよ」とも言われて。

そこで初めて、便利だからといって新しい方法を取り入れればいいというわけではないんだな、と気づきました。

なので今は、それぞれが参加しやすい方法を選べるようにしながら、対面とオンラインを使い分けています。

「友達には新聞でバレた(笑)」女子高生としての素顔

――普段は高校生でもある加藤さんですが、町内会長になってから生活は変わりましたか?

町内会長になる前は、放課後に部活に出たり、友達とご飯を食べたりして過ごしていましたが、今は、会議や回覧板を回すなどの仕事があるので、早めに帰ることが少し増えました。

通学中は手が空いているので、スマホでぱぱっと回覧板に載せるお知らせを作ることもあります。「文字は大きいほうが読みやすいって言われたなあ」とか考えながら(笑)。

町内会長になったことは友達に話してなかったんですけど、新聞の一面に載ったことでバレちゃいました(笑)。

でも、友達は町内会長という仕事のイメージがあまり湧かないようで、「そもそも町内会って存在してるの!?」という感じなので、友達といるときは今までどおり、普通の高校生の自分でいられています。

――高校3年生ということで大学受験も控えていて、学業との両立が大変そうですが、それは大丈夫ですか?

今のところ、町内会長との両立が大変という感じはないです。仕事自体も、まだそこまで多くないので。

それより、町内会長とは関係なく、受験勉強は頑張れるときと、そうじゃないときの差が大きくて……(笑)。スイッチが入ったときにしっかり取り組まなきゃなって思っています。

――最後に、町内会についてこれから変えていきたいことを教えてください。

もっと若い人を増やしたいです。

例えば、町内会には、いくつかのグループに分かれた町内会員をまとめる「組長」という役割があって。

2年ごとにローテーションで担当する人が替わるんですが、結局、まわりまわって上の世代の方が引き受けることが多いんです。

組長の仕事は、会議でもらった資料を自分の組の町内会員に配るなど、そこまで難しいものではありません。町内会活動に関わったことがない人でも、比較的始めやすい役割だと思います。

なので、まずはそういうところから若い世代の人たちが参加してくれるようになったら、町内会ももっと元気になっていくんじゃないかなと思っています。

最近、取材を受けると「普通の女の子だね」と言ってもらうことが多いんですが、「こんな普通の17歳でも町内会長になれるんだよ」っていうことを発信することで、「自分も何かやってみようかな」と思ってくれる若い人が少しでも増えたらうれしいです。

取材・文=蜜ツ冶/A4studio