抜歯後に消毒は必要?術後の処置や過ごし方のポイントを解説
抜歯を行った後に、傷跡を保護するための消毒などが必要なのかどうかと気になっている方もいるのではないでしょうか。
抜歯後は細菌感染などのリスクもあるため、適切なケアで患部をきちんと保護することが大切です。
今回は、抜歯後に行う消毒をはじめ、抜歯後に注意したいポイントなどを紹介します。
監修歯科医師:
松浦 京之介(歯科医師)
歯科医師。2019年福岡歯科大学卒業。2020年広島大学病院研修修了。その後、静岡県や神奈川県、佐賀県の歯科医院で勤務。2023年医療法人高輪会にて勤務。2024年合同会社House Call Agencyを起業。日本歯科保存学会、日本口腔外科学会、日本口腔インプラント学会の各会員。
抜歯後に消毒や洗浄を行う目的

むし歯の進行や重度の歯周病、親知らずによるトラブルなど、抜歯はさまざまな状況で行われる歯科治療の一つです。
抜歯を行った際は、必要に応じて歯科医院での消毒や洗浄が行われることがありますが、これは下記のような理由によるものです。
抜歯した部位の状態を確認する
抜歯後に歯科医院で消毒や洗浄を行う目的の一つが、抜歯後のお口にトラブルが生じていないかどうかの確認です。
抜歯後の診察においては、抜歯窩と呼ばれる歯を抜いた穴からの出血状態や腫れのほか、痛みや感染の兆候、血餅の状態などを確認します。
また、抜歯方法によっては歯茎を縫合して抜歯窩を保護する場合があります。歯茎を縫合している場合は、傷口が開いていないかや、糸の周囲に強い炎症がないかなどを確認することで、万が一のトラブルに対応できるようにしています。
なお、抜歯後の確認は一般的に抜歯の翌日に行いますが、抜歯の内容や服用している薬の種類などによっては翌日以外での受診が指定されるケースもあります。
例えば糖尿病や血液疾患がある方などで血液をサラサラにする薬を服用しているような場合は抜歯後に出血がおさまるまでに時間がかかる場合があるため、歯科医師から翌日以外の通院日程を指定される可能性があります。
必要に応じて汚染物などを除去する
抜歯後の食事などによっては、抜歯後の傷口に食べかすや汚れが入り込む場合があります。
抜歯後の検査では傷口の状態を確認したうえで、必要であれば生理食塩水などを用いてやさしく洗浄し、汚染物を取り除きます。
また、汚れが入り込んでいない場合でも、抜歯窩への感染やドライソケットが疑われる場合には、洗浄や局所的な処置を行うことがあります。
注意点として、歯科医院では抜歯後に洗浄などを行う可能性がありますが、セルフケアとしては抜歯後の強いうがいや頻繁なうがいをなるべく控え、傷口が洗い流されないようにする必要があります。
その理由として、抜歯をした後には抜歯窩に血液が凝固してできる血餅というものが形成され、これによって傷口の保護が行われるのですが、抜歯直後からうがいなどを繰り返していると血餅が適切に作られず、傷口の保護が十分に行えなくなる可能性があるためです。
うがいだけではなく、舌や指、綿棒などで傷口を触ったり、市販の消毒液を塗ったりする行為は避けましょう。
抜歯後の消毒が不要なケース
抜歯後には翌日に消毒を行うケースがありますが、消毒は必ずしも実施されるわけではありません。消毒をしなくても問題がないと歯科医師が判断すれば消毒は行われず、抜歯後に特に問題が生じなければ歯科医院の受診も必要ないというケースもあります。
これは抜歯の際に歯茎の縫合を行うかどうかなどによらず、歯科医院の考え方や、治療の内容によって異なります。
実は、そもそも抜歯後に消毒が必要とされていたのは一昔前までのことであり、近年は抜歯をした後に消毒は必要ないとされることも少なくありません。術後の経過観察も含めて消毒を行う歯科医院もあり、どのような対応をするかは歯科医師の考え方によっても異なるため、処置を受ける歯科医院の指示にしたがって受診するようにしましょう。
抜歯後に生じることがあるトラブル

