《スマホに羽月氏以外とのやり取りが…》ゾンビたばこ売人が法廷で追及された“第三者への譲渡”疑惑、本人は「ない」と否定も注目される「家宅捜索が入った2人の選手」の去就
プロ野球・広島カープをめぐる"ゾンビたばこ"騒動。昨年11月、当時広島カープの選手だった羽月隆太郎氏(26)が指定薬物エトミデートを使用・所持したとして起訴されて以降、その火種は燻り続けている。今年7月には広島県警がカープの矢野雅哉内野手(27)と前川誠太内野手(23)の居宅などに家宅捜索に入ったことを発表。球団の対応は予断を許さない状況だ。
【写真を見る】カープのチームマークを塗りつぶした写真をアップした羽月被告のものと見られる現在のXアカウント。高校卒業後、入団したばかりの羽月被告
そんななか、羽月氏に"ゾンビたばこ"と呼ばれる指定薬物エトミデートを譲り渡すなどしたとして医薬品医療機器法違反の罪に問われた"売人"、滝口涼介被告(38)の裁判が9月16日、広島地裁で行われた。佐藤智彦裁判官は拘禁刑2年・執行猶予4年の判決を言い渡している。
最大の謎は、「羽月氏以外にもゾンビたばこを渡したカープ選手はいるのか」ということだ。ライターの片岡健氏がレポートする。【前後編の後編。前編から読む】
検察が指摘した"スマホ履歴"
滝口被告が羽月氏以外にもエトミデートを渡していた人間はいるのか、いるならそれはカープの選手なのか。この問題に関しては、被告人質問で以下のような気になるやりとりがあった。
まず滝口被告は弁護人の質問に対し、エトミデートを羽月氏以外の人に渡したことについて「ございません」と言い切った。これに対し、検察官は滝口被告が羽月氏以外の人物にもエトミデートを譲渡した可能性について、こう追及していた。
検察官 「あなたのスマートフォンのやりとりの中には、(羽月氏以外の)第三者のためにもエトミデートを入手していたと推察できるやりとりがあるんですか?」
滝口被告 「はい」
検察官 「それでも、第三者にエトミデートを渡したことはないということですか?」
滝口被告「そうですね」
検察官はこの件について、被告人質問ではこれ以上、滝口被告を追及しなかった。しかし、被告人質問終了後に行った論告求刑では、改めてこう主張していた。
「被告人のスマートフォンのやりとりからすれば、他の第三者にもエトミデートを譲り渡していたと推察できることなどからすれば、被告人はエトミデートの所持及び譲り渡しに対する常習性が認められることは明らかであります」
検察官としては、「滝口被告がエトミデートを譲り渡した相手は羽月氏以外にもいるはずだ」という認識なのかもしれない。ただ、所持と使用を示す直接的な証拠が出なかったのだろう。
実際に今年7月、広島県警がカープの矢野内野手と前川内野手の居宅などに家宅捜索に入ったことを発表している。広島県警がこうしたメッセージ証拠をもとに、家宅捜索に踏み切ったという可能性は捨てきれない。
報道で「家族がダメージを受けた」と主張
滝口被告は逮捕以降、プロ野球の選手らに女性を「アテンド」していた、そのことを吹聴していた、などという情報が週刊誌などによって報道された。そこでは、滝口被告がカープの他の選手たちや著名な起業家と笑顔で肩を組んでいる写真なども公にされ、滝口被告の印象は相当悪くなっていた。
被告人質問では、それらのことについても弁護人が俎上に載せていた。
弁護人 「報道が何か滝口さんやご家族に影響したことはありますか?」
滝口被告 「私の関係者のところに取材が来たりとか、真実ではない内容などが書かれていたので、そこに関しては影響がありました」
弁護人 「お母さんのところにも取材が来ましたね」
滝口被告 「はい」
弁護人 「お母さんの精神状態とかは大丈夫でしたか?」
滝口被告 「かなり最初はダメージを受けておりました」
弁護人 「滝口さん自身が生活しづらくなったとか、そういう点はありますか?」
滝口被告 「写真を撮られたりとか、そういうことはありました」
すでに社会的制裁を受けていることを指摘し、情状を良くしようということだろう。実際、弁護人は被告人質問後に行った最終弁論で、報道によって社会的制裁を受けたことを強調し、「量刑を決定するうえで十分に考慮されるべき」と主張していた。
「羽月さんのファンに申し訳ない」
滝口被告は、報道で見かけた写真では印象が良いとは言い難かったが、法廷での態度は終始、殊勝な印象だった。弁護人から現在の思いを聞かれ、こう答えた。
「羽月さん本人はもちろんですが、球団の関係者やファンの方々、羽月さんのファンの方々に対しても申し訳ないことをしたと思っています。家族に対しても生活の面から色々迷惑をかけてしまったので、本当に申し訳なく思っています」
さらに検察官から「一人のプロ野球選手の野球人生が大きく変わったこと」への思いを聞かれ、こう答えた。
「仲良くしていただけに、自分が彼の人生を奪ってしまったのは本当に申し訳ないと思っていますし、本来、僕と会わなければ、そういうことになっていなかったと思うので、その意味では本当に申し訳なかったと思います」
羽月氏に対しては、心底申し訳ないと思っているようだった。
野球人生が大きく変わったカープ選手は、羽月氏だけではない。居宅などに広島県警の家宅捜索が入った矢野内野手と前川内野手の2人は1軍登録を抹消され、2軍の試合にも出場できず、3軍での調整が続いているからだ。
とくに矢野内野手については、広島駅からカープの本拠地マツダスタジアムに続く通称「カープロード」に並べられた一軍選手たちの紹介パネルから矢野内野手のパネルが撤去され、売り出し中の若手、名原典彦外野手のパネルが代わりに設置されている。矢野内野手はホテルのツインルームで滝口被告と一緒に寝ている写真の存在も報道されており、去就に注目が集まっている。
検察官がこの裁判でスマートフォンのやりとりを根拠に「第三者にもエトミデートを譲り渡していたと推察できる」などと主張したため、なさおら球団も判断が難しくなった可能性もある。実際、カープの松田一宏オーナー代行は裁判当日、東京都内で行われたプロ野球オーナー会議後、メディアの取材に「警察の捜査が完全に終了したという状況ではないと思う」と発言している。
滝口被告は拘禁刑2年・執行猶予4年の判決を言い渡されたが、カープ選手の疑惑は晴れてはいない。この騒動、いつになったら完全に終了するのだろうか。
(了。前編から読む)
◆取材・文/片岡健(ライター)
