推し活、「察して文化」、性教育の遅れ、AV氾濫…日本が「セックスできない大国」になった必然的な理由
【前編を読む】中央大学特任助教が解き明かす性の新常識 なぜ日本人にとってセックスは「したいけど、めんどくさい」行為になったのか
「気持ちのいいセックス」にたどり着けない
カップルの間で価値観が一致していて、双方が納得したうえで「セックスをしない」というなら、何の問題もない。しかし実際には、性生活に満足できていない日本人も少なくないのだ。
パリに本社を置く調査会社Ipsos社がまとめた「Love Life Satisfaction 2026」によると、日本人で「恋愛や性生活に満足している」と答えたのは33%だった。これは調査した29ヵ国のうち最下位の数値である。
性生活の不満は日本の性教育の遅さにも起因しているという。たとえばオーストリアでは、セックスについて解説した4~5歳向けの図書が一般的に流通している。富永ペインクリニック院長の富永喜代氏は次のように語る。
「性交時に痛みを感じる日本人女性は、年齢を問わず約6割にのぼります。性教育が不十分なまま、AVやウェブ上のアダルトコンテンツを教科書代わりにしている男性が多く、女性の気持ちを考えないセックスをしてしまっているのです。加えて、日本特有の『察して文化』のせいで女性も本音を言えず、いつまでたっても「気持ちのいいセックス」にたどり着けないのです」
日本人男性の約3人に1人がED
20代前半で性経験がない人の割合は、ヨーロッパでは20~30%なのに対し、日本では50~60%にものぼる。さらに最近は、勃起不全(ED)を訴える男性の数も増加している。'24年に発表された日本性機能学会の調査によると、日本人男性の約3人に1人がEDだったという。
病気などの身体的な要因でEDになることもあるが、意外にも、精神的に追い込まれてなるケースが少なくない。調査を主導した順天堂大学医学部附属浦安病院泌尿器科教授の辻村晃氏が解説する。
「最近は、EDに悩んで受診する若者が驚くほど増えています。しかも、ほとんどの原因がメンタル面なのです。『うまくできなかったらどうしよう』というプレッシャーを感じ、精神的につらさを覚える男性が増えています」
かたや、生身の異性と向き合わずとも、性的な刺激は世の中に溢れている。
「推し活」で擬似的な快感を得られるように
「無料の無修正動画やVRなど、性的な満足を得る方法が多様化しています。プレッシャーのない自慰ばかりしているうちに、リアルな相手では勃起しなくなってしまうのです。
ただ、20代前半の男性の自慰の頻度は高く、性欲自体が失われたわけではありません。一人で簡単に解消できてしまうことで、リアルな性行為への意欲を奪われてしまっているのです」(辻村氏)
手軽にアクセスできるアダルトコンテンツの他にも、カップル間の性的な接触を妨げる要因がある。前出のパッハー氏が続ける。
「性行為が満たすのは、性的欲求だけではなく、パートナーへの信頼から生まれる安心感や肯定感も含まれます。性的な触れ合いは、そうした『親密性を得たい』という欲求からも行われるのです。
しかし日本では、その対象がパートナー以外に向かうことが多々あります。その一つが、男女問わずアイドルなどに対する「推し活」です。現実の恋愛やセックスに伴うめんどくささがなく、擬似的なカップル関係を感じられてしまうわけです」
セックスレスは関係性を見直すサイン
推し活にハマるあまり、相手に求める理想が高くなってしまうのも、またセックスから遠ざかる要因の一つなのだ。
かくしてセックスレスとなった日本人カップルが、再びセックスを取り戻すことも、なかなか難しい。性的な結びつきが弱まれば、お互いの対話自体が少なくなる。
「カップル文化の強い欧米では、セックスレスになった時には、二人の関係性が停滞しているサインだと捉え、話し合いの機会を設けることが少なくありません。
一方、日本のカップルは、しっかりと同じ時間を共有したり、面と向かって話し合ったりすること自体がめずらしいのではないでしょうか」(パッハー氏)
パートナーと向き合って話すことが苦手な人は多い。まずは話題のドラマや映画などを手がかりにして、お互いの性的価値観を共有するのも一つの手だ。良識ある性生活のために、最新知識を役に立てよう。
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「週刊現代」2026年9月28日号より