抜歯後には、下記のようなトラブルが生じることがあります。
ドライソケット
ドライソケットとは、抜歯窩に十分な血餅が形成されなかったり、血餅が早い段階で失われたりしてしまうことで、内部の骨が露出する状態です。
通常であれば抜歯後は痛みが徐々に軽くなるのに対し、抜歯から数日後に強いズキズキとした痛みが現れたり、痛みが長引いたりすることがあります。
ドライソケットの原因は頻繁にうがいをしたり、傷口を触ったりすることで血餅がうまく形成されなくなってしまうほか、血流を悪化させる喫煙などの習慣も影響します。
ドライソケットになると痛みが長期間続いてしまうだけではなく、放置しつづけると骨に細菌感染が生じて炎症が引き起こされたり、歯茎の形が悪くなってしまったりといったリスクがあるため、早めに適切な処置を受けることが大切です。
細菌感染による炎症
抜歯後の傷口に細菌が付着すると細菌感染による炎症が生じる可能性があります。
細菌感染による炎症があると、痛みや腫れが生じるほか、膿が出たり発熱したりといった症状が現れる場合があり、全身の健康状態にも影響することがあります。
ただし、抜歯直後の軽い痛みや腫れは通常の治癒過程でもみられるため、こうした症状があるだけで感染と決めることはできません。
一度軽くなった痛みや腫れが再び強くなる、膿や不快な味が続く、発熱や強い倦怠感を伴う場合は注意が必要です。感染が確認された場合には、原因や症状に応じて洗浄、排膿などが検討される場合もあります。
また、感染がある場合や術後感染のリスクが高い場合には、抗生物質などが処方されることもあります。その場合は歯科医師の指示を適切に守って、薬を服用するようにしましょう。
抜歯後に歯科医院で行われる処置

抜歯後に再診を行う場合は、傷口が順調に治っているかを確認し、必要に応じて消毒や洗浄、抜糸などを行います。ただし、上述のとおり近年は抜歯を行った後に消毒などの処置を行わないこともあり、抜歯後に特に問題がなければ再診が必要ないというケースもあります。
ここでは抜歯後に行われることがある具体的な処置の内容について解説します。
経過観察と必要に応じた洗浄と消毒
抜歯を行った後には、経過観察や洗浄、消毒のための再診が必要とされる場合があります。
ただし、以前は抜歯の翌日に消毒を行うことが一般的だったのですが、近年はむしろ消毒などを行わず、血餅ができている状態をそのままにしておいた方がよいという判断から、術後の洗浄や消毒を行わない場合も少なくありません。
一方で、抜歯後の経過についてはきちんと確認して必要なケアを行えるよう、術後1週間程度を目安に再診が行われることもあります。
また、神経との距離が近い親知らずなどの難症例とされる歯を抜歯する場合は、トラブルがないかを確認するために早めの再診が必要とされる可能性もあります。
経過観察で痛みや腫れといった炎症が見つかったり、抜歯した部位に食べかすなどがたまってしまっていたりする場合は、必要に応じて洗浄や薬剤による処置、薬の処方などが行われることもあります。
術後の経過観察の必要性などは歯科医師によっても考え方が異なるため、再診が必要とされた場合はきちんと指示にしたがって、必要な時期に診察を受けるようにしましょう。
必要に応じた縫合と抜糸
親知らずや埋伏歯の抜歯を行う場合などで、歯茎を切開して抜歯を行い、傷跡を安定させるために切開部位を縫合するという流れで治療が行われることがあります。
このとき、縫合に使用する糸が体内に吸収されない糸であれば、術後に抜糸が必要になる可能性があります。
ただし、縫合は時間経過とともに体内に吸収される糸で行われる場合もあり、このケースの場合は抜糸をしなくても自然に糸がなくなるため、特に抜糸の対応をしなくてよい可能性もあります。
注意点としては、縫合による糸が気になるからといって、自分で糸を取ったりしてはいけません。傷口がふさがっているように見えても、実際にはまだふさがり切っていない場合もあり、自己判断で糸を取り除いてしまうと傷口が開いて感染などのリスクが生じる可能性があります。
どうしても糸が気になるような場合は処置を受けた歯科医院に相談し、歯科医師判断のもとで糸の除去を含めた対応を受けるようにしましょう。
抜歯後のセルフケアのポイント

抜歯を行った後に良好な経過を目指すためには、抜歯後にきちんとセルフケアを行うことも大切です。
具体的にセルフケアとして気を付けるべきポイントを紹介します。
血餅を守るために強いうがいや患部への刺激を避ける
抜歯後の状態を良好に保つためには、抜歯した場所にできる血餅(けっぺい)と呼ばれる血液の塊を守ることが大切です。
血餅は抜歯した部位に溜まった血液に含まれるフィブリンと呼ばれる成分が網目状に固まってできるもので、抜歯後に時間経過とともに形成されます。血餅は形成されはじめたタイミングではドロドロした質感ですが、徐々に固まって赤黒いゼリーのようになり、数日経過すると半透明の白っぽい膜のように変化していきます。そして1週間ほどすると血餅が肉芽組織へと置き換わり、半年から1年ほどかけて歯茎や骨が回復していきます。
このように、血餅は傷口を塞いで出血を止めるだけではなく、細菌などが傷口に入り込むことを防止して感染症のリスクを抑えながら、新しい組織が作られるための土台となる、術後の回復に重要な役割を果たすものです。
一方で、血餅が形成されている途中のどろどろとした状態のときに強いうがいや患部を触ったり舐めたりしてしまうと、血餅がうまく作られずにいつまでも傷口の保護が行えなくなってしまう場合があります。
血餅がきちんと形成されないと出血が続いたり、細菌感染のリスクも高まってしまうため、術後の経過が良好に進まない可能性が高まるので、抜歯後は血餅が作られるのを妨害してしまうような行為は避けるようにしましょう。
なお、血餅は血液が固まって形成されるものであるため、高血圧の治療などで血液をサラサラにしている薬を服用している場合は血餅がうまく作られにくくなる可能性があります。
血餅が作られずに生じるトラブルを避けるためにも、抜歯を受ける際は服用している薬の種類などをきちんと歯科医師に伝えておきましょう。
処方薬を服用し飲酒や激しい運動を控える
歯科医院の方針や抜歯の内容などによっては、痛み止めや感染防止のための抗生物質などが処方される場合があります。
薬が処方された場合には、歯科医師の指示にしたがって、用法用量をきちんと守り、薬を服用しましょう。特に、抗生物質などが処方され、すべて飲み切るように指示された場合は、自己判断で服用を中止したりせずにきちんと飲み切ることが大切です。途中で飲みやめてしまうと耐性菌などができる可能性があり、改善しにくい感染症につながってしまう場合があります。
また、術後は飲酒や激しい運動などは控えましょう。アルコールや運動で急激に血流が増加すると、出血が悪化してしまい、血餅の形成が阻害される可能性が考えられます。
逆に喫煙などの血流を阻害する行為も回復を遅くしてしまう場合があるので、少なくとも抜歯後早期は控えたほうがよいでしょう。
必要に応じて頬の外側を冷やす
抜歯後に出血が止まらない場合や、強い痛みや腫れといった症状が出てしまった場合は、頬の外側から濡らした清潔なタオルなどを当てて冷却することで、症状を緩和させる方法も有効です。
ただし、抜歯直後の一時的な症状であればこうした応急処置によるケアでよいのですが、抜歯から数日が経過しても痛みなどが軽減しない場合は、何かトラブルが生じている可能性が考えられるため、早期に歯科医院を受診するようにしましょう。
痛みや出血が続く場合は歯科医院を受診する
抜歯後に痛みが生じる場合、一般的には麻酔が切れてからしばらくして痛みを感じ始め、処置の翌日か2日後程度にピークを迎え、その後は少しずつおさまっていくという経過をたどることが一般的です。
もし数日が経過しても痛みが軽減しなかったり、逆に痛みが強くなっていたりする場合は感染やドライソケットなどのトラブルが引き起こされている可能性もあるため、早めに抜歯を行った歯科医院に相談しましょう。
抜歯後に出血がおさまらないような場合も同様で、数日が経過しても出血するような場合はうまく血餅が形成されず、傷口が開いた状態のままになってしまっているリスクがあるので、歯科医院に相談して適切な処置を受けましょう。
まとめ

以前は抜歯後には歯科医院で消毒を行うという流れが一般的でしたが、近年は抜歯後は傷口になるべく触れず、処置後にできる血餅を守って過ごすことで回復を促進するという対応を行う歯科医院が少なくありません。
ただし、抜歯後の対応については歯科医師の考え方や抜歯の内容などによっても異なるため、治療を受ける際は事前に治療後の流れもよく確認し、歯科医師に指示されたタイミングで経過観察のための受診などを行えるようにしておくとよいでしょう。
参考文献
親知らずを抜きたい - 覚王山の歯医者なら 愛知学院大学歯学部附属病院
くすりを知る うがい薬|慶応義塾大学病院 KOMPAS
抜歯した後に気を付けること|東京都 保健医療局

